骨免疫学 最新文献紹介
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  • 胸腺Tuft細胞

    胸腺tuft細胞はIL-4産生型細胞分化に関与する領域と胸腺細胞の分化を支持する

    原題:

    Thymic tuft cells promote an IL-4-enriched medulla and shape thymocyte development

    著者:

    Corey N. Miller, Irina Proekt, Jakob von Moltke, Kristen L. Wells, Aparna R. Rajpurkar, Haiguang Wang, Kristin Rattay, Imran S. Khan, Todd C. Metzger, Joshua L. Pollack, Adam C. Fries, Wint W. Lwin, Eric J. Wigton, Audrey V. Parent, Bruno Kyewski, David J. Erle, Kristin A. Hogquist, Lars M. Steinmetz, Richard M. Locksley & Mark S. Anderson

    雑誌:

    Nature 559: 627–631 (2018)

    POINT!

    胸腺は未熟なT細胞とそれらを支持する多様なストローマ細胞群から構成される。核内因子であるAireは胸腺髄質上皮細胞(mTEC)特異的に発現し、自己反応性T細胞の排除に必要であるが、mTECは不均一な細胞集団であることが知られている。今回筆者らはRNA-Seq解析によって消化管に存在するTuft細胞と極めて類似した細胞をAire陽性mTECの中から同定した。胸腺Tuft細胞は小腸Tuft細胞に特徴的な味覚伝達経路やIL-25に加えてMHC class IIを発現しており、抗原提示能を有すると考えられた。また、より多様な味覚センサーを発現しており、小腸Tuft細胞とは異なる役割を果たすことが示唆された。胸腺Tuft細胞の分化はAire非依存的であり、転写因子Hipk2やPou2f3が必要であった。Pou2f3欠損マウスの解析から胸腺Tuft細胞はIL-4産生iNKT細胞の分化や自己免疫寛容の確立に重要であることがわかった。これらの知見は胸腺髄質微小環境では特殊化した胸腺Tuft細胞が胸腺固有の機能を付与していることを示している。

    造血ニッチ

    紫外線からの保護は造血ニッチの進化的に保存された特徴である

    原題:

    Protection from UV light is an evolutionarily conserved feature of the haematopoietic niche.

    著者:

    Friedrich G. Kapp, Julie R. Perlin, Elliott J. Hagedorn, John M. Gansner, Daniel E. Schwarz, Lauren A. O’Connell, Nicholas S. Johnson, Chris Amemiya, David E. Fisher, Ute Wölfle, Eirini Trompouki, Charlotte M. Niemeyer, Wolfgang Driever & Leonard I. Zon

    雑誌:

    Nature 558: 445-448. (2018)

    POINT!

    造血幹細胞(HSC)は造血ニッチと呼ばれる特殊な微小環境により支持されている。造血ニッチは成体哺乳類では骨髄に位置するが、硬骨魚類では腎髄質、両生類では肝臓および骨髄に位置することが知られている。このように造血ニッチの場は種により異なるが、進化の過程でなぜHSCが異なる微小環境へと移動したのかは不明であった。著者らは、ゼブラフィッシュの腎髄質で、メラノサイトが「傘」のような構造を形成し、HSCを覆っていることを見出した。メラノサイトを欠損したゼブラフィッシュでは、紫外線照射後にHSCに高レベルのDNA損傷が見られ、HSC数が減少した。組織学的解析により、メラノサイトの傘はヤツメウナギを含む水生動物において進化的に高度に保存されていることが明らかとなった。両生類(アイゾメヤドクガエル、Dendrobates tinctorius)の後肢に紫外線を照射したところ、皮質骨周囲の筋組織細胞と比較して皮質骨内部の骨髄細胞ではDNA損傷が軽度であった。以上の結果から、HSCは水生動物においてはメラノサイトの傘により紫外線から保護されていたが、より高レベルの紫外線に暴露する陸上へ生物が移行した際に、皮質骨に保護される骨髄へと移動した可能性が示唆された。

    RIPK1

    ヒトの両アレルRIPK1変異は重篤な免疫不全、関節炎、腸炎を引き起こす

    原題:

    Biallelic RIPK1 mutations in humans cause severe immunodeficiency, arthritis, and intestinal inflammation

    著者:

    Anna Idelevich, Kazusa Sato, Kenichi Nagano, Glenn Rowe, Francesca Gori, and Roland Baron

    雑誌:

    Science 361: 810-813 (2018)

    POINT!

    Receptor Interacting Serine/Threonine Kinase 1 (RIPK1)は炎症や細胞死に関わるシグナリング経路のマスターレギュレータとして知られ、ドラッグターゲットとして注目されている。筆者たちは、親族関係のない3家族から、希少ホモ変異体による完全なRIPK1欠失の4人の患者を報告する。患者らは、反復感染、早期発症型炎症性腸炎、進行性多発性関節炎を患っていた。全血測定から、患者らはリンパ急減少性の免疫不全と、様々なサイトカインの産生が健常者と比べて変わっていることがわかった。In vitroの結果から、RIPK1欠損細胞は、TNF-誘導性のIL-6産生が減弱しており、LPSに対する反応性も低く、MAPK活性やサイトカイン産生の調節不全が起きていることがわかった。また、TNF-もしくはpoly(I:C)刺激後の生細胞が対照より少なく、ネクロトーシスしやすいこともわかった。正常な造血幹細胞を移植すると、サイトカイン産生障害が改善し、臨床的な症状が快方に向かった患者が一人いた。これらの報告は、RIPK1の機能はマウスで予想されていたよりも、ヒトにおいては免疫システムの機能に重要な役割を果たしていることがわかった。また、早期の造血幹細胞移植がRIPK1欠損患者において効果的であることが示された。

    自己免疫

    膵島はインスリンペプチドのエキソサイトーシスを介してリンパ組織と情報交換する

    原題:

    Pancreatic islets communicate with lymphoid tissues via exocytosis of insulin peptides

    著者:

    Xiaoxiao Wan, Bernd H. Zinselmeyer, Pavel N. Zakharov, Anthony N. Vomund, Ruth Taniguchi, Laura Santambrogio, Mark S. Anderson, Cheryl F. Lichti & Emil R. Unanue

    雑誌:

    Nature. 557: 714–718. (2018)

    POINT!

    自己免疫は、組織特異的抗原が主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の感受性対立遺伝子によってT細胞に提示され、認識された場合に起こる。しかし、特定の自己抗原が、自己反応性を誘導する理由は不明である。今回筆者らは、特にインスリンの抗原提示に着目して報告している。非肥満糖尿病マウスでは、インスリンが抗原提示されることによって自己免疫性1型糖尿病を発症する。その病原性CD4 T細胞の大部分は、抗原提示細胞によるインスリンペプチドのインスリンB鎖の12–20セグメント(B:12–20)を特異的に認識する。また、様々なリンパ節でインスリン特異的胚中心が形成されており、B:12–20の提示は膵島以外にも広範囲に行われていると考えられる。さらに、β細胞顆粒において分解されたインスリンペプチド断片が見つかり、この中には病原性エピトープが含まれていた。この断片は、グルコースを投与後に放出され、CD4 T細胞によって認識されて活性化状態を引き起こす。その結果、自己免疫性の糖尿病を起こしやすくする。よって、膵島は、異化産物を放出することで常に自己免疫を引きおこす可能性を持っていることが明らかとなった。この報告は、自己抗原の認識経路を明らかにし、リンパ節の全身的感作によって病原性T細胞を活性化させる抗原を標的とした治療法を検討するための基盤となる。

    Thy-1

    Thy-1 (CD90)は骨形成を促進し肥満を抑制する

    原題:

    Thy-1 (CD90) promotes bone formation and protects against obesity

    著者:

    Ann-Kristin Picke, Graeme M. Campbell, Matthias Blüher, Ute Krügel, Felix N. Schmidt, Elena Tsourdi, Maria Winzer, Martina Rauner, Vladimir Vukicevic, Björn Busse, Juliane Salbach-Hirsch, Jan P. Tuckermann, Jan C. Simon, Ulf Anderegg, Lorenz C. Hofbauer, Anja Saalbach

    雑誌:

    Sci Transl Med. 10: eaao6806. (2018)

    POINT!

    Thy-1は免疫グロブリンスーパーファミリーに属するGPIアンカー型タンパク質であり、間葉系線維芽細胞において増殖とアポトーシスのバランスや線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化を制御することが知られている。著者らは間葉系幹細胞(MSC)から骨芽細胞・脂肪細胞への分化決定や、in vivoでの骨形成や脂肪組織の発生におけるThy-1の役割を調べた。Thy-1欠損マウス由来のMSCは野生型マウス由来の細胞と比べて、骨芽細胞分化能が低下しており、脂肪細胞分化能が上昇していた。この結果と一致して、Thy-1欠損マウスでは骨形成の低下によって海綿骨・皮質骨ともに骨量が減少しており、皮質骨脆弱性の上昇を伴う骨強度の低下を来した一方、体重や皮下脂肪や精巣上体脂肪量、体脂肪量がいずれも増加していた。また、これらのThy-1欠損マウスではWnt5aやWnt11、Wnt16などの発現減少と、Wnt阻害分子のスクレロスチンやDickkopf-1の発現上昇などが観察された。さらに、高脂肪食マウスの結果から、肥満におけるTNFαの発現上昇からThy-1発現低下に至り、それにより骨形成の減少に至っている可能性が示唆された。実際に、ヒトの骨粗鬆症、肥満患者のそれぞれにおいて観察される低骨量と脂肪蓄積は可溶型Thy-1の血中濃度の減少を反映したものである可能性も示唆された。以上から、Thy-1がMSCの骨形成性分化を促進する一方、脂肪形成や肥満を抑制する分子であり、新たな治療法や骨粗鬆症・肥満における骨質の血中マーカーとしての可能性が示唆された。

    細胞内代謝

    Folliculinは代謝制御を介して破骨細胞分化を制御する

    原題:

    Folliculin regulates osteoclastogenesis through metabolic regulation

    著者:

    Masaya Baba, Mitsuhiro Endoh, Wenjuan Ma, Hirofumi Toyama, Akiyoshi Hirayama, Keizo Nishikawa, Keiyo Takubo, Hiroyuki Hano, Hisashi Hasumi, Terumasa Umemoto, Michihiro Hashimoto, Nobuko Irie, Chiharu Esumi, Miho Kataoka, Naomi Nakagata, Tomoyoshi Soga, Masahiro Yao, Tomomi Kamba, Takashi Minami, Masaru Ishii, Toshio Suda

    雑誌:

    J Bone Miner Res. doi: 10.1002/jbmr.3477. (2018)

    POINT!

    破骨細胞分化はダイナミックな分化過程であり、遺伝子発現に加え、細胞内代謝も劇的に変化する。近年の報告によって、破骨細胞分化過程での代謝リプログラミングとダイナミックな遺伝子発現変動との必要不可欠な関連性が明らかにされた。しかしながら、破骨細胞分化での代謝の変化を駆動する上流の調節メカニズムは解明されてはいなかった。本研究では、細胞内代謝制御において多様な機能が報告されているFolliculin(Flcn)に着目し、Mx1-Creを用いてFlcn欠損を11週齢で誘導し、3週間後に解析を行ったところ、破骨細胞分化亢進による重篤な骨粗鬆症を呈することが明らかになった。in vitroにおいて、Nfatc1発現はRANKL刺激前でもFlcnノックダウン細胞で上昇しており、RANKL刺激後48時間では劇的な上昇を示し、破骨細胞分化の著しい亢進が観察された。さらに、著者らは網羅的な遺伝子発現プロファイリングやメタボロミクス解析などによって、Flcnが転写因子Tfe3の核内局在を抑制し、その標的遺伝子のPgc1発現を阻害することで酸化的リン酸化とプリン代謝を制御することを証明した。また、Flcnの欠損は酸化的リン酸化やペントースリン酸経路の活性化、さらにはヌクレオチド産生の上昇を伴い、アデノシンの著明な蓄積も観察された。そこで、著者らはプリン作動性シグナル伝達ループに関わるPanx1や、P2rx7、Cd39、Cd73、Ent1などの発現を調べたところ、いずれもFlcnノックダウン細胞で有意に上昇していた。このプリン作動性シグナル伝達ループの阻害によって、Flcn欠損破骨前駆細胞でみられた破骨細胞分化の促進が阻害されることも確認された。以上から、著者らはFlcn-Tfe3-Pgc1軸が酸化的リン酸化とプリン代謝のリプログラミングを介して破骨細胞分化における必要不可欠な役割を担うことを証明した。

    低酸素

    骨細胞の酸素センシングはスクレロスチンのエピジェネティックな制御を介して骨量をコントロールする

    原題:

    Osteocytic oxygen sensing controls bone mass through epigenetic regulation of sclerostin

    著者:

    Steve Stegen, Ingrid Stockmans, Karen Moermans, Bernard Thienpont, Patrick H. Maxwell, Peter Carmeliet, Geert Carmeliet

    雑誌:

    Nat Commun. 9: 2557. (2018)

    POINT!

    加齢における骨量の維持において、骨基質中の骨細胞の適切な応答が強く関連していると考えられている。これらの骨細胞はWnt/β-カテニンのアンタゴニストであるスクレロスチンを分泌することなどにより、骨形成と骨吸収を制御することが知られている。骨細胞は低酸素の微小環境に存在しているが、酸素濃度のセンシングがそれらの機能を制御するかどうかは不明のままであった。本研究で著者らは、Dmp1-Creにより、酸素センサーのプロリルヒドロキシラーゼ2(Phd2)の骨細胞選択的欠損マウスを作製し、これらのマウスが骨形成の促進と骨吸収の低下によって誘導される高骨量の表現型に至ることを見出した。骨形成と骨吸収の逆方向の変化が観察されたことから、スクレロスチン発現を調べたところ、骨細胞選択的Phd2欠損マウス由来の骨で有意に低下していることが明らかにされた。さらにこれらの細胞では、HIF-1αシグナル伝達の上昇がサーチュイン1依存的なSostプロモーターのヒストンH3K9脱アセチル化を上昇させ、スクレロスチン発現の減少とWnt/β-カテニンシグナルの活性化に至ることを見出した。また、骨細胞でのPhd2欠損はエストロゲン欠乏や後肢免荷によって誘導される骨量減少が減弱することも明らかにされた。以上からPhd2による骨細胞での酸素センシングは、スクレロスチン発現のエピジェネティックな制御を介して骨量を負に制御することが証明された。

    細胞分化

    PGC-1αはTAZを誘導することにより骨粗鬆症と老化の過程で骨格系幹細胞の運命と骨–脂肪バランスの制御に寄与する

    原題:

    PGC-1α Controls Skeletal Stem Cell Fate and Bone-Fat Balance in Osteoporosis and Skeletal Aging by Inducing TAZ

    著者:

    Yu B, Huo L, Liu Y, Deng P, Szymanski J, Li J, Luo X, Hong C, Lin J, Wang CY

    雑誌:

    Cell Stem Cell, 23(2): 193-209 (2018)

    POINT!

    骨芽細胞と脂肪細胞は共に間葉系幹細胞を起源とする。加齢や骨粗鬆症において、骨髄中の脂肪含有量が増加する一方骨密度が低下することから、間葉系幹細胞の骨芽細胞/脂肪細胞分化の振り分け機構の存在が示唆されているが、その実態には不明な点が多い。著者らは、骨髄間葉系幹細胞の運命を決定するスイッチとして機能する分子の解明に取り組んだ。加齢に伴い骨髄間葉系幹細胞でPGC-1αの発現が低下することに着目し、PGC-1α欠損マウスの解析を行った。その結果、これらのマウスでは加齢や卵巣摘出による骨量低下と脂肪増加が顕著であった。PGC-1αを欠損する培養細胞において骨芽細胞分化の抑制と脂肪細胞分化の促進を認めた。さらに著者らは、PGC-1αはTAZの発現を誘導することで間葉系幹細胞の骨芽細胞分化を促進することを見出した。以上より、PGC-1αは間葉系幹細胞の分化のスイッチとして機能することが示された。

    IL-17

    IL-17AではなくIL-17Fの抑制は腸内細菌叢の変化を介してTreg細胞を誘導し、腸炎に対して保護的に作用する

    原題:

    Suppression of IL-17F, but not of IL-17A, provides protection against colitis by inducing Treg cells through modification of the intestinal microbiota

    著者:

    Tang C, Kakuta S, Shimizu K, Kadoki M, Kamiya T, Shimazu T, Kubo S, Saijo S, Ishigame H, Nakae S, Iwakura Y

    雑誌:

    Nat Immunol (2018) Epub ahead of print

    POINT!

    IL-17ファミリー分子の中で、IL-17AとIL-17Fは相同性が最も高く、受容体を共有するなど共通点が多い。その一方、自己免疫疾患、アレルギー、感染症の発症において多くの機能上の相違があることがかつて著者らにより明らかにされた。本研究において、著者らはIL-17A欠損マウスにおいてはDSS誘導性腸炎が重篤であるのに対し、IL-17F欠損マウスにおいては軽度であることから、IL-17Fの機能に着目した。IL-17F欠損マウスではIL-17A欠損マウスと異なり、大腸におけるFoxp3陽性Treg細胞が増加しており、その背景にはクロストリジウム属の細菌の増加が認められた。IL-17Fは抗菌ペプチドのアンギオゲニン4とホスホリパーゼA2を誘導し、クロストリジウムの菌量を制御することが見出された。そこで、IL-17Fを標的とした治療実験を行ったところ、IL-17Fに対する中和抗体によって腸炎が緩和された。以上より、IL-17Fが炎症性腸疾患に対する新規治療法の標的となることが示唆された。

    IL-33

    クロマチンによるIL-33の補足はIL-33の放出と活性を制御する

    原題:

    Chromatin regulates IL-33 release and extracellular cytokine activity

    著者:

    Jared Travers 1, Mark Rochman 1, Cora E. Miracle1, Jeff E. Habel 1, Michael Brusilovsky1, Julie M. Caldwell 1, Jeffrey K. Rymer1 & Marc E. Rothenberg

    雑誌:

    Nat Commun (2018) 9:3244

    POINT!

    IL-33は損傷細胞からアラーミンとして放出され、T細胞やILC2など様々な免疫細胞に作用することが知られているが、もともとは核タンパク質として発見された因子で、N末端ドメインによりクロマチンに結合する事が知られている。しかしながら、IL-33とクロマチンが結合することの意義はよく分かっていない。著者らは、内因性のIL-33とIL-33受容体ST2を欠損する上皮細胞にIL-33を過剰発現させても有意な発現変動を示す遺伝子が認められなかったことから、転写制御以外の機能に着目した。N末端ドメインを欠損するIL-33変異体を用いた検討により、IL-33はN末端ドメインによりクロマチンに結合することが見出された。光退色後蛍光回復法 (FRAP) により、IL-33はクロマチンに結合することで核内での移動が抑制されることが示された。また、クロマチンとの結合は、ネクローシスや低温刺激によるIL-33の放出を抑制することも示された。ネクローシスに際してIL-33はクロマチンと共に細胞外に放出され、ST2を介したサイトカイン産生を増強していた。以上より、IL-33の放出速度と生理活性はクロマチンによって調節されることが明らかになった。

    RSPO2

    LGR4/5/6非依存的なRSPO2によるRNF43とZBRF3の阻害は四肢の発生を司る

    原題:

    RSPO2 inhibition of RNF43 and ZNRF3 governs limb development independently of LGR4/5/6

    著者:

    Emmanuelle Szenker-Ravi, Umut Altunoglu, Marc Leushacke, Célia Bosso-Lefèvre, Muznah Khatoo, Hong Thi Tran, Thomas Naert, Rivka Noelanders, Amin Hajamohideen, Claire Beneteau, Sergio B. de Sousa, Birmsen Karaman, Xenia Latypova, Seher Başaran, Esra Börklü Yücel, Thong Teck Tan, Lena Vlaeminck, Shalini S. Nayak, Anju Shukla, Katta Mohan Girisha, Cédric Le Caignec, Natalia Soshnikova, Zehra Oya Uyguner, Kris Vleminckx, Nick Barker, Hülya Kayserili & Bruno Reversade

    雑誌:

    Nature, 557: 564–569. (2018)

    POINT!

    R-spondinファミリーに属する4つの分泌型リガンド(RSPO1¬–RSPO4)は受容体のLGR4/5/6を介してWNTシグナルを増強する。本研究で著者らはRSPO2遺伝子におけるヒトでの一連の劣性対立遺伝子変異が、肺の形成不全と四肢の完全欠損を呈するテトラ・アメリア症候群の原因であることを見出した。機能的解析によって、LGR4/5/6やRNF43、ZNRF3への結合能の異常とWNTシグナル増強効果の減少が明らかになり、これらの程度は対立遺伝子の重篤さと一致していた。しかしながら、意外なことに、Lgr4、Lgr5、Lgr6の全身性三重欠損マウスは既知のRspo2やRspo3欠損の表現型を再現することができなかった。さらに、Lgr4/5/6三重欠損細胞で内因性のRspo2やRspo3をノックダウンしたり、外からRSPO2やRSPO3を添加したりすると、WNTシグナルに影響を及ぼした。一方、著者らはアフリカツメガエルのrnf43とznrf3の二重欠失胚を作製すると、過剰肢の成長を誘導するのに十分であることを見出した。これらの結果は、RSPO2がLGR4/5/6受容体以外に、RNF43とZNRF3に対してアンタゴニスティックに作用するリガンドであり、RNF43とZNRF3が四肢のspecificationを司るマスタースイッチを構成していることを明らかにした。

    酸化特異的エピトープ

    酸化特異的エピトープは骨形成を抑制する

    原題:

    Oxidation-specific epitopes restrain bone formation

    著者:

    Elena Ambrogini, Xuchu Que, Shuling Wang, Fumihiro Yamaguchi, Robert S. Weinstein, Sotirios Tsimikas, Stavros C. Manolagas, Joseph L. Witztum & Robert L. Jilka

    雑誌:

    Nat Commun 9: 2193. (2018)

    POINT!

    動脈硬化症と骨粗鬆症は疫学的な相関が知られており、ホスホコリン(PC)や酸化型リン脂質(PC−OxPL)、マロンジアルデヒド(MDA) のような酸化特異的エピトープ(OSE)は両疾患の病因となる。自然抗体はOSEの病原性効果に対抗して恒常性を維持していると考えられている。著者らは酸化型低密度リポタンパク質に存在するPCを認識するIgM自然抗体E06の可変領域断片からなる一本鎖抗体(E06-scFv)をApoEプロモーター下流で発現するトランスジェニック(Tg)マウスにおいて、高脂肪食誘導性骨量減少が骨芽細胞数と骨形成の上昇によって抑制されることを発見した。同様に、MDAに結合するIK17の可変領域断片からなる一本鎖抗体(IK17-scFv)を発現するTgマウスでも高脂肪食誘導性骨量減少が抑制されていた。注目すべきことに、E06-scFv Tgマウスは通常食を与えたマウスでも骨量上昇を示した。また、血中抗PC IgM抗体量は老齢マウスで減少していることも確認された。以上の結果から著者らはOSEが、慢性的に産生されているか高脂肪食によって産生量が増加しているかにかかわらず、骨形成を低下させ、加齢に伴う抗OSE機構の破綻で加齢関連骨量減少に寄与することを見出した。すなわち、抗OSEは骨粗鬆症と動脈硬化とを同時に治療する新たなアプローチとなる可能性がある。

    ガラニン

    視床下部による代謝と骨密度の神経制御はガラニン依存的である

    原題:

    Neuronal hypothalamic regulation of body metabolism and bone density is galanin dependent

    著者:

    Anna Idelevich, Kazusa Sato, Kenichi Nagano, Glenn Rowe, Francesca Gori, and Roland Baron

    雑誌:

    J Clin Invest. 12: 2626-2641. (2018)

    POINT!

    脳内では視床下部腹側(VHT)がエネルギーと骨代謝を制御するが、この制御が同じ経路を介するかどうかは不明であった。VHTでのAP1シグナル伝達の変化がエネルギー消費、グルコース利用、骨密度を増加させるが、それぞれの経路に関与する特異的な神経細胞は同定されてはいなかった。著者らは、成体マウスに遺伝的・定位的手法を用い、FosB、2FosB、DNJunDなどのAP1アンタゴニストやFosBを、主にVHTの弓状核に存在するAgRP発現ニューロン、POMC発現ニューロンに導入することで、これらのニューロンでのAP1アンタゴニズムが全身エネルギー消費、グルコース消費、骨形成を刺激する一方、骨吸収に対しては異なる効果を有することを発見した。一方、視床下部腹内側核に存在するSF1発現ニューロンでのAP1活性を変化させると、エネルギー消費を増加させる一方、骨密度は減少させることから、これらのニューロン由来のエネルギー代謝と骨に対する影響が独立していることを示唆している。さらに、網羅的解析などからAP1アンタゴニストを発現させることで視床下部における神経メディエーターのガラニン発現量が上昇することを見出し、VHTでガラニンに対するshRNAを発現させたり、非選択的ガラニン受容体阻害剤M35の浸透圧ポンプによる脳室内投与を行ったりすると、FosB発現のエネルギー代謝や骨に対する影響が阻害されることも確認した。以上から、AP1アンタゴニズムによってAgRP発現ニューロンやPOMC発現ニューロンがエネルギー代謝を刺激し、骨密度を増加させることができ、ガラニンは中枢の下流エフェクター分子で、神経細胞から標的臓器までのシグナルに必要不可欠であることが明らかになった。一方、SF1発現ニューロンの結果から骨の恒常性は常に全身のエネルギー状態に制御されているわけではないことも示された。

    幹細胞

    Notch – V型コラーゲン – カルシトニン受容体のシグナル系は筋幹細胞を維持する

    原題:

    Reciprocal signalling by Notch–Collagen V–CALCR retains muscle stem cells in their niche

    著者:

    Meryem B. Baghdadi, David Castel, Léo Machado, So-ichiro Fukada, David E. Birk, Frederic Relaix, Shahragim Tajbakhsh & Philippos Mourikis

    雑誌:

    Nature. 557: 714–718. (2018)

    POINT!

    筋線維は多核のチューブ状の細胞で、幹細胞である衛星細胞が筋芽細胞に分化、さらに融合することで生じる。造血幹細胞がニッチにおいて静止期にとどめられるのと同様に、衛星細胞も周囲の細胞や細胞外基質からの何らかの刺激により増殖や分化が制御されると考えられているが、その詳細は不明である。著者らは、衛星細胞の静止状態の維持に関わるNotchと下流因子RBPJが各種コラーゲン分子のエンハンサーに結合することから、これらのコラーゲンの機能に着目した。その中で、V型コラーゲンはマウスより単離・培養した衛星細胞に添加することで、増殖と分化を抑制することを見出した。衛星細胞特異的にCol5a1遺伝子を欠損するマウスでは衛星細胞数の減少、筋細胞の増殖と分化の亢進を認めた。衛星細胞の幹細胞性維持に際して、カルシトニン受容体がV型コラーゲン受容体として機能することが示された。

    FOP

    線維芽細胞/脂肪細胞共通前駆細胞におけるアクチビンシグナルは進行性骨化性線維異形成症 (FOP) を引き起こす

    原題:

    Activin-dependent signaling in fibro/adipogenic progenitors causes fibrodysplasia ossificans progressiva

    著者:

    Lees-Shepard JB, Yamamoto M, Biswas AA, Stoessel SJ, Nicholas SE, Cogswell CA, Devarakonda PM, Schneider MJ Jr., Cummins SM, Legendre NP, Yamamoto S, Kaartinen V, Hunter JW, Goldhamer DJ

    雑誌:

    Nat Commun. doi: 10.1038/s41467-018-02872-2. (2018)

    POINT!

    進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、BMPI型受容体であるACVR1の変異が原因で、筋組織に異所性骨を生じる希少疾患である。筋組織には幹細胞である衛星細胞、筋芽細胞といった筋固有の細胞をはじめ、線維芽細胞/脂肪細胞共通前駆細胞 (FAP)、血管内皮細胞、周皮細胞など様々な細胞が存在する。異所性骨化に際してはこれらの細胞が軟骨細胞や骨芽細胞に分化すると考えられているが、実際にどの細胞が骨芽細胞に分化するかは不明であった。著者らは複数の系統のCreマウスと、変異Acvr1を発現する新規の遺伝子改変マウスを用いることによって、骨格筋間質に存在するFAPが異所性骨化に際して骨芽細胞に分化し、その分化過程にアクチビンAが重要であることを示した。しかしながら、特異性の低いマーカーの組み合わせによりFAPの重要性を示しており、今後FAP特異的マーカーの探索と、そのマーカーに対応するCreを用いた実験により裏付けを行うことが重要である。

    TGF-β

    TGF-βの異常な活性化の阻害はマウスの異所性骨化の進行を抑制する

    原題:

    Inhibition of overactive TGF-β attenuates progression of heterotopic ossification in mice

    著者:

    Wang X, Li F, Xie L, Crane J, Zhen G, Mishina Y, Deng R, Gao B, Chen H, Liu S, Yang P, Gao M, Tu M, Wang Y, Wan M, Fan C, Cao X

    雑誌:

    Nat Commun. doi: 10.1038/s41467-018-02988-5. (2018)

    POINT!

    近年、FOP研究において、変異ACVR1のコンディショナルノックインマウスの作出、アクチビンAが変異受容体に対するリガンドであることの解明という大きな進歩があった。以降、異所性骨化に関する論文報告にしめるFOP研究の割合が増加している。異所性骨化は他にも外傷性骨化性筋炎や頭部外傷など様々な原因によって誘導される。著者らは、骨折の整復固定術や頭部外傷後の異所性骨化巣でSMAD2/3のリン酸化を認めたことから、異所性骨化にTGF-βが関与すると考えた。アキレス腱穿刺による異所性骨化モデルでは、受傷後に活性型TGF-βの血中濃度が上昇した。このモデルにおける異所性骨化巣にはマクロファージが集積しており、それらがTGF-βの主要な産生細胞であった。アキレス腱穿刺モデルにおける異所性骨化はTGF-βに対する中和抗体の投与やTGFBR2の欠損によって抑制され、これらの異所性骨化に対する関与が示された。

    関節炎

    自己免疫性関節炎において、Th17細胞は滑膜繊維芽細胞および自然リンパ球によるGM-CSF産生を誘導し、関節炎の発症および増悪化に寄与する

    原題:

    Autoimmune Th17 cells induced synovial stromal and innate lymphoid cell secretion of the cytokine GM-CSF to initiate and augment autoimmune arthritis.

    著者:

    Keiji Hirota, Motomu Hashimoto, Yoshinaga Ito, Mayumi Matsuura, Hiromu Ito, Masao Tanaka, Hitomi Watanabe, Gen Kondoh, Atsushi Tanaka, Keiko Yasuda, Manfred Kopf, Alexandre J. Potocnik, Brigitta Stockinger, Noriko Sakaguchi, Shimon Sakaguchi

    雑誌:

    Immunity doi: 10.1016/j.immuni.2018.04.009. [Epub ahead of print] (2018)

    POINT!

    自己免疫炎症において、Th17細胞が重要な役割を果たすことが知られている。しかしながら、 Th17細胞が他の細胞とどのように相互作用し、疾患の発症および増悪化を調整するのかに関しては未だ不明な点が多い。著者らは、自己免疫性関節炎の自然発症モデル(SKGマウス)において、Th17細胞が滑膜繊維芽細胞からのGM-CSF産生を誘導し、関節炎を惹起することを明らかにした。更に、炎症関節において自然リンパ球(主にILC2)が増殖していることを見出し、活性化した自然リンパ球がIL-2、IL-33、CpG DNAによる刺激に応答し、GM-CSFを産生することを明らかにした。滑膜繊維芽細胞あるいは自然リンパ球によるGM-CSFの産生を選択的に欠損させることにより、関節炎の発症および増悪化が有意に抑制された。関節リウマチ患者の滑膜液においても、GM-CSFを産生する自然リンパ球が増加していた。本研究により、Th17細胞と滑膜繊維芽細胞、自然リンパ球の相互作用による炎症カスケードの形成が、自己免疫性関節炎の発症および増悪において重要であることが示され、この経路を標的とした新規治療法の開発が期待される。

    滑膜繊維芽細胞

    関節リウマチにおける繊維芽細胞サブセットの機能的差異

    原題:

    . Functionally distinct disease-associated fibroblast subsets in rheumatoid arthritis.

    著者:

    Fumitaka Mizoguchi, Kamil Slowikowski, Kevin Wei, Jennifer L. Marshall, Deepak A. Rao, Sook Kyung Chang, Hung N. Nguyen, Erika H. Noss, Jason D. Turner, Brandon E. Earp, Philip E. Blazar, John Wright, Barry P. Simmons, Laura T. Donlin, George D. Kalliolias, Susan M. Goodman, Vivian P. Bykerk, Lionel B. Ivashkiv, James A. Lederer, Nir Hacohen, Peter A. Nigrovic, Andrew Filer, Christopher D. Buckley, Soumya Raychaudhuri & Michael B. Brenner

    雑誌:

    Nat Commun doi: 10.1038/s41467-018-02892-y. (2018)

    POINT!

    関節リウマチ(RA)の病態において、滑膜繊維芽細胞は様々な炎症性サイトカインやタンパク質分化酵素、破骨細胞分化誘導因子RANKLを産生し、関節破壊に必須の役割を果たすと考えられている。このような多彩な機能から、滑膜繊維芽細胞は均一な細胞集団ではなく、複数のサブセットから構成される可能性が示唆されていたが、その詳細は不明であった。著者らは、RA患者の滑膜組織より繊維芽細胞を単離し、シングルセル解析を行うことで、遺伝子発現パターンの異なる複数の滑膜繊維芽細胞サブセットを同定することに成功した。中でも、CD34¬-THY1+Podoplanin+cadherin-11+の集団は、RA滑膜の血管周囲で顕著に増殖しており、炎症性サイトカインやRANKLを高発現し、RAの病態形成に重要な役割を果たす可能性が示唆された。本研究成果は、RAの病態理解及び滑膜繊維芽細胞を標的とした治療法開発に繋がるのみならず、他の繊維芽細胞関連疾患の研究にも有用な分子基盤を提供しており、今後更なる発展が期待される。

    歯周病

    骨破壊性T細胞による生体防御

    原題:

    Host defense against oral microbiota by bone-damaging T cells

    著者:

    Masayuki Tsukasaki, Noriko Komatsu, Kazuki Nagashima, Takeshi Nitta, Warunee Pluemsakunthai, Chisa Shukunami, Yoichiro Iwakura, Tomoki Nakashima, Kazuo Okamoto and Hiroshi Takayanagi

    雑誌:

    Nat Commun doi: 10.1038/s41467-018-03147-6. (2018)

    POINT!

    関節リウマチにおいて、Th17細胞及びFoxp3陽性T細胞由来のTh17細胞(exFoxp3Th17細胞)が、局所炎症と破骨細胞による骨吸収を強力に誘導することで、関節破壊を引き起こすことが知られている。しかしながら、本来は腸管粘膜や皮膚などバリア部位において感染防御に働くTh17細胞が、骨破壊誘導能を有する理由は不明であった。著者らは、細菌感染に起因する炎症性骨疾患である歯周病のマウスモデルを解析し、骨破壊性T細胞(Th17細胞及びexFoxp3Th17細胞)が、口腔細菌依存的に歯周炎組織に集積し、抗菌免疫を惹起し細菌を排除すると同時に、破骨細胞による歯の支持骨吸収を誘導することで感染源である歯の脱落を促し、感染及び炎症を終息させる「諸刃の剣」として機能することを明らかにした。本研究で得られた知見により、関節リウマチや癌骨転移において単なる有害な炎症の副次的効果として捉えられてきた炎症性骨破壊という現象は、脊椎動物の進化の過程で保存されてきた原始的な生体防御システムである可能性が示唆された。

    血管内皮細胞

    骨量減少を改善するための骨格内皮ターゲッティング

    原題:

    Targeting skeletal endothelium to ameliorate bone loss

    著者:

    Ren Xu, Alisha Yallowitz, An Qin, Zhuhao Wu, Dong Yeon Shin, Jung-Min Kim,Shawon Debnath, Gang Ji, Mathias P. Bostrom, Xu Yang, Chao Zhang, Han Dong,Pouneh Kermani, Sarfaraz Lalani, Na Li, Yifang Liu, Michael G. Poulos, Amanda Wach, Yi Zhang, Kazuki Inoue, Annarita Di Lorenzo, Baohong Zhao, Jason M. Butler, Jae-Hyuck Shim, Laurie H. Glimcher and Matthew B. Greenblatt

    雑誌:

    Nat. Med. 24: 823-833 (2018)

    POINT!

    CD31hi>endomucinhi(CD31hiEMCNhi)の特定のサブセットが骨形成を促すことが近年明らかとなってきているが、CD31hiEMCNhiがどのように骨形成を制御しているか詳細は不明である。筆者たちはShn3–/–マウスにおいて、骨量とCD31hiEMCNhiサブセットが増加することを見出した。Dmp1 cre及びOsteocalcin creを使用し骨芽細胞系列においてShn3を欠損させたマウスは、骨量増加の表現型を示した。筆者たちは、Shn3–/–マウスの骨芽細胞ではSlit3発現が上昇しており、骨芽細胞から産生されるSlit3はCD31hihi内皮細胞の形成を促進することを明らかにした。実際にOsx creを用いてSlit3を欠損させると、CD31hiEMCNhi内皮細胞の減少とともに骨量が低下した。リコンビナントSlit3の投与は、骨折治癒を促進し卵巣摘出骨粗鬆症マウスモデルの骨量減少を抑制した。この報告により、血管をターゲットにした新たな骨形成治療法戦略につながる可能性がでてきた。

    軸索ガイダンス因子

    破骨細胞が分泌するSLIT3は骨吸収と骨形成の調節をする

    原題:

    Osteoclast-secreted SLIT3 coordinates bone resorption and formation

    著者:

    Beom-Jun Kim, Young-Sun Lee, Sun-Young Lee, Wook-Young Baek, Young Jin Choi, Sung Ah Moon, Seung Hun Lee, Jung-Eun Kim, Eun-Ju Chang, Eun-Young Kim, Jin Yoon, Seung-Whan Kim, Sung Ho Ryu, Sun-Kyeong Lee, Joseph A. Lorenzo, Seong Hee Ahn, Hyeonmok Kim, Ki-Up Lee, Ghi Su Kim, and Jung-Min Koh

    雑誌:

    J Clin Invest 128: 1429-1441 (2018)

    POINT!

    カップリングは骨代謝のリモデリング期に、骨吸収と骨形成を時空間的に制御する。既報により、骨芽細胞の機能調節において、破骨細胞に由来するカップリング因子が重要であることは予想されている。筆者らは、破骨細胞分泌タンパク質を分画し、骨芽細胞の遊走を促進する因子を探索したところSlit3を見出した。Slit3は-カテニンを活性化することで、骨芽細胞の遊走と増殖を促進する一方、骨吸収は阻害することがわかった。実際に、Slit3–/–マウスと、Slit3の受容体Robo1を欠損するマウスは骨形成減少と骨吸収上昇による骨量減少を呈した。破骨細胞特異的Slit3欠損マウス(Ctsk cre使用)は骨量が減少していたが、神経特異的Slit3欠損マウス(nestn cre使用)、骨芽細胞得意的Slit3欠損マウス(Col2.3 cre使用)では骨量に変化はなかった。以上の結果から、筆者たちは破骨細胞から産生されるSlit3が骨吸収と骨形成の調節をしていると結論づけた。また、閉経後の女性の中でも血中のSlit3のレベルが高い群は高いBMDとの相関があり、Slit3投与は卵巣摘出骨粗鬆症モデルマウスで見られる骨量減少を抑制した。骨形成を促し、骨吸収を阻害する薬剤としてのSlit3の可能性を示唆した。

    スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)

    骨量減少のアナボリック治療標的としてのスフィンゴシン-1-リン酸リアーゼ

    原題:

    Targeting sphingosine-1-phosphate lyase as an anabolic therapy for bone loss

    著者:

    Sarah Weske, Mithila Vaidya, Alina Reese, Karin von Wnuck Lipinski, Petra Keul, Julia K Bayer, Jens W Fischer, Ulrich Flögel, Jens Nelsen4, Matthias Epple, Marta Scatena5, Edzard Schwedhelm, Marcus Dörr, Henry Völzke10, Eileen Moritz, Anke Hannemann, Bernhard H Rauch, Markus H Gräler, Gerd Heusch and Bodo Levkau

    雑誌:

    J Clin Invest 128: 1429-1441 (2018)

    POINT!

    本研究では、S1Pの非可逆的分解を担う酵素、S1Pリアーゼを誘導的に欠失、あるいは4-デオキシピロドキシンによってS1Pリアーゼを阻害すると、骨形成、骨量、骨強度が著しく増加し、白色脂肪組織が減少することが示された。筆者たちはS1P-S1P2を介するシグナルが、PPAR-の発現低下を促すことで、脂肪細胞への分化が抑制され、骨芽細胞形成を促進することを見出した。S1P2はS1Pの受容体の一つであるが、S1P-S1P2はp38-GSK3b-bカテニンシグナルとWnt5a-LRP5経路を介してオステオプロテジェリンを誘導することで、破骨細胞形成を阻害していた。実際に、S1P2欠損マウスでは骨量が減少し、脂肪細胞が増加した。さらに、卵巣摘出骨粗鬆症マウスモデルにS1Pリアーゼ阻害剤を投与すると、PTHの間歇投与と同レベルの骨量増加が見られた上に、PTHの間歇投与で観察されるような破骨細胞の活性化はほとんど抑えられていた。骨形成を上昇させながらも骨吸収を抑制できるようなS1Pを軸にした新しい薬剤開発の可能性が提示された。

    生体内イメージング

    in vivoにおける成熟骨芽細胞と成熟破骨細胞間の直接的な接触がそれら細胞の機能を制御する

    原題:

    Direct cell–cell contact between mature osteoblasts and osteoclasts dynamically controls their functions in vivo

    著者:

    Masayuki Furuya, Junichi Kikuta, Sayumi Fujimori, Shigeto Seno, Hiroki Maeda, Mai Shirazaki, Maki Uenaka, Hiroki Mizuno, Yoriko Iwamoto, Akito Morimoto, Kunihiko Hashimoto, Takeshi Ito, Yukihiro Isogai, Masafumi Kashii, Takashi Kaito, Shinsuke Ohba, Ung-il Chung, Alexander C. Lichtler, Kazuya Kikuchi, Hideo Matsuda, Hideki Yoshikawa and Masaru Ishii

    雑誌:

    Nat Commun, doi: 10.1038/s41467-017-02541-w. (2018)

    POINT!

    骨の恒常性は骨形成を行う成熟骨芽細胞と骨吸収を行う成熟破骨細胞の間のコミュニケーションによって制御されている。しかしながら、in vivoにおけるその時空間的な関係や相互作用の態様は明らかにされてはいなかった。本研究で、著者らはCol2.3-ECFP/TRAP-tdTomatoトランスジェニックマウスを用いた生体内イメージング技術を駆使し、成熟骨芽細胞と成熟破骨細胞の機能が直接的な細胞間接着を介して制御されていることを明らかにした。定常状態では成熟骨芽細胞と成熟破骨細胞はそれぞれ数十細胞単位で小集団を形成して別々の領域に存在し、直接的な細胞間接触は時空間的に限られた領域でのみ観察された。この直接的な細胞間接触の多くは、成熟破骨細胞の突起が成熟骨芽細胞に伸びた構造をしていた。また、pH感受性蛍光プローブを用いた解析から、成熟骨芽細胞と接触していない成熟破骨細胞が骨吸収に際してプロトンを分泌する一方、成熟骨芽細胞と接触する成熟破骨細胞は骨吸収を行わないことが明らかになった。すなわち、成熟骨芽細胞が直接的な接触によって骨吸収を抑制する可能性が示唆された。さらに、著者らは副甲状腺ホルモン間歇的に投与すると、生体骨組織内において成熟骨芽細胞と成熟破骨細胞の混在した状態を引き起こし、細胞間接触を増加させ、骨吸収能を抑制することを見出した。以上から、成熟骨芽細胞-成熟破骨細胞間の時空間的な細胞間相互作用がin vivoにおける骨の恒常性、特に骨吸収に影響することが明らかにされた。

    骨細胞

    ラット・マウスでのレプチン非依存的な脂肪量調節に関する体重の恒常系

    原題:

    Body weight homeostat that regulates fat mass independently of leptin in rats and mice

    著者:

    John-Olov Jansson, Vilborg Palsdottir, Daniel A. Hägg, Erik Schéle, Suzanne L. Dickson, Fredrik Anesten, Tina Bakea, Mikael Montelius, Jakob Bellman, Maria E. Johansson, Roger D. Cone, Daniel J. Drucker, Jianyao Wu, Biljana Aleksic, Anna E. Törnqvist, Klara Sjögren, Jan-Åke Gustafsson, Sara H. Windahl, and Claes Ohlsson

    雑誌:

    Proc Natl Acad Sci,115, 427-432 (2018)

    POINT!

    座っている時間が長いほど肥満のリスクが上昇することが報告されているが、一方で立っていることによる抗肥満効果のメカニズムは不明である。著者らは、おもりを腹腔内、もしくは背部皮下に挿入することで、げっ歯類の動物に対し体重負荷を増加する実験を行ったところ、これらの動物では逆に食餌量の低下を誘導し、体重が減少した。重要なことに、体重負荷の上昇によって食餌誘導性肥満やグルコース耐性を改善した。この現象はレプチンを欠損したob/obマウスや、野生型マウスにレプチンを投与してもコントロールマウスと同程度観察されたことから、体重の恒常系としてレプチン非依存的な脂肪量制御のための2つの独立した負のフィードバック機構が存在する可能性が示された。さらに著者らは、骨細胞が骨への負荷の変化を感知することが知られていることから、Dmp1-CreとiDTRマウスを交配し、DTを投与することによる骨細胞(および後期骨芽細胞)除去マウスを作製し同様の実験を行ったところ、これらのマウスでは負荷を増加することによる体重減少効果が観察されなかった。一方、グレリン受容体欠損マウスやGLP-1欠損マウス、MC4R欠損マウス、ERα欠損マウスでは負荷による体重減少効果がコントロールマウスと同様に観察された。以上から、著者らは体重の上昇が体重負荷のかかる骨に存在する骨細胞依存的なセンサーを活性化し、それによって求心性のシグナルを誘導し体重を減少させる可能性が示唆された。これらの発見はレプチン非依存的に脂肪量を制御する、体重負荷による体重の恒常系(gravitostat)が存在することを証明した。

    骨質

    骨細胞内でのTGF-βシグナルは骨小腔周囲-骨細管リモデリングを介して骨質を制御する

    原題:

    Osteocyte-Intrinsic TGF-β Signaling Regulates Bone Quality through Perilacunar/Canalicular Remodeling

    著者:

    Neha S. Dole, Courtney M. Mazur, Claire Acevedo, Justin P. Lopez, David A. Monteiro, Tristan W. Fowler, Bernd Gludovatz, Flynn Walsh, Jenna N. Regan, Sara Messina, Daniel S. Evans, Thomas F. Lang, Bin Zhang, Robert O. Ritchie, Khalid S. Mohammad, and Tamara Alliston

    雑誌:

    Cell Rep, 21, 2585–2596 (2017)

    POINT!

    骨強度には骨量と骨質の両方重要であるにもかかわらず、骨質を制御するメカニズムは不明な点が残されており、骨質を標的とした治療が難しいのが現状である。TGF-βは骨基質中に豊富に存在し、カップリング因子として骨リモデリング制御機構において重要な役割を担っているが、骨細胞における役割については不明であった。これまでに、骨細胞が直接的にその周囲の骨小腔周囲-骨細管を再構築することが示されているが、本研究で著者らは、骨細胞内でのTGF-βシグナル伝達が、骨小腔周囲-骨細管リモデリング(PLR)を介して骨質を維持することを明らかにした。TGF-β-receptor I(TβRI)キナーゼ阻害剤や、TGF-β-receptor II (TβRII)floxedマウスとDmp1-Creマウスを交配した骨細胞(及び後期骨芽細胞)特異的TβRII欠損マウス(TβRIIocy–/–)を用いることで、著者らはTGF-βが骨細胞に直接的に作用してPLR関連酵素の発現を制御し、それによって骨細胞による骨質の制御に関与することを示した。さらに、TβRIIocy–/–マウスの大腿骨を機械的特性および材料挙動の観点から調べたところ、野生型マウスと比べて有意に骨質が低下していることが明らかになった。すなわち、TGF-βは骨細胞におけるPLRの制御因子であり、骨細胞はPLRを介して能動的に骨質を維持する細胞であると考えられる。

    骨細胞分化

    IGF-1によるPTH受容体のリン酸化は骨芽細胞の骨細胞への分化を促進する

    原題:

    IGF-I induced phosphorylation of PTH receptor enhances osteoblast to osteocyte transition

    著者:

    Tao Qiu, Janet L. Crane, Liang Xie, Lingling Xian, Hui Xie and Xu Cao

    雑誌:

    Bone Res. doi: 10.1038/s41413-017-0002-7. (2018)

    POINT!

    骨芽細胞は間葉系幹細胞から分化し、骨基質を産生する。骨芽細胞の一部は骨基質に埋入し、多数の細胞突起を有する骨細胞へと分化する。間葉系幹細胞の骨芽細胞分化を制御する分子メカニズムの理解が進んできた一方で、骨芽細胞の骨細胞分化を制御するメカニズムには不明な点が多い。著者らは、IGF-1存在下でPTHが骨細胞分化を促進することを見出し、両者の協調作用の解析を行った。その結果、IGF-1受容体のIGF1RはPTH受容体のPTH1RのY494をリン酸化することが分かった。同部位のリン酸化によりPTH1Rは細胞骨格のアクチンフィラメント先端部に結合した。これによりアクチン重合が促進し、長い細胞突起を有する骨細胞が形成された。

    関節炎

    関節炎の活動性に応じた薬物徐放ゲルの開発

    原題:

    Towards an arthritis flare-responsive drug delivery system

    著者:

    Nitin Joshi, Jing Yan, Seth Levy, Sachin Bhagchandani, Kai V. Slaughter, Nicholas E. Sherman, Julian Amirault, Yufeng Wang, Logan Riegel, Xueyin He, Tan Shi Rui, Michael Valic, Praveen K. Vemula, Oscar R. Miranda, Oren Levy, Ellen M. Gravallese, Antonios O. Aliprantis, Joerg Ermann and Jeffrey M. Karp

    雑誌:

    Nat Commun. doi: 10.1038/s41467-018-03691-1. (2018)

    POINT!

    ドラッグデリバリーシステムにより薬物動態を制御することで、薬物の作用を増強し、副作用を軽減することができる。関節炎治療において、関節内への薬物の単回投与は半減期が短いため有効ではないとされている。そこで、著者らは薬物の放出を制御することで薬効を持続させる材料の開発に取り組んだ。炎症巣のMMPにより分解されるハイドロゲルにステロイド薬を封入し、ハイドロゲル–ステロイド製剤を作製した。この製剤を関節炎モデルマウスに投与したところ、炎症巣でハイドロゲルは分解した。単回投与でも約二週間にわたり薬効を発揮し、関節炎を軽減した。

    MRSA

    Persister MRSAにも有効なレチノイン酸を基本構造とする新規抗菌薬の開発

    原題:

    A new class of synthetic retinoid antibiotics effective against persisters

    著者:

    Wooseong Kim, Wenpeng Zhu, Gabriel Lambert Hendricks, Daria Van Tyne, Andrew D. Steele, Colleen E. Keohane, Nico Fricke, Annie L. Conery, Steven Shen, Wen Pan, Kiho Lee, Rajmohan Rajamuthiah, Beth Burgwyn Fuchs, Petia M. Vlahovska, William M. Wuest, Michael S. Gilmore, Huajian Gao, Frederick M. Ausubel and Eleftherios Mylonakis

    雑誌:

    Nature. 556: 103-107. (2018)

    POINT!

    増殖活性の低いpersister状態にある細菌は、細胞増殖を標的とした抗菌薬に対して抵抗性を示すため、細菌感染症治療において大きな障害となる。著者らは線虫のMRSA感染モデルを用いたスクリーニング系により候補薬物の抽出を行い、二種類のレチノイン酸誘導体に着目した。これらの薬物はpersisterを含めMRSAに対し殺菌作用を示した。また、耐性菌の出現も長期間認めなかった。抗菌作用の解析の結果、細胞膜外膜に取り込まれ膜機能を阻害することが明らかになった。抽出された薬物だけでなく、そのアナログにも同様の薬効を示すものが見出され、レチノイン酸誘導体が新たな抗菌薬のクラスとなる可能性が示唆された。

    腸内細菌叢

    塩感受性腸内細菌はTH17細胞と疾患を制御する

    原題:

    Salt-responsive gut commensal modulates TH17 axis and disease.

    著者:

    Nicola Wilck, Mariana G. Matus, Sean M. Kearney, Scott W. Olesen, Kristoffer Forslund, Hendrik Bartolomaeus, Stefanie Haase, Anja Mähler, András Balogh, Lajos Markó, Olga Vvedenskaya, Friedrich H. Kleiner, Dmitry Tsvetkov, Lars Klug, Paul I. Costea, Shinichi Sunagawa, Lisa Maier, Natalia Rakova, Valentin Schatz, Patrick Neubert, Christian Frätzer, Alexander Krannich, Maik Gollasch, Diana A. Grohme, Beatriz F. Côrte-Real, Roman G. Gerlach, Marijana Basic, Athanasios Typas, Chuan Wu, Jens M. Titze, Jonathan Jantsch, Michael Boschmann, Ralf Dechend, Markus Kleinewietfeld, Stefan Kempa, Peer Bork, Ralf A. Linker, Eric J. Alm and Dominik N. Müller

    雑誌:

    Nature. 551: 585-589. (2017)

    POINT!

    西洋スタイルの食事にみられる過度な食塩の摂取は高血圧や循環器疾患を導く恐れがある。TH17細胞は腸内細菌によって誘導され、自己免疫疾患や高血圧に関与することが示唆されている。しかし、塩が腸内細菌に与える影響は不明である。筆者らは、マウスにおいて、高塩食の摂取がLactobacillus Murinusの割合を減少させることでTH17細胞が増加することを報告した。L. Murinusの投与により、生体内のTH17細胞が減少することで、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の高塩食による悪化や塩感受性高血圧が改善された。この所見に基づき、ヒトに対する高塩食の投与試験を実施したところ、腸内Lactobacillus属の減少や血中TH17細胞の増加、血圧の上昇が認められた。本研究から、腸内細菌が免疫関連疾患の治療ターゲットの有力な候補であることが示された。

    T細胞

    Syk/PI3K経路は炎症性T細胞の分化プログラムを誘導する

    原題:

    TCR recruits the Syk/PI3K axis to drive proinflammatory differentiation program

    著者:

    Ryunosuke Muro, Takeshi Nitta, Kenta Nakano, Tadashi Okamura, Hiroshi Takayanagi, and Harumi Suzuki

    雑誌:

    J Clin Invest. 128: 415-426. (2018)

    POINT!

    T細胞は感染初期の生体防御を担う細胞であり、自然免疫から適応免疫への円滑な移行に重要である。近年、IL-17産生型>T(T17)細胞は、骨損傷時の骨形成を促進することが報告され、その重要性に関心が集まっているが、その詳細な分化メカニズムには不明な点が多く残されている。今回、筆者らは抗原受容体近傍のチロシンキナーゼであるSykがTCRシグナル伝達およびT17細胞の分化に重要であることを報告している。Syk欠損マウスでは、TCRシグナルが著しく障害され、 T17細胞の分化が停止していた。Sykを欠損するT前駆細胞にT細胞の主要なチロシンキナーゼであるZap70を過剰発現させたが、T17細胞の分化は回復しなかった。SykはPI3K/AKT経路の活性化にも重要であり、PI3KはT17細胞の分化に必須の分子であることが明らかとなった。さらに筆者らは、TCRとSykのリクルートに必要とされるアダプタータンパク質、RhoHもTCRシグナル伝達に重要であることを報告している。以上から、Sykを介した非典型的なTCRシグナルがT17細胞の分化を誘導していることが明らかとなった。

    骨芽細胞

    骨芽細胞は肺腫瘍にがん促進SiglecFhigh好中球を遠隔供給する

    原題:

    Osteoblasts remotely supply lung tumors with cancer-promoting SiglecFhigh neutrophils

    著者:

    Camilla Engblom, Christina Pfirschke Rapolas Zilionis, Janaina Da Silva Martins, Stijn A. Bos, Gabriel Courties, Steffen Rickelt, Nicolas Severe, Ninib Baryawno, Julien Faget, Virginia Savova, David Zemmour, Jaclyn Kline, Marie Siwicki, Christopher Garris, Ferdinando Pucci, Hsin-Wei Liao, Yi-Jang Lin, Andita Newton, Omar K. Yaghi, Yoshiko Iwamoto, Benoit Tricot, Gregory R. Wojtkiewicz, Matthias Nahrendorf, Virna Cortez-Retamozo, Etienne Meylan, Richard O. Hynes, Marie Demay, Allon Klein, Miriam A. Bredella, David T. Scadden, Ralph Weissleder, and Mikael J. Pittet

    雑誌:

    Science. 358: eaal5081. (2017)

    POINT!

    腫瘍中にはミエロイド系免疫細胞が見出されており、様々な種類のがんにおいて、ミエロイド系細胞が患者の生命予後を左右することが明らかになってきている。全てのミエロイド系細胞は骨髄から発生し、骨髄は骨芽細胞を含む骨構成細胞により維持されている。筆者らが肺がんモデルマウスと肺がん患者を調べたところ、骨転移が起きていないにも関わらず、骨芽細胞の活性化を増進していることがわかった。また、腫瘍細胞の生着は血中の好中球と相関があり、これには骨芽細胞の活性化が必要であった。骨芽細胞を欠失させるとSiglecFlow好中球には変化がなかったが、SiglecFhigh好中球が有意に減少した。この骨芽細胞にサポートされるSiglecFhigh好中球は、血管新生やミエロイド系の分化・遊走に関わるような腫瘍促進過程に関連した遺伝子発現が上昇していた。多くのがん患者において、骨量はむしろ減少することが知られていることを考慮すると、より詳細な検討が必要であるものの、この報告により骨芽細胞が肺がんの治療標的としての候補となる可能性が示された。

    CCR5

    HIVの補助受容体であるCCR5は破骨細胞の機能を制御する

    原題:

    The HIV co-receptor CCR5 regulates osteoclast function.

    著者:

    Ji-Won Lee, Akiyoshi Hoshino, Kazuki Inoue, Takashi Saitou, Shunsuke Uehara, Yasuhiro Kobayashi, Satoshi Ueha, Kouji Matsushima, Akira Yamaguchi, Yuuki Imai and Tadahiro Iimura

    雑誌:

    Nat Commun. doi: 10.1038/s41467-017-02368-5. (2017)

    POINT!

    ケモカイン受容体CCR5は、主にT細胞、樹状細胞、単球、マクロファージといった免疫系の細胞に発現しており、HIVの補助受容体として知られている。CCR5阻害薬はHIV感染患者の延命に貢献してきたが、その長期服用が骨代謝に与える影響は不明であった。著者らは、ヒト破骨細胞培養系やCCR5欠損マウスを用いた詳細な解析から、CCR5シグナルは破骨細胞の細胞骨格や接着分子の制御を介して、骨吸収機能を正に制御することを明らかにした。本研究で得られた知見から、CCR5阻害薬の服用は破骨細胞の機能を抑制することで、骨粗鬆症や骨折のリスクを低減させる可能性が示唆された。

    破骨細胞

    HIVは破骨細胞に感染し、骨吸収を促進する

    原題:

    Bone degradation machinery of osteoclasts: An HIV-1 target that contributes to bone loss.

    著者:

    Brigitte Raynaud-Messina, Lucie Bracq, Maeva Dupont, Shanti Souriant, Shariq M. Usmani, Amsha Proag, Karine Pingris, Vanessa Soldan, Christophe Thibault, Florence Capilla, Talal Al Saati, Isabelle Gennero, Pierre Jurdic, Paul Jolicoeur, Jean-Luc Davignon, Thorsten R. Mempel, Serge Benichou, Isabelle Maridonneau-Parini and Christel Vérollet

    雑誌:

    Proc Natl Acad Sci U S A. 115: E2556-E2565. (2018)

    POINT!

    HIV感染患者は健常人と比較し、骨粗鬆症や骨折のリスクが高いことが報告されているが、その原因の詳細は不明であった。本研究では、HIVが直接破骨細胞に感染することを、ヒト化マウスを用いたin vivo感染実験、ヒト滑膜組織へのex-vivo感染実験、ヒト破骨細胞培養系へのin vitro感染実験により証明した。HIV は構成タンパク質NEFを介し、破骨細胞の融合及び骨吸収機能を促進することが明らかとなり、この経路がHIV感染患者の骨量減少メカニズムの一端を担うことが示唆された。

  • GWAS解析

    踵骨骨密度と関連のある新たな153の遺伝子座とGPC6の骨粗鬆症における機能的相関の同定

    原題:

    Identification of 153 new loci associated with heel bone mineral density and functional involvement of GPC6 in osteoporosis.

    著者:

    John P Kemp, John A Morris, Carolina Medina-Gomez, Vincenzo Forgetta, Nicole M Warrington, Scott E Youlten, Jie Zheng, Celia L Gregson, Elin Grundberg, Katerina Trajanoska, John G Logan, Andrea S Pollard, Penny C Sparkes, Elena J Ghirardello, Rebecca Allen, Victoria D Leitch, Natalie C Butterfield, Davide Komla-Ebri, Anne-Tounsia Adoum, Katharine F Curry, Jacqueline K White, Fiona Kussy, Keelin M Greenlaw, Changjiang Xu, Nicholas C Harvey, Cyrus Cooper, David J Adams, Celia M T Greenwood, Matthew T Maurano, Stephen Kaptoge, Fernando Rivadeneira, Jonathan H Tobias, Peter I Croucher, Cheryl L Ackert-Bicknell, J H Duncan Bassett, Graham R Williams, J Brent Richards, David M Evans

    雑誌:

    Nat Genet, doi: 10.1038/ng.3949 (2017)

    POINT!

    著者らは英国バイオバンクに登録された142,487人のGWAS解析を行い、超音波法によって測定した踵骨の骨塩量と関連のある遺伝子座を同定した。この解析によって、ゲノムワイドで有意差を示す203遺伝子座における307の条件付き独立性をもつSNPを同定し、これらのSNPによって骨塩量の相違の約12%が説明できることが示された。これらには153のこれまでに報告のない遺伝子座や、大きな効果量をもつレアバリアントが含まれていた。さらなる詳細な解析のため、著者らは(1)バイオインフォマティクスによる機能的ゲノムアノテーションとヒト骨芽細胞の遺伝子発現解析、(2)遺伝子機能予測、(3)条件付き独立性をもつlead SNPに近接した120遺伝子の全ノックアウトマウスにおけるマイクロCTや骨強度解析による骨の表現型解析、(4)マウス骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞の遺伝子発現解析、の一連の解析を行い、ヘパラン硫酸プロテオグリカンファミリーに属するGPIアンカー型タンパク質をコードするGPC6が新たな骨塩量の決定因子であることが示された。

    オステオカルシン

    Gpr158はオステオカルシンによる認知機能制御を媒介する

    原題:

    Gpr158 mediates osteocalcin’s regulation of cognition.

    著者:

    Lori Khrimian, Arnaud Obri, Mariana Ramos-Brossier, Audrey Rousseaud, Stéphanie Moriceau, Anne-Sophie Nicot, Paula Mera, Stylianos Kosmidis, Theodoros Karnavas, Frederic Saudou, Xiao-Bing Gao, Franck Oury, Eric Kandel, Gerard Karsenty

    雑誌:

    J Exp Med, doi: 10.1084/jem.20171320 (2017)

    POINT!

    骨由来ホルモンであるオステオカルシン(OCN)は様々な生理学的機能を有することが明らかにされてきた。最近、著者らはOCNが海馬依存的記憶の向上や不安様行動の抑制に関わることを報告したが、加齢に伴う血中OCN減少がみられるマウスにおいて、OCNの投与によってそれら老齢マウスの行動を改善するのに十分であるかどうか、ということや、神経細胞でのOCNシグナル伝達を担う受容体は何か、という疑問が残されていた。本論文で、著者らは若齢マウス血漿の老齢マウスへの投与によって誘導される、記憶に対する有益的効果に血漿中のOCNの存在が必須であることや、OCNの末梢への投与のみでも、老齢マウスに同様の作用を発揮することを明らかにした。さらに、遺伝学的・電気生理学的・分子生物学的・行動学的な解析から、オーファンGタンパク質共役型受容体であるGpr158が海馬CA3領域の神経細胞で発現し、OCNシグナルによって制御される海馬依存的記憶を、イノシトール1,4,5-三リン酸とBDNFを介して伝達することを明らかにした。これらの結果は外因性のOCNがマウスの海馬依存的記憶を改善し、OCNシグナルに作用する分子が治療標的となることを示唆している。

    骨吸収

    Pkn3はWnt5a-Ror2シグナル下流で破骨細胞による骨吸収を促進する

    原題:

    Protein kinase N3 promotes bone resorption by osteoclasts in response to Wnt5a-Ror2 signaling.

    著者:

    Shunsuke Uehara, Nobuyuki Udagawa, Hideyuki Mukai, Akihiro Ishihara, Kazuhiro Maeda, Teruhito Yamashita, Kohei Murakami, Michiru Nishita, Takashi Nakamura, Shigeaki Kato, Yasuhiro Minami, Naoyuki Takahashi, Yasuhiro Kobayashi

    雑誌:

    Sci Signal, 10, eaan0023 (2017)

    POINT!

    破骨細胞におけるアクチンリング形成のための細胞骨格再構成には骨への接着と骨基質の吸収が必須である。著者らはWnt5aが成熟破骨細胞から分泌され、Ror2に結合することで細胞骨格の再構成に関わる低分子量GTPaseのRhoを活性化し、Rho下流のエフェクターキナーゼであるPkn3がアクチンリング形成に必要不可欠なチロシンキナーゼc-SrcやPyk2と結合してその活性を上昇させることで骨吸収活性を促進することを明らかにした。CtskCreによる破骨細胞特異的なRor2欠損マウスや全身性のPkn3欠損マウスでは骨形成や破骨細胞数が正常である一方、骨吸収が低下することによって骨量の有意な増加がみられた。これらのマウス由来破骨細胞は、c-Srcのキナーゼ活性や、骨吸収能、アクチンリング形成能が低下しており、Ror2欠損破骨細胞に恒常的活性化型のRhoAを過剰発現させることで、骨吸収活性が回復した。また、Pkn3のプロリンリッチ領域とキナーゼドメインの両者がPkn3欠損破骨細胞の骨吸収活性を回復させるのに必要であった。すなわち、Pkn3はWnt5a-Ror2-Rhoシグナルの下流で骨吸収を促進し、この経路が骨関連疾患の治療標的となりうることが示された。

    チェルビズム

    c-Fos欠損を併せ持つチェルビズムマウスは、TRAP+破骨細胞がないにも関わらずMMP14を発現するマクロファージによる炎症性骨破壊を呈する

    原題:

    Cherubism mice also deficient in c-Fos exhibit inflammatory bone destruction executed by macrophages that express MMP14 despite the absence of TRAP+ osteoclasts.

    著者:

    Mizuho Kittaka, Kotoe Mayahara, Tomoyuki Mukai, Tetsuya Yoshimoto, Teruhito Yoshitaka, Jeffrey P. Gorski, Yasuyoshi Ueki

    雑誌:

    J. Bone Miner. Res., doi: 10.1002/jbmr.3295 (2017)

    POINT!

    チェルビズムは、両側の上下顎骨領域に発生する線維性炎症性組織の増殖により天使様顔貌を呈し、顎骨の破壊を特徴とする。シグナルアダプター分子SH3BP2の機能獲得変異が原因とされ、ヒト患者と同様の変異を導入したSh3BP2KI/KIマウスは疾患モデルマウスとして使用される。また、このマウスでは炎症性関節破壊が認められる。c-fosノックアウトマウス(c-fos–/–マウス)には破骨細胞は存在しないが、SH3BP2KI/KIマウスとc-fos–/–マウスを掛け合わせると、破骨細胞が存在しないにも関わらず、骨破壊を認めた。骨破壊されていた局所にはF4/80陽性のマクロファージが存在し、マクロファージがいないマウスでは骨破壊は抑制された。さらに、MMP14阻害剤であるNSC405020投与でも骨破壊を抑制でき、マクロファージに発現しているMMP14がこのマウスで観察される骨吸収に必須であることが分かった。

    老化

    細胞老化を標的にすることでマウスでの老化関連骨量低下を抑制する

    原題:

    Targeting cellular senescence prevents age-related bone loss in mice.

    著者:

    Joshua N Farr, Ming Xu, Megan M Weivoda, David G Monroe, Daniel G Fraser, Jennifer L Onken, Brittany A Negley, Jad G Sfeir, Mikolaj B Ogrodni, Christine M Hachfeld, Nathan K LeBrasseur, Matthew T Drake, Robert J Pignolo, Tamar Pirtskhalava, Tamara Tchkonia, Merry Jo Oursler, James L Kirkland1 & Sundeep Khosla

    雑誌:

    Nat. Med., 23: 1072-1079 (2017)

    POINT!

    治療的に老化細胞を標的にすることは、複数の加齢性合併症を抑制できることが示されている。著者らは、加齢性骨量減少においても老化細胞をターゲットとすることが有用であるということを3つの系を用いて示した。1つ目は、薬物の投与時にp16Ink4aを発現する老化細胞の誘導性排除を可能にする「自殺」導入遺伝子INK-ATTACを用いて老化細胞を排除する方法である。2つ目は、薬理学的にダサチニブとケルセチンの同時投与により老化細胞を除去する方法「senolytic(老化細胞除去)」である。3つ目はJAK阻害剤で、老化細胞が産生するsenescence Associated Secretory Phenotype (SASP)を阻害する方法である。SASPは炎症性サイトカイン、ケモカイン、細胞外マトリックス分解タンパク質などを含み、パラクラインなシステム、あるいは全身に有害な影響をもたらすと考えられている。いずれの方法においても、老化細胞を除去すると、骨吸収の低下を伴う海綿骨および皮質骨のパラメーターの改善と、海綿骨での骨形成維持及び皮質骨での骨形成増加を示した。In vitroの解析により老化した状況では骨芽細胞の石灰化が阻害され、破骨細胞前駆細胞の生存を促進することで、骨量減少に傾くことを示した。

    MCi細胞

    Col6a1-CreによるM細胞誘導細胞におけるRANKLの標的欠失

    原題:

    Targeted deletion of RANKL in M cell inducer cells by the Col6a1-Cre driver

    著者:

    Nagashima K, Sawa S, Nitta T, Prados A, Koliaraki V, Kollias G, Nakashima T, Takayanagi H.

    雑誌:

    Biochem Biophys Res Commun. 2017 S0006-291X(17)31762-X

    POINT!

    腸管関連リンパ組織(GALT)の濾胞関連上皮(FAE)に局在するM細胞はパイエル板への抗原取り込みに重要な役割を担っている。近年、M細胞を誘導する間葉系細胞としてM細胞誘導(MCi)細胞が同定された。MCi細胞はRANKLを発現しており、M細胞の誘導を介して腸内細菌特異的IgAの産生に寄与する。以前、著者らはMCi細胞を含む間葉系細胞特異的に遺伝子を欠失させるCreマウスとしてTwist2-Creマウスが有用であることを報告した。しかし、MCi細胞をより深く研究するためにも、GALTの間葉系細胞における特異性を保持する、複数のCreラインの検討が重要と考えられる。そのため、本研究ではTwist2-CreマウスとCol6a1-Creマウスを比較検討した。その結果、Twist2-Cre マウスはMCi細胞、辺縁細網細胞(MRC)及び濾胞樹状細胞(FDC)に加えて細網線維芽細胞(FRC)、リンパ管内皮細胞(LEC)、血管内皮細胞(BEC)なども標的とするのに対し、Col6a1-CreマウスはMCi細胞、MRC及びFDCを標的とすることを示した。また、 Col6a1-Creを用いた間葉系細胞におけるRANKLの欠失はTwist2-Creと同様にM細胞の分化とIgAの産生が障害されることを示した。したがって、著者らはCol6a1-Cre もTwist2-Creと同様にMCi細胞を含むGALTの間葉系細胞の機能的解析に有用であることを示した。

    ロモソズマブ

    有用女性の骨粗鬆症における骨折抑制のためのロモソズマブあるいはアレンドロネート

    原題:

    Romosozumab or Alendronate for Fracture Prevention in Women with Osteoporosis

    著者:

    Kenneth G. Saag, M.D., Jeffrey Petersen, M.D., Maria Luisa Brandi, M.D., Andrew C. Karaplis, M.D., Ph.D., Mattias Lorentzon, M.D., Ph.D., Thierry Thomas, M.D., Ph.D., Judy Maddox, D.O., Michelle Fan, Ph.D., Paul D. Meisner, Pharm.D., and Andreas Grauer, M.D.

    雑誌:

    N. Engl. J. Med., doi: 10.1056/NEJMoa1708322. (2017)

    POINT!

    ロモソズマブはスクレロスチン抗体であり、骨形成を促進するとともに、骨吸収を抑制する、二重の効果で骨量を上昇させることが期待されている。この報告は、骨粗鬆症と脆弱性骨折を示した4093人の無作為に抽出された閉経後女性を1:1に分け、12ヶ月間に渡り、月一回のロモソズマブ皮下投与もしくは週1回のアレンドロネート経口投与を行い、その後両群に対しアレンドロネート投与を行なった結果である。試験開始後24ヶ月の時点での新たな椎体骨折の発生頻度を比べた。その結果、ロモソズマブ投与後アレンドロネートに切り替えた群の方が、アレンドロネート単独投与群に比べ有意に骨折リスクの低下を認めた。ロモソズマブの有効性が示されたが、以前の試験では報告されなかった深刻な心血管障害のリスクがロモソズマブ投与群において高いことが報告されたため、注視していく必要がある。

    副甲状腺ホルモン

    副甲状腺ホルモンはマウスの骨芽細胞前駆細胞の運命を調節する

    原題:

    Parathyroid hormone regulates fates of murine osteoblast precursors in vivo.

    著者:

    Deepak H. Balani, Noriaki Ono, Henry M. Kronenberg

    雑誌:

    J Clin Invest, doi: 10.1172/JCI91699 (2017)

    POINT!

    副甲状腺ホルモン(PTH)の組み替え体であるテリパラチドは骨形成を促進し、骨粗鬆症の唯一の骨同化剤として承認されている。テリパラチドは骨芽細胞のアポトーシスを抑制し、ライニング細胞を活性化することで、骨芽細胞の数を増やすと考えられているが、初期の骨芽細胞前駆細胞に対する作用は不明であった。今回、研究チームは骨芽細胞系統の初期の細胞をSox9-cre ERTマウスを用いてラベルし、その運命を追った。すると、テリパラチドは骨芽細胞前駆細胞を増やし、さらにその成熟も促進することがわかった。また、テリパラチド投与を中止すると骨髄の脂肪細胞が増加し、その一部は骨芽細胞系統細胞由来であった。この結果から、テリパラチドは骨芽細胞分化誘導作用を持つことが示唆されたが、これにはPTH受容体の発現が必要であった。テリパラチドによる初期前駆細胞の増加はアポトーシスの抑制によるもので、増殖には影響を与えなかった。以上から、テリパラチドは骨芽細胞系統の前駆細胞数を増やし、骨芽細胞分化を促進、脂肪細胞分化を抑制することが明らかになった。

    骨パジェット病

    骨パジェット病において、NFAM1シグナルは破骨細胞の分化と骨吸収能を促進する

    原題:

    NFAM1 signaling enhances osteoclast formation and bone resorption activity in Paget's disease of bone.

    著者:

    Yuvaraj Sambandam, Kumaran Sundaram, Takamitsu Saigusa, Sundaravadivel Balasubramanian, Sakamuri V. Reddy

    雑誌:

    Bone, 101, 236–244, (2017)

    POINT!

    骨パジェット病は、骨代謝が局所的に異常に亢進し、骨の変形や強度低下を引き起こす疾患であり、その発症には麻疹ウイルス感染の関与が示唆されている。著者らは以前、骨パジェット病患者の破骨細胞及び骨髄細胞で麻疹ウイルスヌクレオカプシドタンパク質(MVNP)が発現しており、破骨細胞の異常な活性化に寄与することを報告した。しかし、MVNPがどのようにして破骨細胞の分化及び機能を制御するかに関しては不明であった。本研究において著者らは、MVNPの遺伝子導入によって破骨細胞で発現が上昇する遺伝子として、NFAM1(NFAT activating protein with ITAM motif 1)を同定し、NFAM1がMVNPによる破骨細胞活性化に重要な役割を持つことを報告した。

    造血幹細胞ニッチ

    造血幹細胞のための多くのニッチは恒常性を保ちつつ空いている

    原題:

    Numerous niches for hematopoietic stem cells remain empty during homeostasis.

    著者:

    Manabu Shimoto, Tatsuki Sugiyama and Takashi Nagasawa

    雑誌:

    Blood, 129: 2124-2131 (2017)

    POINT!

    骨髄移植前の骨髄破壊は、ニッチスペースを生み出すことで移植造血幹細胞の生着を促すと考えられている。しかしながら、研究チームは造血幹細胞を大量に移植すると骨髄破壊をしなくても生着するということを示した。このことは、骨髄内のニッチスペースは十分に空いていることを示す。組織解析を行うと新たに移植された幹細胞があるニッチはレシピエントの幹細胞のニッチとは離れた場所にあり、CXCL12–abundant reticular (CAR)細胞と接触していた。この報告は骨髄非破壊造血幹細胞移植の根拠と、骨髄破壊によるエシピエント側の健康な他の組織へのダメージを与えることなしに造血幹細胞移植ができる可能性を示した。

    進行性骨化性線維異形成症

    Activin-AはmTORシグナルを増強し、進行性骨化性線維異形成症(FOP)における軟骨異形成を促進する。

    原題:

    Activin-A enhances mTOR signaling to promote aberrant chondrogenesis in fibrodysplasia ossificans progressiva

    著者:

    Kyosuke Hino, Kazuhiko Horigome, Megumi Nishio, Shingo Komura, Sanae Nagata, Chengzhu Zhao, Yonghui Jin, Koichi Kawakami, Yasuhiro Yamada, Akira Ohta, Junya Toguchida, and Makoto Ikeya

    雑誌:

    J Clin Invest, doi.org/10.1172/JCI93521. (2017)

    POINT!

    進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、軟組織において異所性骨化が起きる稀な先天性遺伝子疾患である。FOP患者はBMP I型受容体ACVR1に変異を有し、異常なBMPシグナルが伝達されることが知られている。最近、変異型ACVR1 (FOP-ACVR1) でのみBMPシグナルを伝達する分子としてactivin Aが見出された。本研究では、activin Aによる異所性骨化の分子機構を解明するために、FOP患者由来の細胞から作ったiPS細胞を用い、ハイスループットスクリーニング(HTS)を行った。6,809の化合物をスクリーニングし、mTORシグナルが重要であることを突き止めた。FOPモデルマウスにmTORシグナルの阻害剤であるラパマイシンを投与すると、異所性骨化が抑制された。さらに、DNAマイクロアレイ解析ではactivin Aの刺激によりEnpp2遺伝子が最も大きく変動していた。したがって、FOP病態におけるactivin A/FOP-ACVR1/ENPP2/mTORシグナル経路の重要性が明らかとなり、異所性骨化を抑えるためにはラパマイシンが有効である可能性が示された。

    代謝

    エピジェネティック機構によるTH17と誘導性Treg細胞バランスの代謝制御

    原題:

    Metabolic control of TH17 and induced Treg cell balance by an epigenetic mechanism

    著者:

    Tao Xu, Kelly M. Stewart, Xiaohu Wang, Kai Liu, Min Xie, Jae Kyu Ryu, Ke Li, Tianhua Ma, Haixia Wang, Lu Ni, Saiyong Zhu, Nan Cao, Dongwei Zhu, Yu Zhang, Katerina Akassoglou, Chen Dong, Edward M. Driggers & Sheng Ding

    雑誌:

    Nature. doi:10.1038/nature23475 (2017)

    POINT!

    代謝はエピジェネティクスや転写を制御することで細胞の運命や機能を変化させることが知られている。しかし、代謝がT細胞分化に必要とされる生体エネルギーや生合成物質を生み出すだけでなく、エピジェネティック制御を介し、T細胞の運命決定を制御するどうかは不明である。筆者らはGlutamate Oxaloacetate Transaminase 1 (GOT1)を阻害されるとして知られているアミノオキシ酢酸(AOA)という低分子化合物が17型ヘルパーT(Th17)細胞を誘導生制御性T細胞(iTreg)にリプログラムすることを発見した。そのメカニズムの解析から、GOT1によって触媒されるアミノ基転移の亢進がTh17細胞内の2-hydroxyglutarate (2-HG)の蓄積を誘導し、Foxp3遺伝子座のメチル化をもたらすことがわかった。また、2-HGの産生を阻害すると脱メチル化によるFoxp3の発現上昇が認められ、結果的にRORtの機能に拮抗することでTH17細胞への分化を阻害し、iTregへの極性化を促進した。AOAの投与によるGOT1の選択的阻害によって、生体内のTH17細胞とiTreg細胞のバランスを制御することに成功し、実験的自己免疫性脳脊髄炎の改善が認められた。したがって、グルタミン酸代謝経路を標的にすることは、TH17細胞依存的な自己免疫疾患に対する治療薬の開発に繋がり、新たな戦略となる。

    低酸素

    低酸素感受性のCOMMD1はヒトマクロファージでのシグナル伝達と細胞内代謝を統合し、破骨細胞分化を抑制する

    原題:

    Hypoxia-Sensitive COMMD1 Integrates Signaling and Cellular Metabolism in Human Macrophages and Suppresses Osteoclastogenesis

    著者:

    Koichi Murata, Celestia Fang, Chikashi Terao, Eugenia G. Giannopoulou, Ye Ji Lee, Min Joon Lee, Se-Hwan Mun, Seyeon Bae, Yu Qiao, Ruoxi Yuan, Moritoshi Furu, Hiromu Ito, Koichiro Ohmura, Shuichi Matsuda, Tsuneyo Mimori, Fumihiko Matsuda, Kyung-Hyun Park-Min, Lionel B. Ivashkiv

    雑誌:

    Immunity 47, 66–79 (2017)

    POINT!

     低酸素状態では炎症応答や破骨細胞分化が促進されるが、そのメカニズムは完全には明らかになってはいない。著者らはヒト破骨細胞のRNA-seq解析によって、低酸素によって発現抑制されるCOMMD1を同定した。COMMD1のノックダウンによって破骨細胞分化が促進し、LysM-CreによるCommd1コンディショナル欠損マウスに関節炎や炎症性頭蓋骨破壊モデルを誘導すると破骨細胞数増加・骨破壊亢進が観察された。さらに、eQTL解析によって、COMMD1発現上昇と関節リウマチでの骨破壊の低下との関連が確認された。著者らはCOMMD1をノックダウンしたヒトマクロファージでのRANKL刺激前後のRNA-seq解析によって、COMMD1がRANKL誘導性のNF-Bシグナルや、転写因子E2F1依存的な細胞内代謝経路を抑制することを見出した。E2F1ノックダウン細胞のRNA-seq解析から、E2F1の標的として代謝要求の変化に応答するCKB (creatine kinase B)などの代謝経路や解糖系の遺伝子に加え、炎症性サイトカイン誘導性遺伝子を同定した。これらの結果はCOMMD1やE2Fによって誘導される代謝経路が、低酸素下での炎症性の破骨細胞誘導の重要な制御因子であることを示している。

    関節リウマチ

    組織浸潤性炎症性T細胞における細胞内代謝による足場タンパク質TKS5の制御

    原題:

    Metabolic control of the scaffold protein TKS5 in tissue-invasive, proinflammatory T cells

    著者:

    Yi Shen, Zhenke Wen, Yinyin Li, Eric L Matteson, Jison Hong, Jörg J Goronzy, Cornelia M Weyand

    雑誌:

    Nat Immunol. doi: 10.1038/ni.3808 (2017)

    POINT!

    関節リウマチ患者における病原性のT細胞は細胞外マトリクスをコントロールすることで非リンパ組織に浸潤し、持続性の炎症性微小構造を形成する。本研究で、著者らは関節リウマチ患者由来のT細胞がポドソーム足場タンパク質であるTKS5を発現し、それによって組織浸潤能を有する細胞膜構造を形成することを見出した。TKS5の過剰発現は関節リウマチT細胞内の代謝環境、特に解糖系の低下によって誘導されるATPとピルビン酸の欠損によって制御されていた。PFKFB3阻害剤の3POやピルビン酸キナーゼM2阻害剤のシコニンを用いて低ATP低ピルビン酸の状態を作り出すと、脂肪酸生合成と細胞質での脂肪滴形成が誘導された。さらに、ヒトCD4+T細胞を低ATP低ピルビン酸状態にした後、ヒト滑膜を移植したNSGマウスに移入すると、組織浸潤能が上昇しTNFやRANKL、IFN-、IL-17、IL-6などの発現が上昇した一方、C75によって脂肪酸合成を阻害したり、ピルビン酸キナーゼ活性化剤ML265によってピルビン酸生合成を回復させたりすると、RANKL陽性T細胞の組織浸潤を抑制し、TNFやRANKL、IFN-やIL-17産生を減少させた。すなわち、細胞内代謝を介したT細胞の制御によって、特定の組織部位へのT細胞浸潤をブロックし、多くの慢性炎症疾患に対する新たな治療の選択肢を提供できる可能性が示唆された。

    カップリング

    破骨細胞によるスクレロスチン発現の抑制によって骨形成と骨吸収がカップリングする

    原題:

    Bone formation is coupled to resorption via suppression of sclerostin expression by osteoclasts

    著者:

    Masanori Koide, Yasuhiro Kobayashi, Teruhito Yamashita, Shunsuke Uehara, Midori Nakamura, B. Yukihiro Hiraoka, Yuki Ozaki, Tadahiro Iimura, Hisataka Yasuda, Naoyuki Takahashi, Nobuyuki Udagawa

    雑誌:

    J Bone Miner Res. doi: 10.1002/jbmr.3175 (2017)

    POINT!

    骨形成はカップリング機構によって骨吸収と共役しているが、そのメカニズムの全貌は解明されてはいない。著者らはOPG欠損マウスやRANKLトランスジェニックマウスを用い、破骨細胞がスクレロスチンの発現を抑制することで骨形成を促進する可能性を見出した。Wnt/-カテニンシグナルはOPG欠損マウスやRANKLトランスジェニックマウスで高く、スクレロスチン発現は低かった。カップリング因子として知られるTGF-やCthrc1、オンコスタチンM、さらにRANKLやM-CSFなどはスクレロスチン発現には影響しない一方、破骨細胞の培養上清はUMR106細胞や骨芽細胞から分化させた骨細胞様細胞でのスクレロスチン発現を抑制した。そこで、著者らはサイトカインアレイを用い、骨髄マクロファージの培養上清と比較して破骨細胞培養上清で4倍以上増加した因子を調べ、LIFを同定した。in vitroでの実験によって破骨細胞はLIFを分泌し、スクレロスチン発現を抑制することが明らかになった。実際に、抗RANKL抗体はLIF発現を抑制し、スクレロスチン発現を上昇させることでOPG欠損マウスでの骨形成を低下させた。以上から、破骨細胞由来のLIFがスクレロスチン発現を介して骨代謝回転を制御している可能性が示唆された。

    侵害受容器

    TRP チャネル -CGRP-Jdp2 軸を介して侵害受容器は真菌による骨炎症の回復を促進する

    原題:

    Nociceptors Boost the Resolution of Fungal Osteoinflammation via the TRP Channel-CGRP-Jdp2 Axis

    著者:

    Kenta Maruyama, Yasunori Takayama, Takeshi Kondo, Ken-ichi Ishibashi, Bikash Ranjan Sahoo, HisashiKanemaru, Yutaro Kumagai, Mikaël M. Martino, Hiroki Tanaka, Naohito Ohno, Yoichiro Iwakura, Naoki Takemura,Makoto Tominaga, and Shizuo Akira

    雑誌:

    Cell Rep 19, 2730‒2742 (2017)

    POINT!

    Candida albicans は免疫不全宿主の創傷や整形外科的手術における汚染を介して骨格組織に侵入し、重度の痛みと骨破壊を伴うカンジダ性骨髄炎を引き起こす。侵害受容器の神経支配は皮膚と骨で良く知られているが、真菌性炎症における侵害受容調節のメカニズムは不明のままであった。本研究で、著者らは Candida albicans がβ- グルカン受容体の Dectin-1 を介してNav1.8 陽性の侵害受容ニューロンを刺激し、CGRP 発現を誘導することを明らかにした。この CGRP 発現誘導は Dectin-1 下流シグナルでよく知られる Bcl-10 や Malt-1 非依存的である一方、イオンチャネルの TRPV1/TRPA1 に依存的であった。Nav1.8 陽性侵害受容ニューロン、もしくは TRPV1/TRPA1 を欠損させたマウス後肢へのβ- グルカンの投与により、CGRP 産生を低下させ、重篤な骨炎症を引き起こした。侵害受容器由来の CGRP は、転写抑制因子 Jdp2 を介した NF-κB p65 の直接的な抑制によりβ-グルカン誘導性炎症を阻害し、アクチン重合の阻害によって破骨細胞多核化を阻害した。これらの発見は真菌性骨炎症の回復における Dectin-1 を介した "sensocrine" 経路の役割を示している。

    骨髄ニッチ

    骨形成因子 Runx2 は骨髄ストローマ細胞ヒエラルキーの頂点に位置する
    レプチン受容体陽性細胞のサブセットを標識する

    原題:

    Osteogenic Factor Runx2 Marks a Subset of Leptin Receptor-Positive Cells that Sit Atop the Bone Marrow Stromal Cell Hierarchy

    著者:

    Mengyu Yang, Atsushi Arai, Nobuyuki Udagawa, Toru Hiraga, Zhao Lijuan, Susumu Ito, Toshihisa Komori, Takeshi Moriishi, Koichi Matsuo, Kouji Shimoda, Ali H. Zahalka, Yasuhiro Kobayashi, Naoyuki Takahashi, and Toshihide Mizoguchi

    雑誌:

    Sci Rep. 7: 4928 (2017)

    POINT!

    骨髄間葉系幹細胞・前駆細胞 (BM-MSPC) は骨髄細胞を供給することで骨組織の恒常性を維持している。MSPC の標識にいくつかのマーカーが同定されてきたが、それらのマーカーによって分離した細胞集団にも依然として BM-MSPC 以外の集団が含まれていた。これまでの報告から、MSPC は LepR(レプチン受容体)陽性である一方、骨芽細胞は分化のマスター制御因子 Runx2 陽性であることが知られている。本研究で、著者らは Runx2-GFP レポーターマウスを作製し、LepR+ の細胞集団にRunx2-GFPlow のサブポピュレーションが存在し、この集団が Runx2-GFP‒集団と比べて、高い CFU-F 形成能と幹細胞活性を示す基準である間葉球(mesensphere)形成能を有していることを明らかにした。さらに、LepR+Runx2-GFPlow 細胞は PTH に応答して Runx2 発現を増加させ、骨表面に沿って多層性の構造を形成した。さらに、この多層性細胞集団は Osterix と I 型コラーゲンを発現し、その結果成熟骨芽細胞が形成されることを明らかにした。これらの結果から、Runx2 が骨芽細胞への分化コミットメントを受ける前から LepR+ 細胞集団で弱く発現しており、LepR+Runx2-GFPlow 間質細胞は骨髄ストローマヒエラルキーの頂点に位置することが示された。

    オプトジェネティクス

    オプトジェネティクスによる Plexin-B1 の活性化によって明らかにされた破骨細胞・骨芽細胞間の接触の反発

    原題:

    Optogenetic activation of Plexin-B1 reveals contact repulsion between osteoclasts and osteoblasts

    著者:

    Abhijit Deb Roy, Taofei Yin, Shilpa Choudhary, Vladimir Rodionov, Carol C. Pilbeam, and Yi I. Wu

    雑誌:

    Nat Commun. 8: 15831 (2017)

    POINT!

    骨リモデリングの際、破骨細胞は骨芽細胞のケモタキシスを誘導する一方、空間的な隔たりは維持する。著者らは破骨細胞が発現する反発性のガイダンス因子 Sema4D と骨芽細胞が発現する Plexin-B1 受容体に着目し、CRISPR/Cas9 法によって MC3T3-E1 細胞で Plexin-B1 を欠損させることで、この相互作用が細胞移動の接触阻害(contact inhibition of locomotion)を誘導することを示した。細胞遊走を誘導する際に Plexin-B1 の局所的な刺激が時空間的にその下流ターゲットをどのように連携させるかを解明するため、著者らは植物由来の光受容タンパク質 Cry2 と蛍光タンパク質、さらに Plexin-B1 細胞内領域の融合タンパク質である optoPlexin を作製することで、Sema4D 非存在下で青色光によって活性化する Plexin-B1 のオプトジェネティックなツールを開発した。遊走する骨芽細胞の先端での青色光による高精度な optoPlexin の活性化は直ちに局所的な退縮を誘導し、さらに、細胞を遠ざけるために遠位の突起における退縮も誘導した。これらの形態学的変化とともに、Myosin II や PIP3、接着、活性化型 Cdc42 の再編成が誘導された。この現象は、Cdc42 を活性化し細胞突起形成を促進する、RhoA/ROCK を介したRhoGEF であるβ-Pix の再分配の結果として起こる再局在化であると考えられた。これらの結果から、骨芽細胞での接触阻害の原因となる Plexin-B1 の役割や、これまでに未知であった細胞遊走活性化因子の空間的分布に対するセマフォリンシグナル伝達の効果が明らかにされた。

    オステオポンチン

    分泌型および細胞内オステオポンチンによる、リンパ系と骨髄系の細胞集団のバランスの変動

    原題:

    Skewing of the population balance of lymphoid and myeloid cells by secreted and intracellular osteopontin

    著者:

    Masashi Kanayama, Shengjie Xu, Keiko Danzaki, Jason R Gibson, Makoto Inoue, Simon G Gregory and Mari L Shinohara

    雑誌:

    Nat. Immunol., doi:10.1038/ni.3791 (2017)

    POINT!

    リンパ系と骨髄系の細胞集団のバランスはよくコントロールされており、この変動は種々の免疫応答と深く関係している。オステオポンチンはリン酸化糖タンパク質の一種で、様々な細胞が発現し、様々な免疫応答および病態に関与している。オステオポンチンは骨髄の間質細胞も発現し、幹細胞の総数を減らし造血幹細胞の機能を抑制することが知られているが、リンパ系および骨髄系の細胞前駆体への作用は不明であった。本研究では、感染などの病態下で、オステオポンチンがリンパ系細胞と骨髄系細胞のバランスをリンパ系細胞優位に変動させることを明らかにした。また筆者らは二つのオステオポンチンのアイソフォームについて検討し、細胞内オステオポンチンは骨髄性造血を抑制し、分泌型オステオポンチンはリンパ系の細胞を増やすという違いも明らかにした。本来、感染などの病態化では減少した骨髄系の細胞を補うため骨髄性造血を活性化する必要があるが、それに逆行する 2 つのオステオポンチンアイソフォームの有害作用を初めて明らかにした。

    老化細胞

    局所における老化細胞の除去は外傷後変形性関節症の進展を軽減し前再生環境を形成する

    原題:

    Local clearance of senescent cells attenuates the development of post-traumatic osteoarthritis and creates a pro-regenerative environment

    著者:

    Ok Hee Jeon, Chaekyu Kim, Remi-Martin Laberge, Marco Demaria, Sona Rathod, Alain P Vasserot, Jae Wook Chung, Do Hun Kim, Yan Poon, Nathaniel David, Darren J Baker, Jan M van Deursen, Judith Campisi and Jennifer H Elisseef

    雑誌:

    Nat Med, 23, 775‒781, (2017)

    POINT!

    老化軟骨細胞は変形性関節症患者から単離された軟骨組織に認められるが、その役割は不明である。老化細胞が変形性関節症の原因であるという仮説を検証するために、著者らは老化細胞を選択的に追跡し除去することができる p16-3MRトランスジェニックマウスを使用した。著者らは前十字靭帯切断後に老化細胞が関節軟骨と滑膜に集積することを示し、さらに老化細胞の選択的な除去が外傷後変形性関節症の進展を軽減し軟骨の再生を促すことを示した。関節腔内への老化細胞除去分子の投与でも同様の効果が確認された。変形性関節症の患者から単離した培養軟骨細胞から老化細胞を選択的に除去すると老化マーカーや炎症マーカーの発現が低下し、軟骨組織の細胞外基質タンパクが増加することを認めた。これらの知見は老化細胞が関節変性疾患の治療標的であることを示すものである。

    マクロファージ

    マクロファージによる組織修復及びリモデリングには、IL-4 または IL-13 とアポトーシス細胞を必要とする

    原題:

    Macrophage function in tissue repair and remodeling requires IL-4 or IL-13 with apoptotic cells

    著者:

    Lidia Bosurgi, Y. Grace Cao, Mar Cabeza-Cabrerizo, Andrea Tucci, Lindsey D. Hughes, Yong Kong, Jason S. Weinstein, Paula Licona-Limon, Edward T. Schmid, Facundo Pelorosso, Nicola Gagliani, Joseph E. Craft, Richard A. Flavell, Sourav Ghosh, and Carla V. Rothlin

    雑誌:

    Science, 356: 1072-1076 (2017)

    POINT!

    組織修復は、蠕虫感染時に見られる IL-4 や IL-13 依存的な広範に渡る宿主応答の一つと考えられる。今回の報告では、マクロファージにおける組織修復プログラムの誘導には、IL-4 あるいは IL-13 とともにアポトーシス細胞も不可欠であることが明らかにされた。著者らは、蠕虫感染及び大腸炎マウスモデルを用い、アポトーシス細胞のセンサー遺伝子を破壊すると、組織マクロファージの増殖及び組織修復遺伝子の誘導が障害されたことを示した。一方でパターン認識受容体のサイトカイン依存性誘導、あるいはマクロファージの遊走関連遺伝子にはアポトーシス細胞の認識が必要ではない。したがって、アポトーシス細胞の認識に依存する組織修復の誘導は、IL-4 と IL-13 などの可溶性サイトカインの異所性活性を空間的に制御していることが示唆された。

    Mucosal γδT 細胞

    眼の常在菌は IL-17 産生型γδT 細胞を誘導し角膜感染症を防ぐ

    原題:

    An Ocular Commensal Protects against Corneal Infection by Driving an Interleukin-17 Response from Mucosal γδ T Cells

    著者:

    Anthony J. St. Leger, Jigar V. Desai, Rebecca A. Drummond, Abirami Kugadas, Fatimah Almaghrabi, Phyllis Silver, Kumarkrishna Raychaudhuri, Mihaela Gadjeva, Yoichiro Iwakura, Michail S. Lionakis, and Rachel R. Caspi

    雑誌:

    Immunity, 47, 148‒158 (2017)

    POINT!

    粘膜臓器である腸管、口腔、鼻腔、生殖器には細菌叢が存在し免疫系を活性化する。眼は粘膜を持つが、細菌叢が存在するかどうかや、眼細菌叢が免疫系に与える影響は分かっていなかった。著者らは、眼の粘膜上皮に Corynebacteriummastitidis が生着していることを見出した C. mastitidis は眼の粘膜組織に局在するγδT 細胞から IL-17 産生を誘導することで、好中球の遊走や涙液内の抗菌ペプチド産生を増加させる。C. mastitidis が生着していないマウスは Candida albicansやPseudomonas aeruginosa 感染症に易感染性を示すことから、C. mastitidis は宿主の免疫系を活性化することで感染防御に寄与していることが明らかになった。

    FSH

    FSHの阻害により熱産生性脂肪組織を誘導し、体脂肪を減少させる

    原題:

    Blocking FSH induces thermogenic adipose tissue and reduces body fat

    著者:

    Peng Liu, Yaoting Ji, Tony Yuen, Elizabeth Rendina-Ruedy, Victoria E. DeMambro, Samarth Dhawan, Wahid Abu-Amer, Sudeh Izadmehr, Bin Zhou, Andrew C. Shin, Rauf Latif, Priyanthan Thangeswaran, Animesh Gupta, Jianhua Li, Valeria Shnayder, Samuel T. Robinson, Yue Eric Yu, Xingjian Zhang, Feiran Yang, Ping Lu, Yu Zhou, Ling-Ling Zhu, Douglas J. Oberlin, Terry F. Davies, Michaela R. Reagan, Aaron Brown, T. Rajendra Kumar, Solomon Epstein, Jameel Iqbal, Narayan G. Avadhani, Maria I. New, Henrik Molina, Jan B. van Klinken, Edward X. Guo, Christoph Buettner, Shozeb Haider, Zhuan Bian, Li Sun, Clifford J. Rosen & Mone Zaidi

    雑誌:

    Nature, 546: 107-112 (2017)

    POINT!

    閉経は骨量減少や内臓脂肪の上昇と関連する。著者らは以前、下垂体ホルモン FSH(卵胞刺激ホルモン)のβサブユニットを標的とするポリクローナル抗体投与により、卵巣摘出マウスでの骨量を上昇させうることを報告した。本研究ではこの抗体が高脂肪食によって肥満化した野生型マウスでの脂肪組織を急激に減少させ、Fsh 受容体である Fshr の遺伝的ハプロ不全と同様の表現型を呈することを見出した。さらに卵巣摘出マウスでも同様に脂肪組織量が低下することも確認した。この抗体がFsh シグナル下流で Gi タンパク質によって抑制される cAMP シグナルを活性化することで、Ucp1 の発現上昇が誘導される。これにより、脂肪細胞のベーシュ化・細胞内ミトコンドリア量増加・褐色脂肪組織の活性化を強く誘導して熱産生を亢進することが明らかになった。本研究によって肥満と骨粗鬆症との同時治療の可能性が示された。

    細胞特異的eQTL

    細胞特異的パスウェイの polygenic な荷重が関節リウマチリスクの根底にある

    原題:

    Polygenic burdens on cell-specific pathways underlie the risk of rheumatoid arthritis

    著者:

    Kazuyoshi Ishigaki, Yuta Kochi, Akari Suzuki, Yumi Tsuchida, Haruka Tsuchiya, Shuji Sumitomo, Kensuke Yamaguchi, Yasuo Nagafuchi, Shinichiro Nakachi, Rika Kato, Keiichi Sakurai, Hirofumi Shoda, Katsunori Ikari, Atsuo Taniguchi, Hisashi Yamanaka, Fuyuki Miya, Tatsuhiko Tsunoda, Yukinori Okada, Yukihide Momozawa, Yoichiro Kamatani, Ryo Yamada, Michiaki Kubo, Keishi Fujio & Kazuhiko Yamamoto

    雑誌:

    Nat Genet. doi: 10.1038/ng.3885 (2017)

    POINT!

    近年の研究から、免疫疾患の発症に関与するかなりの割合のリスク多型が、細胞特異的な遺伝子発現に影響することが示唆されている。そこで著者らは、疾患の要因となる遺伝子の候補や、免疫関連疾患にかかわる経路を同定するため、日本人 105 人の健常人から採取した 5 つの免疫細胞サブセット(CD4+ T 細胞、CD8+ T 細胞、B 細胞、NK 細胞、単球)と非分画末梢血の RNA-seq と DNA 多型との関連を網羅的に解析することで eQTL カタログを作製し、3 段階の解析手法を構築した。すなわち、(1) 本研究の eQTL データベースと公共エピゲノムデータベースを用いた個別遺伝子発現の予測、(2) 患者と健常人での予測発現量の比較、(3)eQTL 効果の方向性と各遺伝子のパスウェイデータベース上の機能を比較することによる細胞特異的なパスウェイ活性の予測、である。この解析手法を関節リウマチのデータセットに適用することで、著者らは疾患の原因となる遺伝子の候補とサイトカイン経路、すなわち CD4+ T 細胞における TNF 経路の活性化を同定した。本研究で開発された解析手法をさらに応用することで、複合的な要因で発症する疾患メカニズムの特定、およびそれらに基づいた治療法の探索が期待される。

    マラリア原虫

    マラリア原虫由来産物が骨髄に残存し、慢性骨量減少を促進する

    原題:

    Plasmodium products persist in the bone marrow and promote chronic bone loss

    著者:

    Michelle S. J. Lee, Kenta Maruyama, Yukiko Fujita, Aki Konishi, Patrick M. Lelliott, Sawako Itagaki, Toshihiro Horii, Jing-wen Lin, Shahid M. Khan, Etsushi Kuroda, Shizuo Akira, Ken J. Ishii & Cevayir Coban

    雑誌:

    Sci. Immunol. 2, eaam8093 (2017)

    POINT!

    マラリアは重篤な合併症を伴い生命を脅かす疾患であるが、大部分の患者は部分的な免疫が確立され回復する。しかしながら、マラリア感染後の生存者において、これまであまり解明されていない長期的症状が潜んでいる可能性が示されている。本報告で、著者らはマラリア原虫由来産物による慢性的な骨での炎症の結果、骨量減少と成長遅延を引き起こすことを発見した。早期のマラリア感染は骨吸収も骨形成も低下させる一方、慢性期においてはマラリア原虫が全身性に排除されているにもかかわらず、マラリア原虫由来産物が残存し、骨髄に蓄積することで MyD88 依存的な慢性炎症が誘導されることがわかった。この炎症応答によって、炎症性サイトカイン発現が上昇して破骨細胞分化が促進されるだけでなく、骨芽細胞での RANKL発現も上昇し、さらに破骨細胞分化が促進されることが示された。この強い破骨細胞分化の活性化は骨リモデリングにおいて骨吸収を亢進させ、慢性的な骨量減少を誘導すると考えられる。実際に、ヘモグロビン分解能が低い変異型マラリア原虫を感染させたマウスでは、マラリア原虫由来副生成物であるヘモゾイン産生能が低く、骨量減少は誘導されなかった。さらに、マラリア原虫を感染させたマウスにビタミン D3 アナログのアルファカルシドールを補給することによって骨量減少が抑制されることも示された。これらの結果はマラリア感染患者での骨量減少のリスクを明らかにし、抗マラリア薬治療とともに骨量減少に対する治療が有益である可能性を示唆している。

    mTORC1

    mTOR の阻害は母性 VLDLR 欠損による母乳の異常を緩和する

    原題:

    mTOR Inhibition Subdues Milk Disorder Caused by Maternal VLDLR Loss

    著者:

    HoangDinh Huynh, Wei Wei & Yihong Wan

    雑誌:

    Cell Rep 19, 2014‒2025 (2017)

    POINT!

    VLDLR(超低密度リポタンパク質受容体)が骨格系の恒常性にどのような影響を有するかは不明である。本論文で、著者らは母マウスと仔マウスの VLDLR が破骨細胞分化・骨吸収に対して相反する機能を有することを発見した。仔マウスでの VLDLR 欠損は RANKL シグナルの増強によって破骨細胞分化が上昇し骨量減少が誘導される。一方、母マウスでの VLDLR欠失は母乳の代謝を変化させ、それにより仔マウスでの炎症性脱毛症を誘導することは報告されていたが、さらに破骨細胞分化を抑制し骨量増加を引き起こすことを見出した。VLDLR 欠損マウスから出産した VLDLR 欠損マウスは骨量が増加していたことから、母性での VLDLR 欠損の影響の方が仔での VLDLR 欠損の影響を上回ることが明らかになった。さらに、母マウスへのスタチン投与による HMG-CoA レダクターゼの抑制は、仔マウスの脱毛症を部分的に改善したが、骨吸収の低下には効果がみられなかったことから、母乳の異常はコレステロール生合成の異常やコレステロール前駆体の蓄積だけでは説明できないことが示唆された。詳細な解析から、VLDLR が mTORC1 活性を抑制することで SREBP2 と HMG-CoA レダクターゼ発現を低下させてコレステロール生合成を抑制し、同時に炎症性サイトカインやプロスタグランジン合成を抑制することが泌乳期乳腺で重要なシグナル伝達経路であることが明らかになった。これらの複合的な活性により母乳の代謝と免疫を厳密にコントロールして母乳の質と仔の正常な発達を担保していると考えられる。実際に、VLDLR 欠損母マウスに対するラパマイシン投与によって、仔マウスでの骨量増加や脱毛症が改善した。VLDLR 欠損かつミエロイド系細胞特異的 Raptor 欠損の母マウス由来の仔は VLDLR単独欠損母マウス由来の仔と同様の表現型を呈したが、VLDLR 欠損かつ脂肪細胞特異的 Raptor 欠損の母マウス由来の仔は骨量増加や脱毛症などが改善していたことから、脂肪細胞での mTORC1 シグナルの重要性が示唆された。以上から、著者らの研究は VLDLR と mTORC1 の泌乳と破骨細胞分化での機能を見出し、骨と代謝性疾患での重要なメカニズムと治療のための知見が明らかになった。

    T細胞レパトア

    胸腺プロテアソームの遺伝子多様性は CD8 T 細胞レパトアを変化させる

    原題:

    Human thymoproteasome variations influence CD8 T cell selection

    著者:

    Takeshi Nitta, Yuta Kochi, Ryunosuke Muro, Yoshihiko Tomofuji, Tadashi Okamura, Shigeo Murata, Harumi Suzuki, Takayuki Sumida, Kazuhiko Yamamoto & Hiroshi Takayanagi

    雑誌:

    Sci. Immnol., 2: eaan5165 (2017)

    POINT!

    胸腺プロテアソームは、胸腺上皮細胞における MHC クラス I 結合ペプチドの生成を介して、CD8 T 細胞の正の選択を制御している。著者らは、胸腺プロテアソーム構成因子 PSMB11 のヒト遺伝子に、機能に影響を与えるʼ damagingʼ variation が高頻度に存在することを見出した。PSMB11 の高頻度 damaging variation を導入したマウスでは、胸腺におけるCD8 T細胞の正の選択が低下し、CD8 T 細胞レパトアが変容していた。さらに、日本人に高頻度にみられる PSMB11 多型が、自己免疫疾患であるシェーグレン症候群と有意に関連することがわかった。以上の結果から、PSMB11 遺伝子には機能欠損型の variation が高頻度に存在し、CD8 T細胞レパトアと疾患感受性に影響を与えることが明らかになった。

    mTORC1

    成獣マウス内皮細胞の免疫担当造血幹細胞への変換

    原題:

    Conversion of adult endothelium to immunocompetent haematopoietic stem cells

    著者:

    Raphael Lis, Charles C. Karrasch, Michael G. Poulos, Balvir Kunar, David Redmond, Jose G. Barcia Duran, Chaitanya R. Badwe, William Schachterle, Michael Ginsberg, Jenny Xiang, Arash Rafii Tabrizi, Koji Shido, Zev Rosenwaks, Olivier Elemento, Nancy A. Speck, Jason M. Butler, Joseph M. Scandura & Shahin Rafii

    雑誌:

    Cell Rep 19, 2014‒2025 (2017)

    POINT!

    内皮細胞から造血幹細胞への移行がどのように調節されているのか詳細は不明である。著者らは Fosb1、Gfi1、Runx1 及び Spi1(以後、これらを FGRS とする)といった転写因子の一過的な発現と、血管性ニッチ由来のアンジオクライン因子が成獣マウスの内皮細胞から造血幹細胞への再プログラム化に重要であることを示す。転換の誘導期(0-8 日目)は成熟した内皮細胞中の FGRS の発現により開始され、細胞内在的な Runx1 の発現が起きる。特異的な発生の間(8-20 日目)の RUNX1陽性の FGRS- 導入された内皮細胞は造血幹細胞にコミットしており、こうして発生した造血幹細胞へ再プログラムしている成獣マウスの内皮細胞(rEC-HSCs)は、その後は FGRS 発現を必要としない。血管性ニッチは rEC-HSC の強力な自己複製と増殖期をドライブすることがわかり、rEC-HSCs は成獣マウス造血幹細胞と同様な転写産物と長期自己複製能を持ち合わせていた。内皮細胞からの造血幹細胞転換は、自己由来の造血幹細胞移植の可能性が期待される。

    HLA連鎖不均衡自己免疫疾患

    抗原特異的制御性T細胞によるHLA関連自己免疫疾患への優性阻害効果

    原題:

    Dominant protection from HLA-linked autoimmunity by antigen-specific regulatory T cells

    著者:

    Joshua D. Ooi, Jan Petersen, Yu H. Tan, Megan Huynh, Zoe J. Willett, Sri H. Ramarathinam, Peter J.Eggenhuizen, Khai L. Loh, Katherine A. Watson, Poh Y. Gan, Maliha A. Alikhan, Nadine L. Dudek, Andreas Handel, Billy G. Hudson, Lars Fugger, David A. Power, Stephen G. Holt, P. Toby Coates, Jon W. Gregersen, Anthony W. Purcell, Stephen R. Holdsworth, Nicole L. La Gruta, Hugh H. Reid, Jamie Rossjohn & A. Richard Kitching

    雑誌:

    Nature, doi:10.1038/nature22329 (2017)

    POINT!

    多くの自己免疫疾患で特定の HLA が疾患感受性に関係することは知られているが、メカニズムについては解明されていない。抗糸球体基底膜抗体を産生して腎機能を障害するグッドパスチャー症候群に関しては、HLA-DR15 の集団では発症リスクが上がるのに対して、HLA-DR1/DR15 の集団では優性阻害効果を示し発症リスクが上がらないと報告されている。筆者らはHLA トランスジェニックマウスを用いて HLA-DR15 と HLA-DR1 では疾患関連エピトープである IV 型コラーゲンα3 鎖 (α3135-145)の CD4T 細胞への提示部位が変化することを示した。その結果誘導される抗原特異的 CD4T 細胞は HLA-DR15 では炎症性サイトカインを分泌する通常型 T 細胞が優位で、HLA-DR1 では抑制性サイトカインを分泌する制御性 T 細胞が優位であった。さらにHLA-DR1/DR15 では HLA-DR1 によって誘導される制御性 T 細胞が疾患の発症を抑制することを示した。以上より、HLA 多型により誘導される自己抗原特異的制御性 T 細胞が優性阻害効果の原因であることを示した。

    制御性T細胞

    転写因子T-betを発現している制御性T細胞の安定性と機能

    原題:

    Stability and function of regulatory T cells expressing the transcription factor T-bet

    著者:

    Andrew G. Levine, Alejandra Medoza, Saskia Hemmers, Bruno Moltedo, Rachel e. niec, Michail Schizas, Beatrice e. Hoyos, ekaterina V. Putintseva, Ashutosh Chaudhry, Stanislav Dikiy, Sho Fujisawa, Dmitriy M. Chudakov, Piper M. Treuting & Alexander Y. Rudensky

    雑誌:

    Nature, 546: 421-425, (2017)

    POINT!

    制御性 T 細胞(Treg)は転写因子 FoxP3 によって特徴づけられる抗炎症性細胞系列を構成する細胞のひとつであるが、活性化 Treg の一部はエフェクター T 細胞が発現する転写因子 T-bet、GATA3、RORγt を発現しており、それが Tregの抑制機能を促進していることが報告されている。しかし、T-bet を発現している Treg(T-bet+Treg)は固有の機能を持った安定した分化状態にあるのか、あるいは一時的な活性化状態にあるだけなのか明らかになっていない。著者らはフェイトマッピング解析により、平常時あるいは感染によって誘導された Treg において T-bet の発現が徐々に安定化されることを明らかにした。また、T-bet+Treg の除去、機能喪失は重篤な Th1 型自己免疫反応を引き起こすことから、T-bet+Treg は Th1 細胞や CD8 T細胞を特異的に抑制し、Th1 型自己免疫反応を抑制していることを明らかにした。以上から、T-bet+Treg が基本的な免疫抑制機能を持っていること、また Treg の機能的不均一性が免疫寛容に重要であることが示された。

    転移性骨腫瘍

    内皮細胞から骨芽細胞への変換が前立腺癌の造骨性転移を引き起こす

    原題:

    Endothelial-to-Osteoblast Conversion Generates Osteoblastic Metastasis of Prostate Cancer

    著者:

    Song-Chang Lin, Yu-Chen Lee, Guoyu Yu, Chien-Jui Cheng, Xin Zhou, Khoi Chu, Monzur Murshed, Nhat-Tu Le, Laura Baseler, Jun-ichi Abe, Keigi Fujiwara, Benoit deCrombrugghe, Christopher J. Logothetis, Gary E. Gallick, Li-Yuan Yu-Lee, Sankar N. Maity & Sue-Hwa Lin

    雑誌:

    Dev. Cell 41: 467‒480 (2017)

    POINT!

    転移性骨腫瘍は、その転移様式において溶骨性転移と造骨性転移の二種類に分類される。 前立腺癌の骨転移は、しばしば造骨性の転移様式をとることが知られているが骨芽細胞性病変の発生源は不明である。ヒト前立腺癌 PCa-118bをマウスの皮下に移植した際、異所性骨化を伴い腫瘍が増殖することが認められたが、この異所性骨はレシピエント由来であることが示された。腫瘍細胞が周辺の細胞を骨芽細胞に分化転換させている可能が示唆された。また、異所性骨は骨芽細胞のマーカーであるオステオカルシンと同時に内皮細胞のマーカーである Tie2 を共発現していることがわかった。次に、in vitroで内皮細胞の cell line である 2H11 を使用して異所性骨を誘導する因子を特定する実験をおこなったところ、BMP4 が有力であることがわかった。非造骨性の前立腺癌細胞株である C4-2b に BMP4 を強発現させると異所性骨を誘導でき、ヒトの前立腺癌サンプルでも BMP4 を発現していることが確かめられた。内皮細胞特異的に Osterix を欠損させたマウスに、腫瘍細胞を移植したところ異所性骨化と腫瘍増殖が抑制された。Osterix と BMP4 は造骨性がんに重要であることが分かり、造骨性転移を抑制する治療標的となり得ることが示された。

    自己免疫性血管炎

    Semaphorin 4D は好中球の活性化を抑制し、好中球依存的な自己免疫性血管炎の病態形成に関与する

    原題:

    Semaphorin 4D inhibits neutrophil activation and is involved in the pathogenesis of neutrophil-mediated autoimmune vasculitis

    著者:

    Masayuki Nishide, Satoshi Nojima, Daisuke Ito, Hyota Takamatsu, Shohei Koyama, Sujin Kang, Tetsuya Kimura, Keiko Morimoto, Takashi Hosokawa, Yoshitomo Hayama, Yuhei Kinehara, Yasuhiro Kato, Takeshi Nakatani, Yoshimitsu Nakanishi, Takeshi Tsuda, Jeong Hoon Park, Toru Hirano, Yoshihito Shima, Masashi Narazaki, Eiichi Morii, and Atsushi Kumanogoh

    雑誌:

    Ann Rheum Dis, doi:10.1136/annrheumdis-2016-210706 (2017)

    POINT!

    異常な好中球の活性化は抗好中球細胞質抗体 (ANCA) 関連血管炎 (AAV) に関わっている。本研究では、これまで関節リウマチや多発性硬化症などとの関係性が報告されてきた semaphorin 4D (SEMA4D) の好中球活性化制御における機能や AAVへの関与を調べた。まず、著者らは AAV 患者血清中において可溶型 SEMA4D 量が上昇しており、疾患活動性スコアとの相関があることを見出した。一方、好中球表面の SEMA4D 発現は AAV 患者で低下しており、このことは膜上の SEMA4D が細胞外プロテアーゼである ADAM17 によって切断された結果であることが示された。さらに、野生型マウス由来の好中球と血管内皮細胞株のMS1を共培養すると、血管炎の病態に重要な好中球細胞外トラップ (NET) の形成が抑制されたが、Sema4D 欠損マウス由来好中球の場合では、この抑制が観察されなかった。また、血管内皮細胞で発現する Plexin-B2 は好中球上 SEMA4D と結合することでSEMA4Dの細胞内ドメインを介し、Rac1 の不活性化を誘導して ( 逆シグナル )、NET 形成に必須の ROS 産生が強く阻害することも見出した。以上の結果から、好中球表面上の SEMA4D は好中球活性化の負の制御因子として機能することが明らかにされた。AAV患者で観察された SEMA4D のタンパク質分解酵素による切断は、好中球による炎症応答と関連があることが示唆され、SEMA4DはAAVの病態を反映するバイオマーカーや、新たな治療標的となることが期待される。

    骨髄線維化

    Gli1陽性間葉系間質細胞は骨髄線維化の主要な推進因子であり、重要な治療標的細胞である

    原題:

    Gli1+ Mesenchymal Stromal Cells Are a Key Driver of Bone Marrow Fibrosis and an Important Cellular Therapeutic Target

    著者:

    Rebekka K. Schneider, Ann Mullally, Aurelien Dugourd, Fabian Peisker, Remco Hoogenboezem, Paulina M.H. Van Strien, Eric M. Bindels, Dirk Heck Guntram Busche, David Fleck, Gerhard Muller-Newen, Janewit Wongboonsin, Monica Ventura Ferreira, Victor G. Puelles, Julio Saez-Rodriguez, Benjamin L. Ebert, Benjamin D. Humphreys, and Rafael Kramann

    雑誌:

    Cell Stem Cell, 20, 1‒16 (2017)

    POINT!

    骨髄の線維化は様々な造血系・非造血系の状態で発症し、骨髄線維症の主な病理学的特徴である。細胞を標的とした効果的な治療法が必要であるが、線維化する細胞の起源は未解明のままであった。本研究で著者らは、2 つのマウスモデルにおいてレポーターマウスによる遺伝的運命追跡法 (fate-tracing) を行い、Gli1 陽性間葉系間質細胞 (MSC) が骨髄において線維化を起こす筋線維芽細胞の前駆細胞であり、骨内膜や血管周囲ニッチからリクルートされることを示した。Gli1-CreERT2 と iDTR を用いることでタモキシフェンと DT により Gli1 陽性細胞を欠失させると、骨髄の線維化が起こらず、骨髄機能不全がレスキューされることも見出した。また、これまでに Gli に対する抑制効果を有する低分子化合物として同定された Gli antagonist 61(GANT61)を用いると、Gli1 陽性細胞の増殖が抑制され、筋線維芽細胞の分化と線維化の重症化が緩和された。さらに、Cxcl4 欠損マウスの解析から、CXCL4 が Gli1 陽性間質細胞の遊走と筋線維芽細胞への分化を誘導することも見出した。実際に、骨髄増殖性腫瘍の骨髄線維症患者でも、Gli1 陽性細胞が増殖しており、Gli1 陽性細胞の頻度と線維化の重症度には有意な正の相関がみられた。加えて、骨髄増殖性腫瘍から採取した患者由来 MSC に対して GANT61 を用いることで、α-SMA や Gli1 発現が有意に低下したことから、Gli1 タンパク質や Gli1 陽性骨髄間質細胞は有望な治療標的である可能性が示唆された。

    骨リモデリング

    骨吸収と骨形成カップリングのリアルタイム解析:ヒトハバース管 BMU の解析から得られた新たな知見

    原題:

    Coupling of Bone Resorption and Formation in Real Time: New Knowledge Gained From Human Haversian BMUs

    著者:

    Nicolai Ernlund Lassen, Thomas Levin Andersen, Gro Grunnet Pløen, Kent Søe, Ellen Margrethe Hauge, Søren Harving, Gete Ester Toft Eschen, Jean-Marie Delaisse

    雑誌:

    J Bone Miner Res, doi: 10.1002/jbmr.3091 (2017)

    POINT!

    骨リモデリングは一般的に骨吸収から開始し、骨形成で終了することがよく知られている。しかしながら、その間に何が起きているかということや、吸収と形成がどうやってカップリングしているかについては解明されていない点が残されている。骨リモデリングは破骨細胞、骨芽細胞等からなる Basic Multicellular Unit(BMU) によって行われるが、破骨細胞による骨吸収に続いて観察される単核細胞は reversal cell ( 逆転相細胞 ) とよばれ、骨吸収面の少なくとも 80% を覆う細胞である。これらの細胞は骨 lining 細胞とは異なる形態を示し、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成をリンクしていると考えられていたが、最近の報告で逆転相細胞は骨芽前駆細胞と同一であることが証明された。本研究では、機能的・連続的に吸収の開始から形成が誘導されるまでのイベントを補足するために、ヒト長管骨で新たな管を形成するハバース管 BMU の縦断切片を作製し、特異的な細胞マーカーの位置に基づいて解析を行った。この解析から、ハバース管の先端での最初の骨吸収の後に、新たにリクルートされた逆転相細胞 ( すなわち骨芽前駆細胞 ) と、最初の骨吸収に関わった破骨細胞とは別の破骨細胞による時期が続いたことから、「逆転 - 吸収」相という混合状態の存在が明らかになった。連続切片の 3 次元再構築の解析によって最初の骨吸収は主にハバース管の伸長に関与し、その後に起こる骨吸収はハバース管の拡大に関わることが示された。特筆すべきことに、骨芽前駆細胞の密度は「逆転 / 吸収」面に沿って形成相側に向かい連続的に上昇し、骨形成開始時には少なくとも 39 細胞 /mm まで達し、この値は逆転 - 吸収面の長さとは無関係であった。これらの知見は骨形成が細胞密度のある閾値を超えたときのみに開始されることを示唆しており、逆転 - 吸収相の長さは骨芽前駆細胞がいかに素早くリクルートされて閾値に達するかに依存していると著者らは主張している。すなわち、骨芽前駆細胞がリクルートされる速度が遅くなるほど、より多くの骨が吸収されると考えられる。以上から、新たに見出した逆転 / 吸収相が骨芽前駆細胞の動員と、吸収から形成へのスイッチに重要な役割を担うというモデルが示唆された。

    IL-17 抗体

    インターロイキン 17 経路を標的とするモノクローナル抗体の有効性と安全性:無作為比較臨床試験のメタ解析

    原題:

    Efficacy and safety of monoclonal antibodies targeting interleukin-17 pathway for inflammatory arthritis:a meta-analysis of randomized controlled clinical trials

    著者:

    Min Wei and Dongmei Duan

    雑誌:

    Drug Des. Devel. Ther. 10: 2771-2777 (2016)

    POINT!

    IL-17 産生ヘルパー T 細胞は自己免疫や炎症性疾患に重要であり、炎症性関節炎組織で検出される。IL-17 の関節破壊に関与する裏付けは多数報告されているが、IL-17 経路阻害の臨床的な効果については検討が進められていた。今回、筆者らは関節リウマチ(RA)患者における IL-17 抗体の臨床的効果についてのメタ解析を行った。Pubmed に報告されている IL-17A 抗体、LY2439821(イキセキズマブ)及び AIN457(セクキヌマブ)また、IL-17 受容体(IL-17RA)抗体のブロダルマブの 3 つについて、任意抽出、プラセボ対象任意抽出、臨床試験を満たす 5 つの試験を解析対象とした。ACR20、ACR50、ACR70 と DAS28 について検討すると同時に、安全性と有害事象についても体系的に検討した。メタ解析の結果、IL-17 経路の阻害は RA 症状の改善に効果的であることが明らかとなった。特に、IL-17 阻害抗体は優位に ACR20 と ACR50 を改善し、DAS28 も減少させた。一方で、IL-17 阻害治療の副作用や非耐性はプラセボコントロール群より高かった。これまでの報告では ACR20 をエンドポイントに置くものが多かったので関節リウマチにおける IL-17 経路阻害効果を限定的に判断していた可能性があるかもしれない。ACR50、ACR70 並びに DAS28 も考慮に入れたこの解析結果は、炎症性関節炎治療における IL-17 経路抑制の臨床使用可能性の科学的根拠と考えられる。しかしながら、IL-17 受容体抗体を使用した乾癬患者に自殺願望の想起という副作用が報告されているため、今後も注視して行く必要があるだろう。

    腸内細菌叢

    内皮 TLR4 と腸内細菌叢は脳海綿状血管腫を促進する

    原題:

    Endothelial TLR4 and the microbiome drive cerebral cavernous malformations

    著者:

    Alan T. Tang, Jaesung P. Choi, Jonathan J. Kotzin, Yiqing Yang, Courtney C. Hong, Nicholas Hobson, Romuald Girard, Hussein A. Zeineddine, Rhonda Lightle, Thomas Moore, Ying Cao, Robert Shenkar, Mei Chen, Patricia Mericko, Jisheng Yang, Li Li, Ceylan Tanes, Dmytro Kobuley, Urmo Võsa, Kevin J. Whitehead, Dean Y. Li, Lude Franke, Blaine Hart, Markus Schwaninger, Jorge Henao-Mejia, Leslie Morrison, Helen Kim, Issam A. Awad, Xiangjian Zheng and Mark L. Kahn

    雑誌:

    Nature, doi:10.1038/nature22075 (2017)

    POINT!

    脳海綿状血管腫(CCM)は、脳卒中やてんかん発作の原因となるが、有効な治療法がまだ存在していなかった。著者らは、TLR4 と腸内細菌叢が CCM の形成を促進することを見出した。マウスでは、グラム陰性細菌の LPS によって、脳内皮細胞の TLR4 を活性化すると CCM 形成が促進され、TLR4 シグナルを抑制すると CCM 形成が抑制された。ヒトでは、TLR4 や CD14(TLR4 の共受容体)の発現を増加させる遺伝子多型が、CCM の罹患率と関連していた。無菌マウスでは CCM 形成が起こりにくく、一定期間の抗生剤を投与されたマウスでは CCM 形成が抑制された。これらの結果は、腸内細菌叢と自然免疫系が、脳血管疾患の病因に予想外の役割を持つことを示しており、CCM の新規治療法開発に繋がる可能性がある。

    ヘルパーT細胞

    病的に増殖した末梢のヘルパーT細胞サブセットが関節リウマチにおけるB細胞機能を促進する

    原題:

    Pathologically expanded peripheral T helper cell subset drives B cells in rheumatoid arthritis

    著者:

    Deepak A. Rao, Michael F. Gurish, Jennifer L. Marshall, Kamil Slowikowski, Chamith Y. Fonseka, Yanyan Liu, Laura T. Donlin, Lauren A. Henderson, Kevin Wei, Fumitaka Mizoguchi, Nikola C. Teslovich, Michael E. Weinblatt, Elena M. Massarotti, Jonathan S. Coblyn, Simon M. Helfgott, Yvonne C. Lee, Derrick J. Todd, Vivian P. Bykerk, Susan M. Goodman, Alessandra B. Pernis, Lionel B. Ivashkiv, Elizabeth W. Karlson, Peter A. Nigrovic, Andrew Filer, Christopher D. Buckley, James A. Lederer, Soumya Raychaudhuri and Michael B. Brenner

    雑誌:

    Nature, 542: 110-114 (2017)

    POINT!

    研究チームはリウマチ因子や抗シトルリン化ペプチド抗体陽性のseropositive患者の炎症滑膜から得たT細胞を、マスサイトメトリーで調べ、特徴的なヘルパー T 細胞を同定した。PD-1hiCXCR5-CD4+ という表現型をもつ T 細胞が関節滑膜局所だけでなく、血中にも見いだされた。この細胞は PD-1 陽性であるにもかかわらず、枯渇することはなく、IL-21 や CXCL-13、ICOSといった B細胞の抗体産生を促す因子を発現していた。また、濾胞 T 細胞のように BLIMP や MAF を発現していることもわかった。PD-1hiCXCR5+ 細胞と比較すると T-bet や CD44 の発現が高く、CCR7 や CD27 の発現は低かった。この PD-1hiCXCR5-CD4+細胞のB細胞刺激能を確かめると、IL-21 と SLAM5 を介してプラズマ細胞への分化を促していることがわかった。今回筆者ら炎症組織において、B 細胞の走化性を刺激し、さらに抗体産生を促進させるような新しいヘルパーT細胞の存在を明らかにした。非リンパ組織の炎症局所での自己抗体産生メカニズムの一端を明らかにするとともに、自己免疫疾患において PD-1が治療ターゲットになる可能性を提案したという点で興味深い。

    骨髄線維化

    レプチン受容体を発現する骨髄間質細胞は、原発性骨髄線維症における筋線維芽細胞である

    原題:

    Leptin-receptor-expressing bone marrow stromal cells are myofibroblasts in primary myelofibrosis

    著者:

    Matthew Decker, Leticia Martinez-Morentin, Guannan Wang, Yeojin Lee, Qingxue Liu, Juliana Leslie and Lei Ding

    雑誌:

    Nat Cell Biol doi:10.1038/ncb3530 (2017)

    POINT!

    原発性骨髄線維症(PMF)は骨髄線維化により、正常な造血が障害され、髄外造血を特徴とする血液疾患の一つである。骨髄の線維化を誘導するのは筋線維芽細胞だが、その起源は不明である。今回、著者らはトロンボポエチンを高発現させる系で PMF を誘導し、解析を行った。遺伝子フェイトマッピングを用い、レプチン受容体(Lepr)を発現する間質細胞が PMFにおける線維形成細胞、つまり筋線維芽細胞の起源であることを解明した。これらの細胞では造血幹細胞支持因子の発現が抑制されていると同時に、線維化・骨形成関連遺伝子の発現が促進されていることがわかった。また、Lepr+ 細胞で PDGFRαを欠損させると骨髄線維症が改善されたことや、逆に PDGFRαシグナル経路を活性化すると細胞増殖と髄外造血をきたすことから、PDGFRαシグナル経路が骨髄線維症に対する有効な治療標的である可能性が示唆された。

    造血

    肺は血小板生合成の場であり、造血前駆細胞の貯蔵庫である

    原題:

    The lung is a site of platelet biogenesis and a reservoir for haematopoietic progenitors

    著者:

    Emma Lefrançais, Guadalupe ortiz-Muñoz, Axelle Caudrillier, Beñat Mallavia, Fengchun Liu, David M. Sayah, Emily E. thornton, Mark B. headley, Tovo David, Shaun R. Coughlin, Matthew F. Krummel, Andrew D. Leavitt, Emmanuelle Passegué and Mark R. Looney

    雑誌:

    Nature, 544: 105-109 (2017)

    POINT!

    血小板は止血や血栓症、炎症応答に重要な役割を果たすが、成熟した血小板の産生プロセスは不明な点が多い。肺には巨核球が存在するといった過去の報告は、肺が血小板産生を担う臓器であることを示唆するが、これを示す直接的な証拠は得られていなかった。著者らは 2 光子顕微鏡によって肺微小循環を直接観察した結果、多数の巨核球が肺を循環し、血小板を放出していることを発見した。驚くことに、総血小板生成量の約 50%は肺で賄われており、一時間当たり約 1000 万個もの血小板を生み出している。また、肺の血管外腔にも造血前駆細胞や未熟・成熟巨核球が存在し、これら前駆細胞は血中血小板の減少や骨髄内の造血幹細胞の減少を十分に相補することことができる。さらに、複数の造血系細胞系譜に寄与することもわかった。以上の結果は、肺が血小板産生の主要な場であり、かなりの造血能を持つ臓器であることを示している。

    ALDH2

    ALDH2 遺伝子の一塩基遺伝子多型である rs671 は大腿骨近位部骨折発症に関連する

    原題:

    A missense single nucleotide polymorphism in the ALDH2 gene, rs671, is associated with hip fracture

    著者:

    Kenichiro Takeshima, Yuji Nishiwaki, Yasunori Suda, Yasuo Niki, Yuiko Sato, Tami Kobayashi, Kana Miyamoto, Hisaya Uchida, Wataru Inokuchi, Takashi Tsuji, Atsushi Funayama, Masaya Nakamura, Morio Matsumoto, Yoshiaki Toyama and Takeshi Miyamoto

    雑誌:

    Sci. Rep., 7: 428 (2017)

    POINT!

    大腿骨近位部骨折は骨粗鬆症による骨折の中で最も重篤である。家族歴が骨折のリスクファクターとして知られるが、遺伝的要因については未だに解明されていない。アルコール代謝過程に必要な 2 型アルデヒド脱水素酵素 (ALDH2) の一塩基遺伝子多型 rs671 は機能不全型で東アジアの人種に多いことが知られている。著者らは大腿骨近位部骨折患者 92 例と正常対照群 48 例の遺伝子多型をダイレクトシークエンス法で解析し、rs671 が有意に大腿骨近位部骨折発症と関連することを示した。さらに著者らはアセトアルデヒドによって骨芽細胞の機能障害が引き起こされることと、その障害は抗酸化物質である Trolox C を投与することで回避されることを in vitro の系で示した。以上の結果から rs671 保因者は大腿骨近位部骨折のリスクが高いこと、抗酸化物質投与を行なうことで骨折リスクを減らせる可能性があることが示唆された。

    制御性T細胞

    Fc 最適化された抗 CD25 抗体は腫瘍浸潤性制御性 T 細胞を減らし、定着したがんを根絶するための PD-1 阻害と協同する

    原題:

    Fc-Optimized Anti-CD25 Depletes Tumor-Infiltrating Regulatory T Cells and Synergizes with PD-1 Blockade to Eradicate Established Tumors

    著者:

    Frederick Arce Vargas, Andrew J.S. Furness, Isabelle Solomon, Kroopa Joshi, Leila Mekkaoui, Marta H. Lesko, Enrique Miranda Rota, Rony Dahan, Andrew Georgiou, Anna Sledzinska, Assma Ben Aissa, Dafne Franz, Mariana Werner Sunderland, Yien Ning Sophia Wong, Jake Y. Henry, Tim Oʼ Brien, David Nicol, Ben Challacombe, Stephen A. Beers, Melanoma TRACERx Consortium, Renal TRACERx Consortium, Lung TRACERx Consortium, Samra Turajlic, Martin Gore, James Larkin, Charles Swanton, Kerry A. Chester, Martin Pule, Jeffrey V. Ravetch, Teresa Marafioti, Karl S. Peggs and Sergio A. Quezada

    雑誌:

    Immunity, 46: 1-10 (2017)

    POINT!

    制御性 T 細胞は免疫応答の抑制的制御を司る T 細胞であり、過剰な免疫応答を抑制するための負の制御機構を担っている。がんでは腫瘍組織に浸潤している制御性 T 細胞が多いほど免疫療法の効果が抑制され、予後不良因子であることが報告されている。CD25 は制御性 T 細胞に高いレベルで発現しているが、これまでの報告によると、ガン治療における CD25 抗体の効果は限定的であった。著者らが抗 CD25 抗体(クローン PC-61, ラット IgG1)投与による制御性 T 細胞の減少を検討したところ、制御性 T 細胞数減少は末梢・リンパ節で認められたものの、腫瘍組織では観察されなかった。抗体依存的な細胞障害には、標的細胞の表面抗原に結合した抗体の Fc 部位がエフェクター細胞の FcγR に結合することが重要である。FcγR は活性化型受容体 (FcγRⅠ、Ⅲ、Ⅳ) と抑制型受容体 (Ⅱb) に二分されるが、腫瘍組織においては抑制型の Fcγ受容体(FcγRIIb)の発現が上昇しており、CD25 抗体による細胞障害が阻害されていた。そこで、PC-61 の Fc 領域をマウス抗体依存的な細胞障害を誘導しやすい IgG2a の Fc 領域に置き換えた抗体を検討したところ、腫瘍浸潤性制御性 T 細胞の減少を誘導できた。Fc 領域について最適化された抗 CD25抗体と、エフェクター T 細胞の作用を抑制する PD-1/PD-L1 経路を阻害できる抗 PD-1 抗体と共に投与すると腫瘍の排除がさらに増強することがわかり、併用療法も有効であることが示された。

    腸管IgA産生機構

    IgA産生と腸内細菌叢の多様性を制御する間葉系細胞の同定

    原題:

    Identification of subepithelial mesenchymal cells that induce IgA and diversify gut microbiota

    著者:

    Kazuki Nagashima, Shinichiro Sawa, Takeshi Nitta, Masanori Tsutsumi, Tadashi Okamura, Josef M Penninger, Tomoki Nakashima and Hiroshi Takayanagi

    雑誌:

    Nat. Immunol., doi: 10.1038/ni.3732. [Epub ahead of print]

    POINT!

    哺乳類の腸管に生着する腸内細菌叢は腸管免疫系と平衡状態を保っており、免疫グロブリン A (IgA) は腸内細菌叢の制御において重要な役割を果たす。IgA の誘導は主に腸管リンパ組織で起きるが、従来の研究は血球系に焦点を当てたものが多く、場を形成する間葉系細胞が IgA 産生に与える影響は不明な点が多かった。この研究では、腸管リンパ組織の上皮に接する間葉系細胞が RANKL を発現し、上皮の M 細胞分化とケモカイン CCL20 発現を制御することで、IgA 産生と腸内細菌叢の多様性維持に寄与することを見出した。この結果により M 細胞誘導細胞を標的とした炎症性腸疾患の治療やワクチン開発に繋がる可能性が示された。

    骨転移

    MAOA 依存的な Shh-IL6-RANKL シグナルネットワークの活性化はがん- 間質細胞間相互作用を介して前立腺がんの転移を促進する

    原題:

    MAOA-Dependent Activation of Shh-IL6-RANKL Signaling Network Promotes Prostate Cancer Metastasis by Engaging Tumor-Stromal Cell Interactions

    著者:

    Jason Boyang Wu, Lijuan Yin, Changhong Shi, Qinlong Li, Peng Duan, Jen-Ming Huang, Chunyan Liu,Fubo Wang, Michael Lewis, Yang Wang, Tzu-Ping Lin, Chin-Chen Pan, Edwin M. Posadas, Haiyen E. Zhau,and Leland W.K. Chung

    雑誌:

    Cancer Cell, 31, 368‒382 (2017)

    POINT!

    前立腺がんの転移は QOL や生存率に影響する、臨床的に重要な問題であるにもかかわらず、そのメカニズムには不明な点が多く残されている。これまでにモノアミンオキシダーゼ A(MAOA) 発現増加と前立腺がんの進行度や転帰不良との関連性が報告されてきた。MAOA 発現と前立腺がんの転移リスクは正の相関を示し、MAOA を強制発現したヒト前立腺がん細胞株 PC-3 をマウスに移植すると、コントロールと比較して高い骨転移能を示し、MAOA をノックダウンすると逆の効果が観察された。著者らはがん - ストローマ相互作用に関わる分子の qPCR アレイ解析などの結果、MAOA が転写因子 Twist1 を介した Shh の発現上昇を誘導することを見出した。さらに、Shh シグナルにより骨芽細胞からの IL-6 産生を刺激することで、骨微小環境におけるがん細胞の増殖を促進し、さらに、骨芽細胞からの RANKL と IL-6 産生を促進することで破骨細胞分化を促進し、骨へのコロニー形成を誘導することが明らかになった。マウス前立腺がん骨転移モデルに対するMAOA 阻害剤クロルギリンの投与によって、がん微小環境での Shh-IL-6-RANKL シグナルネットワークが阻害され、マウスの生存率が上昇し、転移が抑制されることが証明された。これらの発見は前立腺がん転移治療において MAOA やその関連分子を標的とした治療方法の可能性が示された。

    ミエロイド系細胞分化

    ミエロイド系前駆細胞クラスター形成は緊急状態や白血病性のミエロイド系細胞分化を促進する

    原題:

    Myeloid progenitor cluster formation drives emergency and leukaemic myelopoiesis

    著者:

    Aurélie Hérault, Mikhail Binnewies, Stephanie Leong, Fernando J. Calero-Nieto , Si Yi Zhang, Yoon-A Kang, Xiaonan Wang, Eric M. Pietras, S. Haihua Chu, Keegan Barry-Holson, Scott Armstrong, Berthold Göttgens and Emmanuelle Passegué

    雑誌:

    Nature, 544, 53‒58 (2017)

    POINT!

    骨髄におけるミエロイド系細胞分化の空間的構成は未だに不明である。本研究で、著者らは 5-FU や抗 Ly6G抗体、G-CSF 投与などにおける緊急状態や骨髄増殖性腫瘍モデルマウスでのミエロイド系細胞分化における顆粒球 / マクロファージ前駆細胞 (GMP) の挙動を追跡した。定常状態では個々の GMP が骨髄全体に散在している一方、再生時には、拡大したパッチ状の GMP が境界の明瞭な GMP クラスターを形成し、それぞれのクラスターは個々の HSC 由来でクローナルであることがわかった。主要な複数の遺伝子発現の主成分分析と次元圧縮による解析によって、5-FU 投与後の時期で遺伝子発現が完全に逆転し、パッチ状 GMP での細胞周期関連遺伝子上昇と分化関連遺伝子発現低下、およびその後形成されるGMP クラスターでの逆の遺伝子発現の傾向が明らかにされた。さらに、GMP クラスター形成を制御する誘導性自己複製前駆細胞ネットワークの中心的な役割を担う転写因子として Irf8 とβ- カテニンを同定し、β- カテニンは直接的に Irf8 の発現を直接的に抑制することが示された。さらなる解析から、緊急状態のミエロイド系細胞分化を開始する SCF や IL-1βの早期における産生、Irf8 とβ- カテニンによる前駆細胞自己複製ネットワークによって誘導されるパッチ状 GMP 形成時に決定的な G-CSF の放出、HSC を静止状態に戻す再生性応答の時間を決定する TGF-β1 や CXCL4 の後期における GMP クラスター周囲の巨核球からの産生も明らかにされた。白血病状態では、白血病性骨髄ニッチによって産生された IL-1 などの活性化サイトカインの高発現の結果、自己複製ネットワークが持続的に活性化し、巨核球の欠損や TGF-β1、CXCL4 などの静止状態増強に必要不可欠なサイトカインが不足することにより、GMP クラスターが常に産生されている。これらの結果から、これまで認識されていなかったGMP の動的挙動が in situ で明らかになり、緊急状態ではミエロイド系細胞分化を調節し、白血病状態では異常をきたしている可能性が示唆された。

    骨髄脂肪細胞

    肥満や加齢による脂肪細胞の骨髄での蓄積は造血と骨再生を障害する

    原題:

    Adipocyte Accumulation in the Bone Marrow during Obesity and Aging Impairs Stem Cell-Based Hematopoietic and Bone Regeneration

    著者:

    Thomas H. Ambrosi, Antonio Scialdone, Antonia Graja, Sabrina Gohlke, Anne-Marie Jank, Carla Bocian, Lena Woelk, Hua Fan, Darren W. Logan, Annette Schurmann, Luis R. Saraiva, and Tim J. Schulz

    雑誌:

    Cell Stem Cell, 20, 1‒14 (2017)

    POINT!

    加齢や肥満などによって骨髄腔における脂肪細胞蓄積が誘導され、骨形成や造血が障害されると考えられているがその因果関係は完全には明らかにされていなかった。本研究で、著者らは骨髄における骨形成・脂肪形成に関わる、少なくとも 4 つの異なる細胞集団が骨の異なる部位に存在することを見出した。すなわち、CD45‒CD31‒Sca1+CD24+ の幹細胞様の特性をもつ血管周囲のポピュレーション、CD45‒CD31‒Sca1‒PDGFRα+ の骨軟骨分化能をもつ前駆細胞ポピュレーション、CD45‒CD31‒Sca1+CD24‒の脂肪分化能をもつ前駆細胞ポピュレーション、より成熟した脂肪細胞前駆細胞の CD45‒CD31‒Sca1‒Zfp423+ である。CD45‒CD31‒Sca1+CD24+ の幹細胞様ポピュレーションは Prx1-Cre を発現する間葉系細胞で、他の 2 つの前駆細胞ポピュレーションへの分化能を有する。さらに、加齢が骨形成性の細胞系列を障害する一方、高脂肪食を与えると脂肪細胞系列の増殖が活性化され、この効果は特に老齢動物で有意に促進されていた。加えて、これまでに骨髄脂肪細胞が造血に負の影響を及ぼすことが報告されていることから、造血系再構築に対する影響を調べたところ、脂肪形成能を有する細胞の骨内への移植後、ドナー由来造血系前駆細胞の再構築能は有意に減少した一方、多分化能を有するCD45‒CD31‒Sca1+CD24+ のポピュレーションの移植により、ドナー由来造血系前駆細胞の再構築能が有意に上昇した。以上から、この多分化能を有するポピュレーションが脂肪形成性刺激により脂肪細胞系列に分化する能力を有し、同時に造血再生を支持する一方、脂肪形成性細胞は造血系再構築能を抑制することが確認された。最後に、著者らは RNA-seq 解析により 4 つのポピュレーションの細胞特性を比較し、脂肪形成性細胞で最も高く発現する液性因子 Dpp4 に着目した。DPP4 阻害剤シタグリプチン投与によって、脂肪形成性細胞移植による骨折治癒抑制効果が消失し、さらに骨形成性前駆細胞移植後の骨折治癒を促進することが明らかにされた。実際、Dpp4 欠損脂肪形成性前駆細胞を移植しても、骨折治癒に対する抑制効果が観察されなかった。以上から、骨に存在する脂肪形成性細胞系列の分子的特性が明らかになり、加齢依存的な骨や造血再生の機能異常に関わることが示唆された。

    骨細胞分化

    miR-23a クラスターは骨芽細胞での TGF-βシグナルを制御することで骨細胞分化を促進する

    原題:

    MicroRNA miR-23a cluster promotes osteocyte differentiation by regulating TGF-β signaling in osteoblasts

    著者:

    Huan-Chang Zeng, Yangjin Bae, Brian C. Dawson, Yuqing Chen, Terry Bertin, Elda Munivez, Philippe M.Campeau, Jianning Tao, Rui Chen and Brendan H. Lee

    雑誌:

    Nat Commun, 8:15000 (2017)

    POINT!

    骨芽細胞分化の転写制御に関してはよく研究されてきたが、成熟骨芽細胞から骨細胞への分化を制御する因子はほとんどわかっていない。著者らは miRNA に着目してマウス頭蓋骨の RNA-Seq 解析を行い、miR-23a クラスターが骨で高く発現することを見出した。このクラスターは miR-23a と miR-27a、miR-24-2 で構成され、1 本の前駆 miRNA として転写された後、3 つの成熟 miRNA に切断される。Colla1 2.3kb プロモーターによる骨芽細胞特異的な miR-23a クラスターの Tg マウスでは、骨芽細胞数の減少と骨細胞の増加を伴う低骨量を示した。一方、miR-23a や miR-27a、miR-24-2 それぞれに対するデコイを骨芽細胞特異的に強制発現させた機能喪失型の Tg マウスをそれぞれ作製したところ、miR-23a とmiR-27a のデコイ Tg マウスにおいて骨細胞数の減少が観察された。さらに、RNA-seq 解析から TGF-βシグナル伝達に関わる分子の発現変化が明らかになった。TGF-β経路の負の制御因子である Prdm16 の発現は miR-23a によって直接的に抑制され、同時に Prdm16 自身は Sost 発現を抑制した。また、miR-23a クラスターの既知のターゲットとして Satb2 も同定されており、その影響も考えられた。実際に、抗 TGF-β抗体投与によって miR-23a クラスター Tg マウスの表現型がレスキューされた。以上より、miR-23a クラスターは Prdm16 を標的とし、それにより TGF-βシグナル伝達経路を調節することで骨細胞分化を制御することが明らかになった。

    食欲

    骨由来 Lipocalin2 による MC4R 依存的食欲抑制

    原題:

    MC4R-dependent suppression of appetite by bone-derived lipocalin 2

    著者:

    Ioanna Mosialou, Steven Shikhel, Jian-Min Liu, Antonio Maurizi, Na Luo, Zhenyan He, Yiru Huang, Haihong Zong, Richard A. Friedman, Jonathan Barasch, Patricia Lanzano, Liyong Deng, Rudolph L. Leibel, Mishaela Rubin, Thomas Nicholas, Wendy Chung, Lori M. Zeltser, Kevin W. Williams, Jeffrey E. Pessin and Stavroula Kousteni

    雑誌:

    Nature, 543, 385‒390 (2017)

    POINT!

    骨が FGF23 やオステオカルシンを産生する内分泌器官であることが近年明らかにされている。著者らが以前報告した骨芽細胞特異的 Foxo1 欠損マウスでのエネルギー代謝改善における、オステオカルシン以外の原因を調べるため、頭蓋冠由来骨芽細胞のマイクロアレイ解析が行われた。著者らは Foxo1 欠損細胞で発現上昇した分泌型タンパク質のうち、肥満との関連性が報告されている Lipocalin2 (LCN2) に着目した。LCN2は主に脂肪組織が分泌すると考えられていたが、著者らの解析から骨における LCN2 の発現が最も高く、白色脂肪組織よりも 10 倍程度高い発現を示すことが明らかになった。さらに、脂肪細胞特異的 LCN2 欠損マウスを作製しても特に影響はみられなかったが、骨芽細胞特異的 LCN2 欠損マウスでは食欲が増進し、耐糖能やインスリン感受性が悪化した。骨芽細胞由来の LCN2 の血中量は絶食後の再摂食 1~3 時間後に上昇し、またそれに同調して食餌量は食餌 1~3 時間後に抑制されることも示された。次に食欲に影響を及ぼす視床下部でのシグナル伝達分子のうち、Melanocortin4 受容体 (MC4R) シグナルの下流分子だけが骨芽細胞特異的 LCN2 欠損マウスや LCN2 を投与した野生型マウスで変化していたこと、生理的濃度のビオチン化 LCN2 を LCN2 欠損マウス脳室内に投与すると、MC4R を発現する室傍核と腹内側核の神経細胞に結合したこと等の様々な結果から、LCN2が血液脳関門を通過し、視床下部の MC4R と結合して MC4R 依存的な食欲抑制経路を活性化することが証明された。また、LCN2 はMC1R や MC3R 受容体にも結合した。以上の結果から、LCN2 が MC4R 依存的に食欲を抑制する骨由来ホルモンであり、食欲制御が骨の内分泌機能の 1 つであることが証明され、LCN2 が肥満やインスリン抵抗性を制御するための新たなツールとなることが期待される。また、これまでに LCN2 欠損マウスでは食欲に変化がみられないという報告が 2 報存在することから、ヒトでの解析を含めたさらなる詳細な検討が必要であると考えられる。

    骨転移

    ROR1‒HER3¬‒lncRNA シグナルは Hippo‒YAP 経路を制御して骨転移を促進する

    原題:

    A ROR1‒HER3‒lncRNA signalling axis modulates the Hippo‒YAP pathway to regulate bone metastasis

    著者:

    Chunlai Li, Shouyu Wang, Zhen Xing, Aifu Lin, Ke Liang, Jian Song, Qingsong Hu, Jun Yao, Zhongyuan Chen, Peter K. Park, David H. Hawke, Jianwei Zhou, Yan Zhou, Shuxing Zhang, Han Liang, Mien-Chie Hung, Gary E. Gallick, Leng Han, Chunru Lin and Liuqing Yang

    雑誌:

    Nat Cell Biol, 19, 106‒119 (2017)

    POINT!

    ROR1 は多様ながん細胞で高く発現することが報告されている。著者らはデータベースから、ROR1発現がトリプルネガティブ乳がん細胞 (TNBC) で有意に高く発現し、患者の予後不良と相関することを見出した。さらに、CRISPR-Cas9 法によって作製した ROR1 欠損細胞を用いると、がん細胞誘導性の破骨細胞分化や骨転移が抑制された。質量分析法により ROR1 と相互作用する分子として HER3 を同定することに成功し、リガンドである NRG1 に応答して ROR1 と HER3 がヘテロダイマーを形成することで HER3 の 1307 番目のチロシンリン酸化が誘導されることが証明された。著者らはさらに ROR1‒HER3 のがん細胞における詳細なシグナル伝達機構を調べた。ROR1 欠損細胞における遺伝子発現を調べたところ、YAP1 標的遺伝子の大多数の発現が抑制されていたことから、Hippo‒YAP 経路の活性化が ROR1‒HER3 ヘテロダイマーの重要な下流シグナルであることが示唆された。著者らは質量分析法を駆使し、HER3 のチロシン 1307 リン酸化が BCAR3 によって認識され、さらにアダプタータンパク質の LLGL2 がリクルートされることで ROR1 によってリン酸化されることや、ROR1 とLLGL2 に相互作用する分子として 59 番目のリジンがジメチル化された MST1 と RNA 結合性メチルトランスフェラーゼである NSUN6 が同定された。さらに、RNAi ライブラリを用いたスクリーニングによって長鎖ノンコーディング RNA である MAYA がリン酸化 LLGL2 と NSUN6 の両者に結合して巨大な RNA タンパク質複合体形成を担うことが明らかにされた。すなわち、NRG1 は ROR1 と HER3 のヘテロダイマー化を促進してチロシン 1307のリン酸化を誘導し、それにより BCAR3-LLGL2-MAYA-NSUN6 複合体が形成され、MST1 を 59 番目のリジンジメチル化によって不活性化し、そのターゲットである LAT1/2 も阻害され、YAP が安定化することで CTGF などの YAP 標的遺伝子発現が活性化され、破骨細胞分化や骨転移が促進されることが証明された。さらに、HER3チロシン 1307 のリン酸化状態、ROR1 発現、HER3 のリン酸化チロシン 1307、MAYA 発現が臨床転帰不良などと相関することから、がん細胞特異的な ROR1‒HER3 と Hippo‒YAP 経路の連携機構が証明され、骨転移などに対する重要な治療標的であることが示唆された。

    血管内皮細胞

    細胞‒細胞外マトリクス間のシグナルは発生期の骨形成において骨の血管内皮細胞分化を決定する

    原題:

    Cell‒matrix signals specify bone endothelial cells during developmental osteogenesis

    著者:

    Urs H. Langen, Mara E. Pitulescu, Jung Mo Kim, Rocio Enriquez-Gasca, Kishor K. Sivaraj, Anjali P.Kusumbe, Amit Singh, Jacopo Di Russo, M. Gabriele Bixel, Bin Zhou, Lydia Sorokin, Juan M. Vaquerizas and Ralf H. Adams

    雑誌:

    Nat Cell Biol 19, 189‒201 (2017)

    POINT!

    骨の血管は骨形成を制御し、局所ニッチ環境を形成することで造血を支持する。著者らは最近、CD31hi Emcnhi の H 型毛細血管が、成体マウスにおいて造血と骨形成を同調して制御することを報告したが、発生期の骨における血管内皮細胞ポピュレーションについては不明であった。本報告で、著者らは胎生期と生後早期の長管骨では CD31hi Emcnhi のポピュレーションが 2 つに分かれており、H 型以外にも E 型と命名した特殊な血管内皮細胞サブタイプが含まれることを見出した。さらに、これらの E 型血管は H 型よりも BMP 発現を強く発現することなどによりOsterix+ 細胞と近接して骨芽細胞系列細胞を支持することや、E 型血管内皮細胞特異的 Cre 発現マウスとして AplnCreERマウスを用いた解析で E 型から他の血管内皮細胞ポピュレーションが分化することが示唆された。さらに、それぞれのポピュレーションにおける RNA-seq データのパスウェイ解析から、L 型血管内皮細胞と比較して E 型や H 型では細胞外マトリクス、基底膜、細胞接着因子などに関わる遺伝子が高く発現しており、骨内血管内皮細胞の分化と機能的特性を発揮するために、細胞外マトリクスとの相互作用によるシグナル伝達が必要であることが示唆された。実際に、血管内皮細胞特異的β1 インテグリン欠損マウスでは、血管内皮細胞分化 - や生後の骨成長に異常をきたし、この表現型は血管内皮細胞特異的ラミニンα5 欠損マウスで一部再現されることも示された。これらの結果から、ヒトの先天性疾患や他の疾患での骨マトリクスの変化が血管系に変化を及ぼす影響も考慮されるべきであると考えられる。

    動脈硬化

    マウスにおいて TET2 欠損に関連したクローン性造血は動脈硬化発症を促進する

    原題:

    Clonal hematopoiesis associated with TET2 deficiency accelerates atherosclerosis development in mice

    著者:

    José J. Fuster, Susan MacLauchlan, María A. Zuriaga, Maya N. Polackal, Allison C. Ostriker, Raja Chakraborty, Chia-Ling Wu, Soichi Sano, Sujatha Muralidharan, Cristina Rius, Jacqueline Vuong, Sophia Jacob, Varsha Muralidhar, Avril A. B. Robertson, Matthew A. Cooper, Vicente Andrés, Karen K. Hirschi, Kathleen A. Martin and Kenneth Walsh

    雑誌:

    Science, 355: 842-847 (2017)

    POINT!

    近年の研究により、ヒトにおける高齢者の血球系細胞にエピジェネティック調節に関連する遺伝子の突然変異を有することが示されている。増殖系組織におけるこれら加齢と関連した体細胞突然変異は、変異した細胞のクローン性増殖をもたらすことで、白血病や心血管疾患のリスクを上昇させると考えられている。著者らは、これらエピジェネティック調節関連酵素の一つ、Ten-eleven translocation 2 (Tet2) がアテローム性動脈硬化発症に影響するかを確かめた。本発明者らは、アテローム性動脈硬化症になりやすい低密度リポタンパク質受容体欠損マウスにおける Tet2 突然変異細胞の影響を研究した。Tet2 欠損骨髄細胞を移植したマウスにおいて、アテローム性動脈硬化症が悪化することを見出した。TET2 欠損マクロファージは、NLRP3 インフラマソームを介した IL-1β分泌が増加していた。これらの結果は、加齢により増加すると考えられている血液細胞中の体細胞性 TET2 変異が、アテローム性動脈硬化症の原因となるという仮説を裏付けるものである。

    造血幹細胞ニッチ

    血管周囲造血幹細胞ニッチの異なるサイトカインの寄与

    原題:

    Differential cytokine contributions of perivascular haematopoietic stem cell niches

    著者:

    Noboru Asada, Yuya Kunisaki, Halley Pierce, Zichen Wang, Nicolas F. Fernandez, Alexander Birbrair, Avi Maʼ ayan and Paul S. Frenette

    雑誌:

    Nat. Cell. Biol., 19: 214‒223 (2017)

    POINT!

    骨髄の細動脈および類洞周囲は、神経 / グリア抗原 2(NG2)およびレプチン受容体(LepR)を発現するストローマ細胞を伴い、造血幹細胞の静止および増殖を調節する特殊なニッチを構成する。しかし、ニッチ細胞が HSC 機能を調節する方法は未知のままである。筆者達は、HSC 機能を調節するサイトカインの作用は細胞産生源に依存することを示した。nestin-GFP によりラベルされた血管周囲細胞からの chemokine (C-X-C motif) ligand 12(CXCL12) または Stem cell factor(Scf)の欠損は、骨髄造血幹細胞を枯渇させた。細動脈の NG2+ 細胞からの選択的Cxcl12 欠失は HSC 減少を引き起こしたが、類洞 LepR+ 細胞から産生される CXCL12 を欠損させても HSC を枯渇させなかった。一方、LepR+ 細胞中の Scf の欠損は BM HSC 数の減少をもたらしたものの、NG2+ 細胞からの Scf 欠損はBM HSC に影響を与えなかった。これらの結果は、今まで分離することが複雑であった別個の血管ニッチにおける脈管周囲細胞由来のそれぞれのサイトカインの HSC 維持に対する寄与を示した。

    オステオポンチン

    オステオポンチンは造血幹細胞の加齢関連性表現型を減弱させる

    原題:

    Osteopontin attenuates aging-associated phenotypes of hematopoietic stem cells

    著者:

    Novella Guidi, Mehmet Sacma, Ludger Ständker, Karin Soller, Gina Marka, Karina Eiwen, Johannes M. Weiss, Frank Kirchhoff, Tanja Weil, Jose A. Cancelas, Maria Carolina Florian and Hartmut Geiger

    雑誌:

    EMBO J. pii: e201694969. doi: 10.15252/embj.201694969 (2017)

    POINT!

    老化は造血幹細胞(HSC)のミエロイド系統への偏りや、再構成能の低下を含む機能および構造の変化を受ける。HSC の老化は細胞内因性のメカニズムの寄与が知られているが、加齢に伴う骨髄ニッチの変化が HSC 老化を調節するかどうかはほとんど知られていない。著者らは老齢マウスの骨髄におけるオステオポンチン(OPN)の発現が減少することを見出した。若年造血幹細胞を OPN ノックアウトニッチへ移入すると、生着の低下、長期 HSC頻度の増加、および幹細胞極性が減弱した。一方、老化した HSC をトロンビン切断 OPN に曝すと、生着の増加、HSC 頻度の減少、幹細胞の極性の増加、および末梢血におけるリンパ球および骨髄細胞のバランスの回復が観察された。これらの結果は、HSC 老化に対する間質由来 OPN の減少に対する重要な役割を示唆し、トロンビン切断 OPN が老化に関連する HSC 表現型の新しいニッチファクターであることを示唆する。

    ビタミン D

    ビタミン D 誘導性の骨量増加には骨芽細胞系列での VDR による骨吸収が重要である

    原題:

    VDR in Osteoblast-lineage Cells Primarily Mediates Vitamin D Treatment- Induced Increase in Bone Mass by Suppressing Bone Resorption

    著者:

    Yuko Nakamichi, Nobuyuki Udagawa, Kanji Horibe, Toshihide Mizoguchi, Yoko Yamamoto, Takashi Nakamura, Akihiro Hosoya, Shigeaki Kato, Tatsuo Suda and Naoyuki Takahashi

    雑誌:

    J Bone Miner Res, doi: 10.1002/jbmr.3096. [Epub ahead of print]

    POINT!

    エルデカルシトール (ELD) 投与による骨量増加過程では、骨形成促進よりも骨吸収抑制に対する影響が強いと考えられている。しかしながら、ビタミン D 誘導性の骨吸収抑制に重要な VDR 発現細胞は不明であった。本報告で、著者らは新たに作製した Vdr flox マウスと Sp7-Cre、もしくは Ctsk-Cre を交配し、骨芽細胞系列特異的コンディショナル欠損 (cKO) マウスと破骨細胞特異的 cKO マウスを作製し、4 週間 ELD 投与した後の骨量に対する影響を調べた。いずれのマウスも未処理状態では骨量に変化がみられなかったが、ELD投与後、破骨細胞特異的 cKO マウスはコントロールと同程度の骨量増加が確認された一方、骨芽細胞系列特異的 cKO マウスでは骨量上昇が観察されなかった。これらの結果は、ビタミン D によって誘導される骨量増加に骨芽細胞系列での VDR を介したシグナル伝達が重要であることを示唆している。

    ジーントラップ法

    可変型遺伝子トラップ法による変異マウスデータベースを用いた新規骨代謝関連遺伝子同定のための効率的なスクリーニングシステムの構築

    原題:

    Development of an effcient screening system to identify novel bone metabolism- related genes using the exchangeable gene trap mutagenesis mouse models

    著者:

    Syuji Kurogi, Tomohisa Sekimoto, Taro Funamoto, Tomomi Ota, Shihoko Nakamura, Takuya Nagai, Mai Nakahara, Kumiko Yoshinobu, Kimi Araki, Masatake Araki and Etsuo Chosa

    雑誌:

    Sci Rep, 7:40692.

    POINT!

    著者らは、新規遺伝子の単離同定と個体レベルでの機能解析が可能な可変型遺伝子トラップ法による熊本大学 EGTC データベースに登録されている系統を用い、骨代謝に関わる新規遺伝子同定のための効率的なスクリーニングシステム構築を行った。データベース上の 1278 クローンのうち、1 次スクリーニングとして EST 発現プロファイル、トラップベクターに含まれるβ-geo を利用した X-gal 染色、過去の関連文献、in vivo での骨代謝関連性が過去に報告されていない、などの基準によって 52 の候補遺伝子を選出し、トラップ ES クローンからキメラマウスを作製した。それらのうち、42 系統のオスマウスで骨量や骨強度などに異常が観察された。一例として、このスクリーニングシステムによって選ばれた Lbr と Nedd4 のトラップマウスはどちらも有意な骨量減少と骨脆弱性を呈した。また、骨量・骨強度増加を呈する新規遺伝子トラップマウスも同定された。以上から、骨代謝制御に関わる新規遺伝子の同定に関して、EGTC データベースを用いたスクリーニングシステムが有用であると考えられる。

    PTH

    副甲状腺ホルモンは骨髄間葉系細胞の運命を決定する

    原題:

    Parathyroid Hormone Directs Bone Marrow Mesenchymal Cell Fate

    著者:

    Yi Fan, Jun-ichi Hanai, Phuong T. Le, Ruiye Bi, David Maridas, Victoria DeMambro, Carolina A.Figueroa, Serkan Kir, Xuedong Zhou, Michael Mannstadt, Roland Baron, Roderick T. Bronson, Mark C. Horowitz, Joy Y. Wu, John P. Bilezikian, David W. Dempster, Clifford J. Rosen and Beate Lanske

    雑誌:

    Cell Metab, 25, 1‒12 (2017)

    POINT!

    PTH の間欠投与は骨量を増加させ、骨折を抑制することから、実際に骨粗鬆症治療に用いられるが、その作用機序には不明な点が残されていた。著者らは Prr1-Cre マウスを用いて Pth1r の間葉系前駆細胞特異的コンディショナル欠損 (cKO) マウスを作製し、骨形成の低下と骨吸収の亢進に加え、骨髄脂肪細胞の増加が引き起こされることを見出した。また、cKO マウスでは骨髄由来の脂肪細胞は脂肪細胞分化に関わる転写因子や分化マーカーに加え、RANKL を強く発現していた。cKO マウスにおいて RANKL タンパク質量は骨髄上清や血清中でも上昇しており、骨髄の Pref1+RANKL+ 脂肪前駆細胞が増加している一方、他の脂肪組織では検出されなかった。PTH の間欠投与によってコントロールマウスで骨髄脂肪組織量が顕著に減少した一方、cKO マウスでは観察されなかったことから、PTH による骨髄脂肪細胞分化に対する直接的な作用が確認された。さらに、ヒトの男性骨粗鬆症患者に対する PTH 治療によって骨髄脂肪細胞数が減少したことも骨生検サンプルで確認された。これらの発見は PTH が骨髄間葉系前駆細胞の骨芽細胞への運命決定を制御することで、骨髄脂肪分化を抑制することを示している。

    Dmp1-Cre

    Dmp1-Cre の想定外の発現によって明らかにされた Bmpr1a シグナルの成獣マウス消化管間葉組織における重要な役割

    原題:

    Unintended targeting of Dmp1-Cre reveals a critical role for Bmpr1a signaling in the gastrointestinal mesenchyme of adult mice

    著者:

    Joohyun Lim, Joseph Burclaff, Guangxu He, Jason C Mills and Fanxin Long

    雑誌:

    Bone Res, 5, 16049 (2017)

    POINT!

    マウス Dmp1 遺伝子の 15kb フラグメントによって発現誘導を受ける Dmp1-Cre マウスは、骨細胞における遺伝子機能解析に欠かせないツールとして幅広く用いられている。しかしながら、Ai9 レポーターマウスを用いた解析により、著者らは 2 ヶ月齢のマウスで Dmp1-Cre が骨基質内の骨細胞だけでなく、骨幹端の骨表面に存在する骨芽細胞や前骨芽細胞でも発現することを確認した。骨髄では血管に近接する一部のストローマ細胞でも Cre による組換えが観察された。骨格系以外では、Dmp1-Cre はこれまで報告されている骨格筋だけでなく、小脳や後脳の一部の細胞、胃や腸管の Pdgfra を発現する粘膜固有層の間葉系細胞でも組換えが起きることを見出した。Bmpr1a を Dmp1-Cre で欠損させると数多くの大きなポリープが消化管に沿って形成されたが、この表現型は過去の報告で Villin プロモーターによって Noggin を強制発現したマウスと一致している。すなわち、Dmp1-Cre は骨芽細胞系列の予想よりも早期で発現するだけでなく、多くの非骨格系組織の細胞でも組換えを起こしてしまう可能性があり、Dmp1-Cre を用いる際には注意が必要であると考えられる。

    疾患特異的マクロファージ

    線維症に関与する新規モノサイトとその前駆細胞の同定

    原題:

    Identification of an atypical monocyte and committed progenitor involved in fibrosis

    著者:

    Takashi Satoh, Katsuhiro Nakagawa, Fuminori Sugihara, Ryusuke Kuwahara, Motooki Ashihara, Fumihiro Yamane, Yosuke Minowa, Kiyoharu Fukushima, Isao Ebina, Yoshichika Yoshioka, Atsushi Kumanogoh and Shizuo Akira

    雑誌:

    Nature, 541: 96-101 (2017)

    POINT!

    線維症は極めて予後の悪い重篤な疾患であり、有効な治療薬も存在しない。免疫系の病態への関与が示唆されてきたが、詳細な機序は不明であった。著者らは肺線維症モデルマウスの患部で増加する免疫細胞を詳細に検討し、これまでに報告のない新しい細胞種、SatM (Segregated nucleus atypical monocyte) を同定した。SatM の分化に必要な遺伝子を欠損したマウスでは線維症が完全に抑えられたことから、線維化に重要な働きを持つことが示唆された。また SatM は非常にユニークな形態や遺伝子発現パターンを有しており、既知のマクロファージとは異なる分化経路で発生することが明らかとなった。著者らの一連の報告から、疾患特異的なマクロファージが様々な病気の病態形成に関与することが解明されてきており、今後の更なる発展が期待される。

    幹細胞

    異種間器官形成は自家性の機能的な膵臓を産生する

    原題:

    Interspecies organogenesis generates autologous functional islets

    著者:

    Tomoyuki Yamaguchi, Hideyuki Sato, Megumi Kato-Itoh, Teppei Goto, Hiromasa Hara, Makoto Sanbo, Naoaki Mizuno, Toshihiro Kobayashi, Ayaka Yanagida, Ayumi Umino, Yasunori Ota, Sanae Hamanaka, Hideki Masaki, Sheikh Tamir Rashid, Masumi Hirabayashi and Hiromitsu Nakauchi

    雑誌:

    Nature, 542: 191-196 (2017)

    POINT!

    糖尿病の治療法の一つに膵島移植がある。筆者らはこれまでに、異種間胚盤胞補完法により、マウスの体内でラットの多能性幹細胞(PSC)からラットの膵臓を作製できることを示している。この方法で作製された膵臓は、機能的でありラット由来の細胞で構成されたが、大きさはマウスサイズでありラットの糖尿病を治療するには数量の問題があった。今回筆者らは、膵臓がない Pdx-1 欠損ラット胚盤胞にマウス PSCを注入する実験を行うことで、マウス PSC 由来細胞から構成されるラットサイズの膵臓を作製した。次に、これらのマウス‒ラットのキメラ膵臓から調製した膵島をストレプトゾトシン誘発性糖尿病マウスに移植した。移植された膵島は、移植直後の 5 日間を除き、免疫抑制を行わずに、370 日間以上にわたり宿主の血糖値を正常に維持した。これらのデータは、胚盤胞補完法によって異種動物体内で作製された PSC 由来膵島を治療に用いるという概念を実証するものである。また、臓器サイズは細胞内因性だけで規定されるのではなく、細胞外の要因も関与するということが示唆されたのは興味深い。

    関節リウマチ

    関節リウマチにおいて、病的に増殖した末梢ヘルパーT細胞サブセットがB細胞を駆動する

    原題:

    Pathologically expanded peripheral T helper cell subset drives B cells in rheumatoid arthritis

    著者:

    Deepak A. Rao, Michael F. Gurish, Jennifer L. Marshall, Kamil Slowikowski, Chamith y. Fonseka, Yanyan Liu, Laura T. Donlin, Lauren A. Henderson, Kevin Wei, Fumitaka Mizoguchi, Nikola C. Teslovich, Michael E. Weinblatt, Elena M. Massarotti, Jonathan S. Coblyn, Simon M. Helfgott, yvonne C. Lee, Derrick J. Todd, Vivian P. bykerk, Susan M. Goodman, Alessandra. Pernis, Lionel Ivashkiv, Elizabeth W. Karlson, Peter A. Nigrovic, Andrew Filer, Christopher D. buckley, James A. Lederer, Soumya Raychaudhuri and Michael B. Brenner

    雑誌:

    Nature, 542: 110-114 (2017)

    POINT!

    CD4+ T 細胞は、自己免疫病の発症に重要な細胞である。特定の疾患における CD4+T細胞のエフェクター機能については詳細は不明である。今回筆者たちは、関節リウマチについて、その患者由来の関節組織内の活性化 T 細胞を、マスサイトメトリーを用いて解析した。すると、関節リウマチ患者の滑膜では、PD-1hiCXCR5-CD4+ T 細胞集団が著しく増加していることが明らかになった。筆者たちは、この細胞集団がIL-21、CXCL13、ICOS および MAF など B 細胞の働きを補助する因子を発現することを明らかにし、このPD-1hiCXCR5-CD4+ T 細胞を「末梢ヘルパー T(TPH)」と名付けた。TPH 細胞は、病的な炎症を起こしている非リンパ組織内で、B 細胞応答と抗体産生を促進する独特なサブセットであることが示唆された。

    アディポカイン

    脂肪組織に由来する循環 miRNA が他組織の遺伝子発現を制御する

    原題:

    Adipose-derived circulating miRNAs regulate gene expression in other tissues

    著者:

    Thomas Thomou, Marcelo A. Mori, Jonathan M.Dreyfuss, Masahiro Konishi, Masaji Sakaguchi, Christian Wolfrum, Tata Nageswara Rao, Jonathon N. Winnay, Ruben Garcia-Martin, Steven K. Grinspoon, Phillip Gorden and C. Ronald Kahn

    雑誌:

    Nature, 542: 450-455 (2017)

    POINT!

    筆者らは、マイクロ RNA(miRNA)プロセシング酵素として良く知られる Dicer の脂肪組織特異的ノックアウト(ADicerKO)マウスを解析した。ADicerKO マウスは脂肪萎縮、インスリン耐性、FGF21の血中濃度が上昇していた。ヒト脂肪萎縮症患者の循環エキソソームの miRNA のレベルが減少していることも見出した。脂肪組織の中でも特に褐色脂肪組織を ADicerKO マウスへ移植すると循環する miRNA のレベルが回復し、これに伴って糖耐性の改善と肝臓 Fgf21 mRNA 発現と循環 FGF21 の減少が観察された。この FGF21遺伝子発現制御は、正常マウスの血清エキソソームの投与によりレスキューすることができた。従って、脂肪組織は循環エキソーム miRNA の重要な供給源であり、この循環エキソソーム miRNA は遠隔組織での遺伝子発現を調節することができることを示した。この報告は今まで報告されたことのないタイプのアディポカインと言える。

    骨転移

    脂質オステオクラストカインは乳がん骨転移を制御する

    原題:

    Lipid Osteoclastokines Regulate Breast Cancer Bone Metastasis

    著者:

    Krzeszinski JY, Schwaid AG, Cheng WY, Jin Z, Gallegos ZR, Saghatelian A, Wan Y.

    雑誌:

    Endocrinology, doi: 10.1210/en.2016-1570. [Epub ahead of print]

    POINT!

    がんの骨転移において、破骨細胞はがん細胞との悪循環を形成している。骨転移微小環境の形成に破骨細胞が重要な役割を担うことが明らかになっているにも関わらず、この微小環境形成に関するメカニズムには不明な点が残されていた。本論文で著者らは、破骨細胞分化前後の培養上清を用いたメタボローム解析によって、RANKL 刺激に伴いアラキドン酸 (AA) の分泌が上昇し、リゾホスファチジルコリン (LPC) の分泌が低下することを明らかにした。AA はがん骨転移促進性である一方、LPC は抑制性であり、この脂質性オステオクラストカインの変化は相乗的にがん細胞の増殖や遊走、生存、前転移性の遺伝子発現を促進することが示された。LPC と共に AA シグナルの阻害剤である BW-755C を投与することによって、マウスモデルにおける乳がん骨転移が抑制された。以上から、破骨細胞 - がん細胞間の悪循環に関わるメカニズムの新たなパラクライン作用が存在し、骨転移に対する新たな治療標的となりうることが示された。

    オステオレクチン

    Clec11a/ オステオレクチンは骨形成性増殖因子で成体骨格の維持を促進する

    原題:

    Clec11a/osteolectin is an osteogenic growth factor that promotes the maintenance of the adult skeleton

    著者:

    Yue R, Shen B, Morrison SJ.

    雑誌:

    eLife, 5: e18782 (2016)

    POINT!

    著者らが以前に報告した、骨髄細胞画分のマイクロアレイデータの再解析から、C 型レクチン様ドメイン含有タンパク質である Clec11a が、血管内皮細胞や非分画細胞と比較して Scf-GFP+CD45‒Ter119‒CD31‒のストローマ細胞 (90% 以上の細胞が LepR+) と、Col1a1-GFP+CD45‒Ter119‒CD31‒の骨芽細胞で有意に高く発現していることを発見した。免疫染色によって、骨髄ストローマ細胞や骨芽細胞に加え、骨細胞や肥大軟骨細胞も Clec11a を発現・分泌していることが示された。CRISPR-Cas9 法によって作製した Clec11a 欠損マウスは発生段階では正常で、造血系細胞は正常であったが、成獣では長管骨・椎骨ともに有意な骨量低下が観察された。Clec11a 欠損マウスでは、加齢に伴う骨量減少や骨強度低下、骨折治癒の遅延が促進されており、Clec11a 欠損マウス由来の骨髄ストローマ細胞は骨芽細胞分化能が低下しており、in vivo でも有意な骨形成の低下をみとめた。さらに、リコンビナント Clec11a はマウス由来だけでなくヒト由来の骨髄ストローマ細胞による骨形成も促進し、in vivo でも骨粗鬆症モデルマウスの骨量増加に加え、ヒト骨髄ストローマ細胞をマウスに移植した部位での骨形成促進効果を示した。すなわち、Clec11a は間葉系前駆細胞から成熟骨芽細胞への分化を促進することで骨を維持していることが明らかになった。ただし、Clec11a 受容体は同定されておらず、どのようなシグナルを介して骨形成に影響を及ぼすのかは不明である。これらの事実から、著者らはこの因子をオステオレクチンと名付けた。

    Dmp1-DTR

    Dmp1 プロモーター誘導性ジフテリア毒素受容体トランスジーンの発現は多臓器での予想外の効果につながる

    原題:

    Dmp1 Promoter-Driven Diphtheria Toxin Receptor Transgene Expression Directs Unforeseen Effects in Multiple Tissues

    著者:

    Al-Jazzar A, Javaheri B, Prideaux M, Boyde A, Scudamore CL, Cherifi C, Hay E, Hopkinson M, Boyd M, Cohen-Solal M, Farquharson C, Pitsillides AA.

    雑誌:

    Int. J. Mol. Sci. 2017, 18(1), 29; doi:10.3390/ijms18010029

    POINT!

    近年、ジフテリアトキシン (DT) 投与によって骨細胞欠失を誘導するために Dmp1 プロモーター誘導性 DT 受容体 (DTR) トランスジーンをもつマウスが用いられており、それらのマウスから得られた結果を基に骨細胞の機能が同定されてきた。著者らは Dmp1-DTR Tg マウスにおける DT の影響の選択性を確認したところ、DT 誘導性骨細胞欠失が不完全である一方、広範な DTR の異所性発現や、多臓器における組織病理学的な DT 誘導性の異常が顕著に観察された。Tg マウスの多くの非骨格組織で、DT シグナル伝達の指標となるEF-2 の脱リン酸化が促進されたことから、DT 作用の直接的なオフターゲット効果である可能性が示唆された。さらに、Dmp1-DTR Tg マウスは野生型マウスと比べ、DT 投与によって非常に早期に各種健康状態スコアが悪化することも観察された。以上のデータから骨細胞欠失モデルの代替法を開発することが必要であり、これらの Tg マウスのみを用いて行われた実験から得られた結果には注意が必要であると考えられる。

    口腔免疫

    咀嚼による機械的損傷は口腔粘膜において Th17 細胞を誘導する

    原題:

    On-going Mechanical Damage from Mastication Drives Homeostatic Th17 Responses at the Oral Barrier

    著者:

    Dutzan N, Abusleme L, Bridgeman H, Greenwell-Wild T, Zangerle-Murray T, Fife ME, Bouladoux N, Linley H, Brenchley L, Wemyss K, Calderon G, Hong BY, Break TJ, Bowdish DM, Lionakis MS, Jones SA, Trinchieri G, Diaz PI, Belkaid Y, Konkel JE, Moutsopoulos NM.

    雑誌:

    Immunity, 46: 133-147 (2017)

    POINT!

    外部環境と自己を隔離する腸管や皮膚において、部位特異的な細菌叢により誘導される免疫系がバリアの恒常性維持に重要な働きを持つことが知られている。口腔粘膜は細菌や食餌性抗原、咀嚼による機械的刺激など日常的に様々な刺激に曝されているユニークな臓器であり、そのバリア機構の仕組みは不明な点が多い。著者らは高齢マウスの口腔粘膜は若齢マウスと比較して、Th17 細胞が多く存在していることを見出した。高齢マウスの口腔に存在する Th17 細胞は、細菌よりもむしろ機械的刺激で誘導されることが示され、口腔粘膜は咀嚼による物理的な刺激に応答したユニークなバリア機構を形成していることが示唆された。

    間葉系幹細胞

    成獣の骨髄多能性間葉系幹細胞、ストローマ細胞における局地的に制限されたHoxの機能

    原題:

    Regionally Restricted Hox Function in Adult Bone Marrow Multipotent Mesenchymal Stem/Stromal Cells

    著者:

    Rux DR, Song JY, Swinehart IT, Pineault KM, Schlientz AJ, Trulik KG, Goldstein SA, Kozloff KM, Lucas D, Wellik DM.

    雑誌:

    Dev. Cell, 39: 653‒666 (2016)

    POINT!

    Hox 遺伝子は体肢領域の決定づけに重要であり、位置的に異なる Hox 遺伝子が発現し部位特異的な構造を決定することはよく知られている。しかしながら、骨格の形態やパターニングに Hox 遺伝子機能がどのように働いているかについては不明な点も残る。研究チームが Hoxa11-GFP レポーターで遺伝子発現をトラックすると、Hoxa11 は成体においても発現が持続していることがわかった。この Hoxa11-EGFP を発現している細胞は、in vivo では PDGFRα+CD51+LepR+ の細胞集団であり、骨折後の損傷部位で増殖していることを同定した。in vitro ではこの Hoxa11-EGFP を発現している細胞は骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞に分化できることを示し、間葉系幹細胞として機能することを示した。

    Th17 分化

    樹状細胞による IL-6 のトランスプレゼンテーションは病原性TH17の準備刺激に必要とされる

    原題:

    Trans-presentation of IL-6 by dendritic cells is required for the priming of pathogenic TH17 cells

    著者:

    Heink S, Yogev N, Garbers C, Herwerth M, Aly L, Gasperi C, Husterer V, Croxford AL, Möller-Hackbarth K,Bartsch HS, Sotlar K, Krebs S, Regen T, Blum H, Hemmer B, Misgeld T, Wunderlich TF, Hidalgo J, Oukka M,Rose-John S, Schmidt-Supprian M, Waisman A, Korn T.

    雑誌:

    Nat. Immunol., 18: 74-85 (2017)

    POINT!

    IL-6 は Th17 細胞の分化に重要であるが、病原性 Th17 細胞分化における主たる IL-6 産生細胞は不明である。著者らは Sirpα陽性樹状細胞が病原性 Th17 細胞の発生に重要であることを示した。Sirpα陽性樹状細胞が IL-6 受容体α鎖(IL-6Rα) を使って、IL-6 を T 細胞にトランスプレゼンテーションをすることを明らかにした。周囲に存在する IL-6 は T 細胞中の転写因子 Foxp3 の発現誘導を抑制するのに十分ではあるが、T 細胞中の IFN-γ発現の早期誘導と病原性 Th17 細胞の発生には樹状細胞の IL-6Rαによる T 細胞への IL-6 のトランスプレゼンテーションが必要であることを示した。これらの結果は Th17 細胞が介する自己免疫疾患の治療方法に新たな方向性を提示する。

    再生

    創傷治癒の時の筋繊維芽細胞からの脂肪細胞の再生

    原題:

    Regeneration of fat cells from myofibroblasts during wound healing

    著者:

    Plikus MV, Guerrero-Juarez CF, Ito M, Li YR, Dedhia PH, Zheng Y, Shao M, Gay DL, Ramos R, His TC, Oh JW, Wang X, Ramirez A, Konopelski SE, Elzein A, Wang A, Supapannachart RJ, Lee HL, Lim CH, Nace A, Guo A, Treffeisen E, Andl T, Ramirez RN, Murad R, Offermanns S, Metzger D, Chambon P, Widgerow AD, Tuan TL, Mortazavi A, Gupta RK, Hamilton BA, Millar SE, Seale P, Pear WS, Lazar MA, Cotsarelis G.

    雑誌:

    Science, doi: 10.1126/science.aai8792 (2017)

    POINT!

    1つの細胞系列のリプログラミングを介した他の細胞への再生というのは魚類や両生類においては報告があるが、哺乳類では観察されていない。今回、研究チームはマウスの創傷治癒の時に、既に分化を終えた筋線維芽細胞から脂肪細胞へと再生することを発見した。筋線維芽細胞のリプログラミングには毛胞が必要であり、毛胞細胞がBMPシグナルを引き起こすことで発生過程に発現する脂肪細胞の転写因子の活性化を引き起こすことを見出した。創傷筋線維芽細胞が系列の全く異なる脂肪細胞に分化できるというこの結果は、組織の創傷治癒において、瘢痕組織形成よりもむしろ筋線維芽細胞を脂肪細胞へと変換する経路を活性化することで創傷後の皮下脂肪組織再生を操作できる可能性を示した。

  • 造血幹細胞

    Dickkopf-1 は直接およびニッチを介したメカニズムで造血再生を促進する

    原題:

    Dickkopf-1 promotes hematopoietic regeneration via direct and niche-mediated mechanisms

    著者:

    Himburg HA, Doan PL, Quarmyne M, Yan X, Sasine J, Zhao L, Hancock GV, Kan J, Pohl KA, Tran E, Chao NJ, Harris JR, Chute JP.

    雑誌:

    Nature Medicine 538: 518‒522 (2016)

    POINT!

    骨髄抑制後に起きる造血再生を制御する時の骨芽細胞系列の役割についての詳細は明らかではない。研究グループは、マウスで Sp7-Cre を用いて骨芽細胞系列特異的に Bak および Bax といったアポトーシス促進因子を欠失させると、放射線照射後の造血幹細胞の回復や放射線防護が促進することを示した。このコンディショナルノックアウトマウスでは骨髄中の Dickkopf-1(Dkk1)の発現が上昇していた。Sp7 発現細胞で Dkk1 を欠失させると、放射線照射後の骨髄幹細胞、前駆細胞の回復は阻害された。Dkk1 は HSC への直接的な作用、又、上皮成長因子の産生を刺激することにより、骨髄の内皮細胞への間接的な作用をもたらすことで、造血再生を促進していることが明らかとなった。

    エピジェネティック

    エピジェネティックな記憶は造血幹細胞の細胞自立的なヘテロ挙動の基礎となる

    原題:

    Epigenetic memory underlies cell-autonomous heterogeneous behavior of hematopoietic stem cells

    著者:

    Yu VW, Yusuf RZ, Oki T, Wu J, Saez B, Wang X, Cook C, Baryawno N, Ziller MJ, Lee E, Gu H, Meissner A, Lin CP, Kharchenko PV, Scadden DT.

    雑誌:

    Cell, 167: 1310-1322 (2016)

    POINT!

    幹細胞は生体内恒常性や多くの組織修復を左右し、機能的にはヘテロであることが理解されつつある。これまでの研究では造血幹細胞の不均一性の研究には生体外での DNA バーコーディングなど、細胞の破壊を伴うアッセイ方法でしか確かめられていなかった。そのために、造血幹細胞移植による再構築能の検討までは試みることができなかった。この問題を解決すべく、研究チームは新しいトランスジェニックマウスを樹立し、細胞内蛍光タグ法を駆使して、造血幹細胞の機能的、転写的、エピジェネティクス的特性をクローンレベルで in vivo において追跡した。クローン内の機能は高レベルで保持されており、移植や炎症、遺伝毒性といった外的ストレス下でも変わらずに保持されており、異なる転写、DNA メチレーション、クロマチンアクセシビリティのパターンと関連していた。造血幹細胞のエピジェネティックに制御された高レベルな細胞自立性を考慮すると、幹細胞の可塑性や幹細胞ニッチのコンセプトについて再検討されるべきであるかもしれない。

    関節リウマチ

    血清反応陽性リウマチ性関節炎の免疫病原性 : 誘発からターゲットへ

    原題:

    The immunopathogenesis of seropositive rheumatoid arthritis: from triggering to targeting

    著者:

    Malmström V, Catrina AI, Klareskog L.

    雑誌:

    Nat. Rev. Immunol., 17: 60-75 (2017)

    POINT!

    リウマチ性関節炎(RA)患者は自己抗体に関して二つのグループに大別される。抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)やリウマトイド因子(RF)陽性の患者(seropositive)と陰性の患者(seronegative)である。seropositive 患者は全体の 2/3 程度であり、より関節炎が重症である。ACPA や RF は RA 発症以前から陽性になる場合があるため、発症と深い関連性がある。この総説では近年明らかになりつつある seropositive患者における自己抗体を介した RA 発症機序について総括している。

    血管

    血流は骨の血管機能と骨形成を制御する

    原題:

    Blood flow controls bone vascular function and osteogenesis

    著者:

    Ramasamy SK, Kusumbe AP, Schiller M, Zeuschner D, Bixel MG, Milia C, Gamrekelashvili J, Limbourg A, Medvinsky A, Santoro MM, Limbourg FP, Adams RH.

    雑誌:

    Nat Commun, 7: 13601 (2016)

    POINT!

    血管は骨恒常性や修復において重要な役割を担っていることが示唆されてきたが、骨格系における血管機能の根本的な性状は明らかになってはいない。最近、著者らは CD31 と Endomucin の高発現で特徴づけられる H 型血管内皮細胞サブタイプを同定し、血管新生と骨形成を同調して制御していることを示した。さらに、本論文では生体イメージング解析によって、独特の血流パターンが長管骨の血管系で観察され、適切な血管形成に重要であることを見出し、血管成長が血管内皮の芽状突起伸長と吻合に関わることを明らかにした。長管骨内の血流は骨幹端部における H 型血管で速く、大腿動脈結紮やプラゾシンによって誘導した骨内の血流低下によって血管新生や骨形成に障害をきたし、血管内皮細胞での Notch シグナル伝達が低下する。また、老齢マウスにおいて骨内の血流と血管内皮細胞での Notch 活性が低下することで血管新生と骨形成が低下しており、これらは血管内皮細胞特異的な Notch の活性化によって回復することも示された。老齢マウスにおける血流と血管新生は、ビスフォスフォネートの投与によっても改善することが示された。以上から、血流と血管内皮細胞の Notch シグナルが骨格系の老化過程を制御する重要な因子であると考えられる。

    異所性骨化

    2つの組織常在型の前駆細胞系列がそれぞれ異なる異所性骨化を制御する

    原題:

    Two tissue-resident progenitor lineages drive distinct phenotypes of heterotopic ossification

    著者:

    Dey D, Bagarova J, Hatsell SJ, Armstrong KA, Huang L, Ermann J, Vonner AJ, Shen Y, Mohedas AH, Lee A, Eekhoff EM, van Schie A, Demay MB, Keller C, Wagers AJ, Economides AN, Yu P.

    雑誌:

    Sci Transl Med, 8: 366ra163 (2016)

    POINT!

    進行性骨化性線維異形成症 (FOP) は異所性骨化を示す先天性疾患であり、BMP の I 型受容体の一つACVR1 の変異によって引き起こされ、骨格筋や、伳、靭帯、関節の進行性骨化が観察される。この病態では異所性骨化に先んじて、外傷や炎症、ウイルス感染などによって引き起こされるフレアアップが起こるが、一方でこのような明らかなトリガーが確認されないケースも知られている。著者らは Acvr1R206H ノックインマウスにおいて、外傷誘導性の筋肉での異所性骨化に加え、関節、伳、靭帯では異所性骨化を自然発症することを示した。さらに、これら複数の組織における異所性骨化を誘導する細胞には、外傷非依存的な靭帯や関節での異所性骨化に関与するScx 陽性の伳由来前駆細胞と、傷害依存的な骨格筋内の異所性骨化に関与する筋常在性間質性 Mx1 陽性細胞の2つのポピュレーションが存在することを明らかにした。Acvr1R206H をどちらの系列において発現させても BMP シグナルの異常をきたし、アクチビン A によって軟骨分化が誘導され、異所性骨化病変部において Acvr1R206H を有する肥大軟骨細胞が発生する。Acvr1R206H と比較して、人工的でリガンド非依存的な ACVR1Q207D 変異では、全ての表現型が重症化し発症が早いにも関わらず、筋肉の異所性骨化に先んじた傷害は必要であることから、BMP シグナルの活性化に加え、傷害誘導性因子が必要であることがわかった。Acvr1R206H ノックインマウスにおける傷害依存的な筋肉の異所性骨化と、自然発症する靭帯の異所性骨化のどちらも、選択的 ACVR1 阻害剤である LDN-212854 によって効率よく抑制された。以上から、FOP における異所性骨化の多様な表現型は、異なる組織常在型前駆細胞における異常な ACVR1 シグナルの細胞自律的な影響が原因であると考えられ、単一ポピュレーションをターゲットとした局所的な治療は十分な治療効果を得ることが出来ない可能性がある一方、複数の組織常在型前駆細胞をターゲットとする全身性の治療でより高い効果を得られることが期待される。

    心臓石灰化

    心臓線維芽細胞は骨化性細胞へ分化し、病理的な心臓石灰化を抑制するためのターゲットになりうる

    原題:

    Cardiac Fibroblasts Adopt Osteogenic Fates and Can Be Targeted to Attenuate Pathological Heart Calcification

    著者:

    Pillai IC, Li S, Romay M, Lam L, Lu Y, Huang J, Dillard N, Zemanova M, Rubbi L, Wang Y, Lee J, Xia M, Liang O, Xie YH, Pellegrini M, Lusis AJ, Deb A

    雑誌:

    Cell Stem Cell, doi: 10.1016/j.stem.2016.10.005. [Epub ahead of print]

    POINT!

    これまで、加齢や傷害に伴う異所性の石灰化は骨形成性細胞が局所組織にリクルートされることで石灰化を誘導すると考えられてきた。心臓では、心筋の石灰化は伝導系傷害を引き起こし、心ブロックに関わる最も一般的な病変である。しかしながら、病理的な心筋の石灰化に関わる細胞や分子機構は不明であった。心臓石灰化のマウスモデルと移植での細胞系列追跡実験により、著者らは心臓線維芽細胞が骨芽細胞様細胞へと分化し、心筋石灰化に直接的に関与することを明らかにした。また、ピロリン酸を産生する酵素である ENPP1 の発現が心筋の傷害によって心臓線維芽細胞で誘導され、ENPP1 を低分子化合物によって阻害することで、心臓の石灰化を有意に抑制できることが明らかになった。さらに、エチドロネートを石灰化抑制剤として投与することで異所性の心臓石灰化が完全に阻害され、傷害後の心臓機能を改善させた。以上から、これらの知見は異所性石灰化に関わる線維芽細胞の可塑性を明らかにし、治療法の開発におけるあらたな薬剤ターゲットとなることが期待される。

    骨髄微小環境

    T細胞性急性リンパ性白血病は骨髄微小環境と動的に相互作用する

    原題:

    T-cell acute leukaemia exhibits dynamic interactions with bone marrow microenvironments

    著者:

    Hawkins ED, Duarte D, Akinduro O, Khorshed RA, Passaro D, Nowicka M, Straszkowski L, Scott MK, Rothery S, Ruivo N, Foster K, Waibel M, Johnstone RW, Harrison SJ, Westerman DA, Quach H, Gribben J, Robinson MD, Purton LE, Bonnet D, Lo Celso C.

    雑誌:

    Nature, 538: 518‒522 (2016)

    POINT!

    がん細胞と周囲の微小環境との相互作用ががんの進行や化学療法抵抗性、再発などに関与することが知られており、特定のがんストローマ細胞系列や、それらの相互作用を標的とした新たな治療法が探索されている。本論文で、著者らはヒト T 細胞性急性リンパ芽球性白血病 (T-ALL) のマウスモデルにおける骨髄内での疾患進行、化学療法抵抗性の獲得に至る過程において、生体イメージングを駆使し、組織全体から 1 細胞レベルに渡って経時的に解析したところ、T-ALL 細胞が骨髄全体に遊走し、進行や化学療法への抵抗性を獲得する過程において骨髄内の特定の微小環境に依存しないことを明らかにした。この挙動は、最も早期の骨髄への生着から化学療法への応答・抵抗性獲得に渡るがん進行の全期で維持されていた。一方、T-ALL 細胞は急速で選択的な髄腔内のリモデリングを誘導し、Nestin-GFP+ 細胞や血管が維持されているにも関わらず、Col2.3-GFP+ 骨芽細胞の完全な欠失を引き起こした。この現象はヒト T-ALL 由来サンプルにおいても観察された。今後の治療法の開発において、T-ALL 細胞の侵襲と化学療法抵抗性に対抗するため、特定の骨髄ストローマを標的とするのではなく、がん細胞の遊走と周囲の微小環境との無差別な相互作用を標的とすべきであるということが明らかになった。

    PTH

    SIK は骨細胞の PTH への応答を制御する

    原題:

    SIKs control osteocyte responses to parathyroid hormone

    著者:

    Wein MN, Liang Y, Goransson O, Sundberg TB, Wang J, Williams EA, O'Meara MJ, Govea N, Beqo B, Nishimori S, Nagano K, Brooks DJ, Martins JS, Corbin B, Anselmo A, Sadreyev R, Wu JY, Sakamoto K, Foretz M, Xavier RJ, Baron R, Bouxsein ML, Gardella TJ, Divieti-Pajevic P, Gray NS, Kronenberg HM.

    雑誌:

    Nat Commun, 7: 13176 (2016)

    POINT!

    PTH は骨細胞上の受容体を介して骨形成と骨吸収を調節する。本論文で、著者らは PTH によるSost 発現抑制において HDAC4 と HDAC5 を必要とし、PTH による Tnfsf11 の発現上昇に CRTC2 を必要とすることを見出した。また、PTH シグナル非存在下では SIK (Salt inducible kinase) が HDAC4/5 や CRTC2 をリン酸化することで細胞質に留め、一方 PTH 存在下では PKA シグナルによって SIK がリン酸化されることで抑制され、HDAC4/5 と CRTC2 のリン酸化が低下することによって核内移行することも発見した。さらに、著者らは既知の低分子 SIK 阻害剤の特異性を高め、in vivo で使用できる類縁体を探索し、新規の低分子 SIK 抑制剤を複数同定した。これらの阻害剤で刺激すると、PTH 刺激と同様に HDAC4/5 や CRTC2 の核内移行を促進し、Sost発現抑制と Tnfsf11 発現上昇が観察された。これらの低分子 SIK 抑制剤のうち、in vivo での使用に最も適したYKL-05-099 を 1 日 1 回、2 週間腹腔内投与すると骨形成と骨量が上昇することが明らかになった。一方、YKL-05-099 投与により Tnfsf11 発現が上昇するにも関わらず、骨吸収は抑制されていたが、これは YKL-05-099が M-CSFR や Src に対しても抑制効果を有することが原因であると考えられた。すなわち、骨細胞の PTH シグナルにおける主要な経路に SIK 抑制が関わっており、低分子 SIK 抑制剤は PTH の骨格系への効果と類似の作用を発揮することによる治療効果が期待できることが示された。

    骨リモデリング

    GDF11は破骨細胞分化を刺激し、骨芽細胞分化を抑制することで骨量を低下させる

    原題:

    GDF11 decreases bone mass by stimulating osteoclastogenesis and inhibiting osteoblast differentiation

    著者:

    Liu W, Zhou L, Zhou C, Zhang S, Jing J, Xie L, Sun N, Duan X, Jing W, Liang X, Zhao H, Ye L, Chen Q. Yuan Q.

    雑誌:

    Nat Commun, 7: 12794 (2016)

    POINT!

    GDF11 は TGF-βスーパーファミリーに属する液性因子である。Gdf11 の欠失は骨格系における前後軸パターン形成の異常をきたすことが知られていたが、骨リモデリングにおける役割は不明であった。本論文で著者らはリコンビナント GDF11 を毎日、6 週間腹腔内投与することによって、若齢・老齢マウスのどちらにおいても骨吸収促進・骨形成抑制を伴う骨量減少を引き起こすことを発見した。GDF11 は Smad2/3 のリン酸化を介して骨芽細胞分化を抑制すると同時に、Smad2/3 と c-Fos 依存的な NFATc1 発現誘導を介して破骨細胞分化を促進することが示された。さらに、リコンビナント GDF11 の投与はマウスにおける骨再生を遅延させ、一方で抗 GDF11 抗体の投与は卵巣摘出骨粗鬆症モデルにおける骨量減少を抑制し、加齢に伴う骨量減少を改善することも示された。以上のデータから、GDF11 は新たな骨リモデリングの制御因子であり、骨粗鬆症の新たな治療標的となりうることを示唆している。

    PPARγ

    PPARγは薬理学的な破骨細胞分化を制御するが生理的・病理学的な破骨細胞分化には関わらない

    原題:

    PPAR-γ regulates pharmacological but not physiological or pathological osteoclast formation

    著者:

    Zou W, Rohatgi N, Chen TH, Schilling J, Abu-Amer Y, Teitelbaum SL.

    雑誌:

    Nat Med, 22: 1203‒1205 (2016)

    POINT!

    PPARγを活性化するチアゾリジン系薬剤 (TZD) はインスリン抵抗性改善薬であるが、TZD の長期使用は骨折リスクを高めることが知られている。以前の報告 (Wan et al., Nat Med, 13: 1496‒1503 (2007)) で、PPARγは生理的な破骨細胞分化に関わり、TZD による破骨細胞分化の上昇が TZD による骨折促進効果に関連することが示されていた。しかし、この論文では Tie2‒Cre を用いて Pparg を欠損させており、血管内皮細胞などでも Ppargが欠損してしまうため、著者らは同じ表現型が、より特異的な Cre を用いた場合でも出現するかどうかを調べた。Ppargfl/fl マウスと、LysM‒Cre、RANK‒Cre、Vav1‒Cre マウスをそれぞれ交配し解析したところ、PPARγ発現はほぼ完全に欠損しているにも関わらず、いずれのマウスにおいても骨量や破骨細胞に変化は見られなかった。さらに、以前の報告を確認するため、同じ Tie2‒Cre マウスを Jackson と Wan らからそれぞれ取得し、Ppargfl/fl マウスと交配したが、それでも骨量や破骨細胞に表現型は見いだせなかった。また、PPARγによる破骨細胞分化促進能に関わると考えられていた c-Fos やその下流の NFATc1 の発現も、PPARγ欠損細胞において変化が観察されなかった。以上から、著者らは PPARγは生理的・病理学的な破骨細胞分化には重要ではないと結論づけている。一方で、LysM‒Cre を用いた PPARγ欠損マウスにおいて、通常野生型マウスでみられる TZD による Ctsk 発現上昇が観察されなかったことから、TZD による骨吸収上昇には重要であり、ミエロイド系細胞における PPARγが TZDによる骨折リスク上昇に寄与していることが示唆された。
     一方、Wan らは Zou らによる懸念に対し、培養条件やマウスの遺伝的バックグラウンドの僅かな違いが結果の違いを生み出した可能性や、2 つの研究の 9 年間の時間的な隔たりが内因性の遺伝的変化を生み出した可能性を指摘している。
     今後、より詳細な、そしてより慎重な生理的・病理学的・薬理学的な破骨細胞分化における PPARγの機能解析が必要であると考えられる。

    骨髄環境

    幹細胞微小環境における Ptpn11 活性化変異の白血病誘発効果

    原題:

    Leukaemogenic effects of Ptpn11 activating mutations in the stem cell microenvironment

    著者:

    Dong L, Yu WM, Zheng H, Loh ML, Bunting ST, Pauly M, Huang G, Zhou M, Broxmeyer HE, Scadden DT, Qu CK.

    雑誌:

    Nature, 539: 304-308 (2016)

    POINT!

    ヌーナン症候群はリンパ異形成や骨格異常、精神遅滞をもつ先天奇形症候群である。その原因遺伝子の一つに、タンパク質チロシンフォスファターゼ SHP2 (PTPN11) が報告されており、ヌーナン症候群の患者の半数近くに検出される変異である。これまでの報告では Ptpn11 変異が細胞自立的なメカニズムを介して小児骨髄増殖性新生物を誘導する事が示されている。しかしながら、骨髄環境構成要素の Ptpn11 変異の影響は検討されていなかった。筆者達は PTPN11 を Nestin 陽性細胞、間葉系幹細胞、レプチン受容体陽性細胞、骨芽細胞前駆細胞で欠損させるとリンパ異形成が生じることを見出した。間葉系細胞での Ptpn11 の変異は炎症性ケモカイン CCL3 の産生を上昇させ、単球の割合を上昇させた。また、CCL3 アゴニスト投与は効果的に Ptpn11 変異により誘発された骨髄環境変化による骨髄増殖性新生物の発生を抑制することができた。今回の結果は骨髄環境側の Ptpn11 変異が白血病発生に寄与すること、また、CCL3 がヌーナン症候群の白血病進行を調節し、幹細胞移植改善のための治療ターゲットになりうる可能性を提案した。

    骨髄ストローマ細胞

    急性骨髄性白血病患者由来の骨髄間葉系幹細胞の分子変化

    原題:

    Molecular alterations in bone marrow mesenchymal stromal cells derived from acute myeloid leukemia patients

    著者:

    von der Heide EK, Neumann M, Vosberg S, James AR, Schroeder MP, Tanchez JO, Isaakidis K, Schlee C, Luther M, Jöhrens K, Anagnostopoulos I, Mochmann LH, Nowak D, Hofmann WK, Greif PA, Baldus CD.

    雑誌:

    Leukemia 2016 Nov 11. doi: 10.1038/leu.2016.324.

    POINT!

    ヒトの急性骨髄性白血病の発生原因における骨髄間葉系ストローマ細胞の寄与は不明な点が多い。研究チームはストローマ細胞による影響を調べるため、急性骨髄性白血病患者の遺伝学的解析、転写解析、エピジェネティック解析を行なった。21 人の患者から得られた骨髄ストローマサンプルの全エクソームシーケンシングを行なったところ、遺伝学的変化を見出した。細胞骨格に重要なタンパク質、プレクチンをコードするPLEC 遺伝子の変異であった。RNA シークエンシングを用いた転写プロファイリングによると、急性骨髄性白血病患者において、プロテオグリカンと接着分子の調節が不十分であり、代謝とエンドサイトーシス関連の転写と DNA メチレーションの調節に影響があることがわかった。以上の結果から骨髄ストローマ細胞の分子変化が骨髄環境の変化を促進することがわかった。

    組織修復マクロファージ

    マクロファージの PPARγ(脂質活性化転写因子)は成長因子GDF3と骨格筋再生を制御する

    原題:

    Macrophage PPARγ, a lipid activated transcription factor controls the growth factor GDF3 and skeletal muscle regeneration

    著者:

    Varga T, Mounier R, Patsalos A, Gogolák P, Peloquin M, Horvath A, Pap A, Daniel B, Nagy G, Pintye E, Poliska S, Cuvellier S, Ben Larbi S, Sansbury BE, Spite M, Brown CW, Chazaud B, Nagy L

    雑誌:

    Immunity, 45: 1038-1051 (2016)

    POINT!

    組織修復にはマクロファージの働きが重要と考えられている。マクロファージはダメージを受けた細胞を特定し、排除することで、その後の組織再生を促す役割をもつ。マクロファージによる組織修復促進機能にはそのエフェクター機能のスイッチが必要だと考えられている。しかしながらマクロファージが組織修復の際の感知やエフェクター機能を制御する分子メカニズムは不明であった。研究チームは組織修復マクロファージの中で脂質活性化転写因子 PPARγがはたらくことが適切な筋再生に必要であることを報告した。マクロファージの PPARγは TGF-βファミリーのメンバーである GDF3 の発現を調節している事が明らかとなった。GDF3 は筋前駆細胞の融合を促進することで骨格筋再生を促進していた。組織修復マクロファージにおける PPARγの役割と筋芽細胞に働きかける細胞外タンパク質としての GDF3 の機能を示した。

    神経

    G-CSF 誘導性の交感神経緊張は発熱を引き起こし、PGE₂を介した好中球の抗動員効果を刺激する

    原題:

    G-CSF-induced sympathetic tone provokes fever and primes anti-mobilizing functions of neutrophils via PGE₂

    著者:

    Kawano Y, Fukui C, Shinohara M, Wakahashi K, Ishii S, Suzuki T, Sato M, Asada N, Kawano H, Minagawa K, Sada A, Furuyashiki T, Uematsu S, Akira S, Uede T, Narumiya S, Matsui T, Katayama Y.

    雑誌:

    Blood, 8 Nov 2016 DOI: 10.1182/blood-2016-07-725754

    POINT!

    造血幹細胞の末梢血への導入に使用される G-CSF 投与は発熱や痛みを誘発する事が知られているが、そのメカニズムについては不明であった。研究チームはプロスタグランジン E₂ (PGE₂) 合成酵素欠損マウスでは、G-CSF 投与による発熱が観察されないことを見出した。また、PGE₂合成酵素欠損キメラマウスの造血幹細胞動員は野生型の 2 倍であることを見出した。したがって、血球系細胞から産生される PGE₂が末梢血への造血幹細胞動員を制御している事が示唆された。また、筆者達は G-CSF 刺激ではなく、βアドレナリン刺激によって好中球からの PGE₂産生が起きることを見出した。Gr-1 抗体の投与により、生体から好中球を除去すると G-CSF 誘導性の発熱は抑制された。さらに交感神経除神経術を施すと G-CSF 投与による発熱と PGE₂の産生が抑制された。以上から骨髄中の好中球が G-CSF 誘導性の PGE₂の産生源であるということを示した。さらにPGE₂は EP4 受容体を介して骨芽細胞前駆細胞のオステオポンチン発現を上昇させていた。以上から交感神経システム、骨髄ニッチ、血球細胞の相互作用がなされていることを提唱した。

    ジカウイルス

    ジカウイルス感染は頭部神経堤細胞のサイトカイン産生を誘導し、神経発生に悪影響を及ぼす

    原題:

    Zika Virus Infection Induces Cranial Neural Crest Cells to Produce Cytokines at Levels Detrimental for Neurogenesis

    著者:

    Nicholas L. Bayless, Rachel S. Greenberg, Tomek Swigut, Joanna Wysocka, and Catherine A. Blish

    雑誌:

    Cell Host & Microbe, 20: 423‒428 (2016)

    POINT!

    妊娠中のジカウイルス感染によってウイルスが母体から胎児に移行し、小頭症リスクが大幅に高まる。これまで、神経前駆細胞へのジカウイルス感染の影響は調べられてきたが、その他の細胞への感染の影響は不明であった。頭部神経堤細胞は頭部・顔面の骨芽細胞の主な前駆細胞であり、発生段階の脳へパラクライン的な影響を及ぼす。著者らはジカウイルスが頭部神経堤細胞に直接感染し、それにより様々な液性因子、特に LIF や VEGF を大量に分泌させ、ジカウイルスに感染した頭部神経堤細胞とニューロスフェアとの共存培養において細胞死と異常な分化を引き起こすことを証明した。すなわち、ジカウイルスに感染した頭部神経堤細胞が、発生段階の頭部・顔面と脳の間のシグナル伝達クロストークを介して、ジカウイルス感染に関連した胎児期障害に関与していることを示唆している。

    CRISPR/Cas9法

    CRISPR/Cas9法によって作製されたオステオカルシン欠損ラットモデルでは海綿骨量と力学的強度が上昇する

    原題:

    Increased Trabecular Bone and Improved Biomechanics in an Osteocalcin Null Rat Model Created by CRISPR/Cas9 Technology

    著者:

    Laura J. Lambert, Anil K. Challa, Aidi Niu, Lihua Zhou, Janusz Tucholski, Maria S. Johnson, Tim R. Nagy, Alan W. Eberhardt, Patrick N. Estep, Robert A. Kesterson, and Jayleen M. Grams

    雑誌:

    Disease Models & Mechanisms, 9: 1169‒1179 (2016)

    POINT!

    オステオカルシンは骨芽細胞で特異的に発現し、オステオカルシン欠損マウスの研究から、骨における機能だけでなく、ホルモンとして糖代謝、雄の生殖能、脳機能に関わることが示唆されてきた。しかしながら、ヒトとラットではオステオカルシン遺伝子は 1 つしか存在しない一方、マウスではオステオカルシン遺伝子クラスター内に 3 つの重複遺伝子を有するなど、マウスとヒトのオステオカルシンはゲノムレベル・タンパク質レベルで少なからず異なっており、オステオカルシン欠損マウスで得られた知見から、ヒトにおける機能を推測することに慎重な議論が必要であった。
     著者らは CRISPR/Cas9 法によってオステオカルシン欠損ラットを作製し、解析したところ、海綿骨に関してはマウスと同様の表現型を呈し、力学的強度の向上をみとめたが、皮質骨には変化がみられなかった。さらに、耐糖能やインスリン抵抗性は有意な差が確認されたが、体重や体組成は正常であった。以上から、本報告で新たに作製したオステオカルシン完全欠損ラットモデルによって、よりヒトに近いオステオカルシンの機能的解析が可能となった。

    ミエローマ

    チミジンホスホリラーゼはミエローマにおいて骨吸収と骨形成に複雑な影響を及ぼす

    原題:

    Thymidine phosphorylase exerts complex effects on bone resorption and formation in myeloma

    著者:

    Huan Liu, Zhiqiang Liu, Juan Du, Jin He, Pei Lin, Behrang Amini, Michael W. Starbuck, Nora Novane, Jatin J. Shah, Richard E. Davis, Jian Hou, Robert F. Gagel, and Jing Yang

    雑誌:

    Science Translational Medicine, 8: 353ra113 (2016)

    POINT!

    多発性骨髄腫では骨破壊性病変と同時に起こる骨形成の低下から、骨痛と骨折を引き起こす。著者らは骨髄腫細胞が高発現するチミジンホスホリラーゼ (TP、チミジンをチミンと 2- デオキシ -D- リボース (2DDR) に分解する ) の骨への影響を調べたところ、TP の発現と骨病変数が正の相関を示し、骨髄腫細胞での TP 発現を低下させると骨吸収が低下し、骨形成が回復した。2DDR は骨芽細胞においてはα5β1、およびα vβ3 インテグリンと、破骨細胞においてはα vβ3 インテグリンと結合し、その下流で PI3K/Akt シグナルを活性化することで、DNMT3A 発現を上昇させ、RUNX2、Osterix、IRF8 プロモーター領域の CpG アイランドにおけるメチル化を亢進させ、骨芽細胞分化・骨形成を抑制する一方、破骨細胞分化に対しては NFATc1 発現上昇を介して促進することが明らかにされた。以上から、TP を標的とすることで患者での骨代謝異常を正常化できる可能性が示唆された。

    造血幹細胞ニッチ

    間葉系の炎症は造血幹細胞の遺伝毒性のストレスを促進させ、ヒトの白血病において疾患進行を予測する

    原題:

    Mesenchymal Inflammation Drives Genotoxic Stress in Hematopoietic Stem Cells and Predicts Disease Evolution in Human Pre-leukemia

    著者:

    Noemi A. Zambetti, Zhen Ping, Si Chen, Keane J.G. Kenswil, Maria A. Mylona, Mathijs A. Sanders, Remco M. Hoogenboezem, Eric M.J. Bindels, Maria N. Adisty, Paulina M.H. Van Strien, Cindy S. van der Leije, Theresia M. Westers, Eline M.P. Cremers, Chiara Milanese, Pier G. Mastroberardino, Johannes P.T.M. van Leeuwen, Bram C.J. van der Eerden, Ivo P. Touw, Taco W. Kuijpers, Roland Kanaar, Arjan A. van de Loosdrecht, Thomas Vogl, and Marc H.G.P. Raaijmakers

    雑誌:

    Cell Stem Cell 19: 1‒15 (2016)

    POINT!

    間葉系ニッチ細胞は血球系の組織損傷や悪性形質転換を誘導する可能性があるが、そのメカニズムは明らかにされてはいない。今回、前白血病を呈する Shwachman-Diamond syndrome (SDS)モデルマウスを用いてこの可能性を検証した。SDS モデルマウスはリボソーム生成に関与する 遺伝子が原因である事が知られている。筆者達は間葉系細胞特異的に 遺伝子を欠失したマウスを解析した。このマウスでは SDS の表現型である造血幹細胞においてミトコンドリア障害、酸化ストレス、DNAダメージの蓄積が観察された。これには間葉系細胞からの細胞内 damage-associated molecular pattern(DAMP)、S100A8 と S100A9 を介したシグナルが促進していることを明らかにした。加えて、間葉系細胞の S100A8 および S100A9 発現が白血病進行と骨髄異形成症における無増悪生存期間が関連していることも示唆された。骨髄環境の摂動がヒトの白血病誘導する可能性を示す興味深い報告である。

    破骨細胞

    破骨細胞は多発性骨髄腫において、免疫抑制微小環境を促進する。治療可能性の提唱

    原題:

    Osteoclasts promote immune suppressive microenvironment in multiple myeloma: therapeutic implication.

    著者:

    Gang An, Chirag Acharya, Xiaoyan Feng, Kenneth Wen. Mike Zhong. Li Zhang. Nikhil C. Munshi. Lugui Qiu. Yu-Tzu Tai. and Kenneth C. Anderson

    雑誌:

    Blood 128: 1590-1603 (2016)

    POINT!

    破骨細胞の数と活性化はミエローマ細胞によって強く促進され、多発性骨髄腫患者の深刻な骨病変へ繋がる。この報告では、破骨細胞が CD4+、CD8+T 細胞の増殖を抑制することで T 細胞を介した細胞障害から多発性骨髄腫細胞を保護していることを示した。免疫チェックポイントである PD-L1やガレクチン 9 および、T 細胞の代謝調節因子である IDO や、CD38 の発現は破骨細胞分化に伴い上昇している事がわかった。破骨細胞はがん細胞を誘導できるような免疫抑制状態の微小環境を形成する可能性が提唱された。

    脈管構造

    骨格系の内皮上のⅠ型コラーゲンの蓄積は、骨形態調節における血管の新しい役割を示す

    原題:

    Deposition of collagen type I onto skeletal endothelium reveals a new role for blood vessels in regulating bone morphology

    著者:

    Adi Ben Shoham, Chagai Rot, Tomer Stern, Sharon Krief, Anat Akiva, Tali Dadosh, Helena Sabany, Yinhui Lu, Karl E. Kadler and Elazar Zelzer

    雑誌:

    Development 12 Sep 2016 DOI: 10.1242/dev.139253

    POINT!

    血管は様々な器官の形態に関与している。脈管構造は軟骨内骨化にも重要な事が知られているが、その詳細については不明な点が残る。今回、発生段階の骨に存在する内皮は基底膜を欠いており、この内皮の周囲は、骨芽細胞が産生する事で知られる I 型コラーゲンで覆われていることが報告された。I 型コラーゲンは類骨の主成分であり、類骨出現後にはその場に石灰化骨が誘導される。骨芽細胞においてVegf を過剰発現させると異常な骨形態が誘導された。以上から、発生段階の骨中の内皮細胞は独特であり、血管のパターニングは骨の形態決定に重要である事が示された。

    破骨細胞

    破骨細胞活性化に関連する pH 変化量のリアルタイム生体内イメージング

    原題:

    Real-time intravital imaging of pH variation associated with osteoclastactivity

    著者:

    Hiroki Maeda, Toshiyuki Kowada, Junichi Kikuta, Masayuki Furuya, Mai Shirazaki, Shin Mizukami, Masaru Ishii, and Kazuya Kikuchi

    雑誌:

    Nat. Chem. Biol. 12: 579-585 (2016)

    POINT!

    二光子励起顕微鏡による生体内イメージングは細胞機能を可視化する為に広く使用されている。しかしながら、多くの細胞イメージングで使用されている低分子プローブは、ターゲット細胞への輸送や、物理化学特性が相応しくないという課題もあるため、単純に応用できるとは限らない。筆者らは骨特異的にターゲットするビスホスホネート基を付加した pH 感受性プローブ、pHocas を開発し、生体内での破骨細胞の活性化を観察する技術を報告した。生体での破骨細胞活性化の定量を可能にする細胞のレポーターとしての蛍光タンパク質を伴う合理的にデザインされた低分子プローブとその in vivo 機能のタイムラプスイメージングの組み合わせにより、細胞の変形と膜変動の変化が連動することが明らかとなった。このリアルタイムイメージングの進歩により、in vivo での破骨細胞の機能解明に大きな前進をもたらすことが期待される。

    破骨細胞

    破骨細胞活性化に関連する pH 変化量のリアルタイム生体内イメージング

    原題:

    Real-time intravital imaging of pH variation associated with osteoclastactivity

    著者:

    Hiroki Maeda, Toshiyuki Kowada, Junichi Kikuta, Masayuki Furuya, Mai Shirazaki, Shin Mizukami, Masaru Ishii, and Kazuya Kikuchi

    雑誌:

    Nat. Chem. Biol. 12: 579-585 (2016)

    POINT!

    二光子励起顕微鏡による生体内イメージングは細胞機能を可視化する為に広く使用されている。しかしながら、多くの細胞イメージングで使用されている低分子プローブは、ターゲット細胞への輸送や、物理化学特性が相応しくないという課題もあるため、単純に応用できるとは限らない。筆者らは骨特異的にターゲットするビスホスホネート基を付加した pH 感受性プローブ、pHocas を開発し、生体内での破骨細胞の活性化を観察する技術を報告した。生体での破骨細胞活性化の定量を可能にする細胞のレポーターとしての蛍光タンパク質を伴う合理的にデザインされた低分子プローブとその in vivo 機能のタイムラプスイメージングの組み合わせにより、細胞の変形と膜変動の変化が連動することが明らかとなった。このリアルタイムイメージングの進歩により、in vivo での破骨細胞の機能解明に大きな前進をもたらすことが期待される。

    破骨細胞

    概日時計はマウスにおいて骨吸収を制御する

    原題:

    Circadian Clock Regulates Bone Resorption in Mice

    著者:

    Cheng Xu, Hiroki Ochi, Toru Fukuda, Shingo Sato, Satoko Sunamura, Takeshi Takarada, Eiichi Hinoi, Atsushi Okawa, and Shu Takeda

    雑誌:

    Journal of Bone and Mineral Research 31: 1344‒1355 (2016)

    POINT!

    概日時計は約 24 時間周期で変動し、生体内の多くの生理的プロセスに関わる。骨組織における概日時計の関与は不明な点も多い。筆者らは時計遺伝子として知られる aryl hydrocarbon receptor translocator-like (Bmal1) 遺伝子の破骨細胞での機能を調べるため、破骨細胞特異的 Bmal1 ノックアウトマウスを作製し解析した。このマウスでは破骨細胞分化が抑制され、骨量が増加した。Bmal1 と Clock のヘテロダイマーが、E-box に結合することで、破骨細胞分化に欠かせない Nfatc1 遺伝子の発現を誘導することが示された。Bmal1 の全身ノックアウトマウスでは骨芽細胞分化阻害に起因する骨量減少が見られるが、破骨細胞分化も Bmal1 によって正に制御されていることが示唆された。

    サイトカイン・ケモカイン

    CCL20/CCR6 シグナルはマウスにおいて骨量増加を制御する

    原題:

    CCL20/CCR6 Signaling Regulates Bone Mass Accrual in Mice

    著者:

    Michele Doucet, Swaathi Jayaraman, Emily Swenson, Brittany Tusing, Kristy L Weber, and Scott L Kominsky

    雑誌:

    J Bone Miner Res. 7: 1381-90 (2016)

    POINT!

    CCL20 は炎症性タンパク質のファミリーであり、CCR6 を受容体に持つ。CCR6-/- マウスは野生型と比べると骨芽細胞数が少なく、骨量が減少していた。CCL20-/-マウスも CCR6-/- と同様の表現型を示した。CCL20 と CCR6 は両方とも骨芽細胞前駆細胞で発現していることがわかり、CCL20/CCR6 は骨芽細胞の分化と PI3K-AKT 経路を介した生存に重要であることが示された。その他の詳細なメカニズムは不明な点も残るが、炎症性サイトカインとその受容体が骨芽細胞でも機能しうるという興味深い報告である。

    間葉系幹細胞

    レプチン受容体は成体の骨髄において、間葉系幹細胞を制御することで脂肪生成を促進し、骨形成を減弱させる

    原題:

    Leptin Receptor Promotes Adipogenesis and Reduces Osteogenesis by Regulating Mesenchymal Stromal Cells in Adult Bone Marrow

    著者:

    Rui Yue, Bo O. Zhou, Issei S. Shimada, Zhiyu Zhao, Sean J. Morrison

    雑誌:

    Cell Stem Cell. 18: 782-796 (2016)

    POINT!

    骨格幹細胞は骨芽細胞と脂肪細胞に分化できる能力を有し、レプチン受容体を発現している。レプチンは脂肪代謝と関連が深いが骨格幹細胞にどのように作用するかは不明であった。間葉系幹細胞に発現する Prx1-Cre を用いて、骨格幹細胞のレプチン受容体を欠損させると、脂肪生成が減弱し、骨形成が亢進した。レプチンは間葉系幹細胞に作用すると、JAK2/Stat3 シグナルを活性化し、脂肪分化を促進するが、骨芽細胞分化は阻害することが明らかとなった。脂肪生成と骨形成のバランスがレプチンシグナルによって制御されるという興味深い知見である。

    腫瘍・癌

    がんの低酸素性セクレトームはリシルオキシダーゼを介した前転移骨病変を誘導する

    原題:

    The hypoxic cancer secretome induces pre-metastatic bone lesions through lysyl oxidase

    著者:

    Thomas R. Cox, Robin M. H. Rumney, Erwin M. Schoof, Lara Perryman, Anette M. Høye, Ankita Agrawal, Demelza Bird, Norain Ab Latif, Hamish Forrest, Holly R. Evans, Iain D. Huggins, Georgina Lang, Rune Linding, Alison Gartland and Janine T. Erler

    雑誌:

    Nature. 522: 106-110 (2015)

    POINT!

    乳がんの骨転移のメカニズムには不明な点が多い。著者らは、エストロゲン受容体陰性の乳がんでは骨転移及び再発にがんの低酸素状態が相関することを示し、低酸素性セクレトームの網羅解析により、リシルオキシダーゼ(LOX)を腫瘍細胞が産生する骨転移誘導因子として同定した。その機序として、LOX が RANKL 非依存的に、更にはRANKL よりも強力に破骨細胞分化を誘導することが提唱された。しかし、破骨細胞分化の実験にはヒト末梢血細胞を象牙切片上で長期培養するという特殊な系が使用されており、培養系への RANKL 混入の可能性も十分検討されておらず、RANKL 及び RANK 欠損細胞での検討もなされていなかった。以上の理由から、破骨細胞分化における RANKL 非依存性の証明については不十分であり、さらなる検証が待たれる。

    破骨細胞

    LOX は破骨細胞分化において RANKL の作用を代替しない

    原題:

    LOX Fails to Substitute for RANKL in Osteoclastogenesis

    著者:

    Masayuki Tsukasaki, Koki Hamada, Kazuo Okamoto, Kazuki Nagashima, Asuka Terashima, Noriko Komatsu, Stephanie Win, Tadashi Okamura, Takeshi Nitta, Hisataka Yasuda, Josef M. Penninger and Hiroshi Takayanagi

    雑誌:

    J Bone Miner Res. Sep 8. doi: 10.1002/jbmr.2990. [Epub ahead of print] (2016)

    POINT!

    著者らは、RANKL 非依存的な破骨細胞誘導因子として近年報告されたリシルオキシダーゼ(LOX)の、破骨細胞分化への影響を検討した。LOX の単独投与はヒト及びマウス破骨細胞分化を全く誘導せず、生体内においても LOX は RANKL の機能を全く代替しなかった。長期培養の条件下でのみ、LOX は RANKL による破骨細胞分化を促進したが、その作用は RANKL 欠損細胞を用いた場合には打ち消されたことから、LOX はRANKL を介した相乗効果を持つことが示唆された。実際に、LOX は活性酸素の産生を介して骨髄間質細胞や骨芽細胞上の RANKL 発現を誘導することが示され、長期培養など特殊な条件下では、混入した間質細胞の RANKL 発現誘導を介し、破骨細胞培養系に影響を与えうる可能性が示唆された。培養系に混在している間質細胞が産生する微量の RANKLは、TNFαによる破骨細胞誘導にも必須であることが過去に報告されており、RANKL 非依存性破骨細胞分化の証明には、RANKL 及び RANK 欠損細胞での検討が必須である事が改めて示された。

    オステオカイン

    FGF23 は肝細胞に直接的に作用して慢性腎臓病での炎症を促進する

    原題:

    Fibroblast growth factor 23 directly targets hepatocytes to promote inflammation in chronic kidney disease

    著者:

    Saurav Singh, Alexander Grabner, Christopher Yanucil, Karla Schramm, Brian Czaya, Stefanie Krick, Mark J. Czaja, Rene Bartz, Reimar Abraham, Giovana S. Di Marco, Marcus Brand, Myles Wolf and Christian Faul

    雑誌:

    Kidney Int, doi: 10.1016/j.kint.2016.05.019. [Epub ahead of print]

    POINT!

    慢性腎臓病 (CKD) 患者で観察される FGF23 と炎症性マーカーの血中量の上昇は致死率の上昇との正の相関が報告されている。血中 FGF23 濃度の上昇は CKD での血中炎症性サイトカイン量の上昇と相関しており、このことは骨細胞での FGF23 発現を更に上昇させる可能性が示唆されていた。本論文で、肝細胞はαKlotho を発現していないにも関わらず、FGF23 が直接的に作用し、FGFR4 を介したカルシニューリンシグナルの活性化を介した炎症性サイトカインの発現と分泌を促進することが示された。

    組織常在型マクロファージ

    組織常在型マクロファージの器官形成における態様

    原題:

    Specification of tissue-resident macrophages during organogenesis

    著者:

    Elvira Mass, Ivan Ballesteros, Matthias Farlik, Florian Halbritter, Patrick Günther, Lucile Crozet, Christian E. Jacome-Galarza, Kristian Händler, Johanna Klughammer, Yasuhiro Kobayashi, Elisa Gomez-Perdiguero, Joachim L. Schultze, Marc Beyer, Christoph Bock, Frederic Geissmann

    雑誌:

    Science. 2016 Sep 9;353(6304). pii: aaf4238

    POINT!

    組織常在型マクロファージは卵黄嚢の赤血球ミエロイド系前駆細胞 (EMP)から発生し、生後組織で自己複製する細胞で、定常状態において造血幹細胞とは異なる系列にある。組織常在型マクロファージは適切な器官形成や組織恒常性、修復などを制御すると考えられているが、どのように分化が制御されているのかについては不明な点が多く残されていた。著者らは、EMP からマクロファージ前駆細胞 (pMacs) が分化し、マウスの胎生期から成体までのマクロファージ発生における時空間特異的な 1 細胞 RNAシークエンシングなどによって、ケモカイン受容体 CX3CR1 が pMacs で発現上昇し、胚でのコロナイズに重要な役割を担っていることを明らかにした。さらに、Tnfrsf11a のpMacs での早期の発現が RNA-seq と 1 細胞 RNA-seq で検出され、実際に RANK-Cre が、胎仔・成体のどちらでも効率よく、かつ比較的特異的に組織常在型マクロファージをターゲットとすることがわかった。また、著者らはクッパー細胞特異的転写制御因子として Id3 を同定し、RANK-Cre によって Id3 を pMacs で欠損させると、他の組織常在型マクロファージには影響を与えず、クッパー細胞のみ特異的に欠損することを示した。

    骨芽細胞

    骨芽細胞系列を研究するための可視化レポーター

    原題:

    Visual reporters for study of the osteoblast lineage

    著者:

    Emilie Roeder, Brya G. Matthews, Ivo Kalajzic

    雑誌:

    Bone, doi: 10.1016/j.bone.2016.09.004. [Epub ahead of print]

    POINT!

    骨芽細胞系列細胞の理解を進めることは骨粗鬆症のような骨格系疾患の病理メカニズムを解明することに必須である。現在まで、骨芽細胞系列内での様々な分化段階の細胞を特異的に同定・分離することを可能にする様々な可視化ストラテジーが報告されてきた。本論文で、著者らは現在利用可能な骨芽細胞系列特異的プロモーターとそれらを用いた蛍光レポータートランスジェニックマウスの詳細な概説を行っている。

    感染

    アディポネクチンは骨髄の炎症を抑制する事により血球細胞の抗細菌活性を促進する

    原題:

    Adiponectin Enhances Antibacterial Activity of Hematopoietic Cells by Suppressing Bone Marrow Inflammation

    著者:

    Yosuke Masamoto, Shunya Arai, Tomohiko Sato, Akihide Yoshimi, Naoto Kubota, Iseki Takamoto, Yoichiro Iwakura, Akihiko Yoshimura, Takashi Kadowaki, and Mineo Kurokawa

    雑誌:

    Immunity, 44: 1422‒1433. (2016)

    POINT!

    肥満と感染症の関連はよく知られているが、その実体は明らかではなかった。アディポネクチン欠損マウスや肥満マウスでは、細菌感染時の応答が低下していることが示され、骨髄に発現するアディポネクチンが M1-like マクロファージの分化を抑制することで TNF-α産生制御を行い、感染時の顆粒球生成を正常にコントロールしている事が明らかとなった。肥満の感染時にアディポネクチンが治療標的になりうる事が示された。

    腸管免疫

    潰瘍性大腸炎関連遺伝子 RNF186 による腸管内恒常性制御

    原題:

    Regulation of intestinal homeostasis by the ulcerative colitis-associated gene RNF186

    著者:

    Kosuke Fujimoto, Makoto Kinoshita, Hiroo Tanaka, Daisuke Okuzaki, Yosuke Shimada, Hisako Kayama, Ryu Okumura, Yoki Furuta, Masashi Narazaki, Atsushi Tamura, Shigetsugu Hatakeyama, Masahito Ikawa, Kiichiro Tsuchiya, Mamoru Watanabe, Atsushi Kumanogoh, Sachiko Tsukita, and Kiyoshi Takeda

    雑誌:

    Mucosal immunology, [Epub ahead of print] (2016)

    POINT!

    自己免疫疾患を原因とする炎症性腸疾患発症には遺伝的因子が関与すると考えられているが、潰瘍性大腸炎の遺伝的素因の報告は少ない。今回、GWAS 解析によって RING フィンガードメインを持つ RNF186 遺伝子の発現が健常者に比べて潰瘍性大腸炎患者では低下していた。Rnf186 欠損マウスでは大腸透過性や ER ストレスが亢進し、DSS 誘導性腸炎モデルに感受性が高くなる事が示された。

    骨芽細胞

    敗血症誘導性骨芽細胞欠失は免疫不全の原因となる

    原題:

    Sepsis-Induced Osteoblast Ablation Causes Immunodeficiency

    著者:

    Asuka Terashima, Kazuo Okamoto, Tomoki Nakashima, Shizuo Akira, Koichi Ikuta and Hiroshi Takayanagi

    雑誌:

    Immunity, 44: 1434-1443. (2016)

    POINT!

    敗血症時に観察されるリンパ球数減少は二次感染の一因とも考えられているが、どのようにして長期化するのかは定かではなかった。筆者らは敗血症時に骨芽細胞の急激な減少とリンパ球数減少が同時に起きている事に注目した。骨芽細胞が産生する IL-7 がリンパ球分化を支持する事を示し、炎症状態では骨芽細胞からのサポートがなくなるために免疫抑制が引き起されることが考えられる。

    癌・腫瘍

    ケラチノサイトと線維芽細胞の細胞間コミュニケーションは局所の破骨細胞分化を誘導する : 真珠腫誘導性骨破壊の根底にあるメカニズム

    原題:

    Intercellular Communication between Keratinocytes and Fibroblasts Induces Local Osteoclast Differentiation: a Mechanism Underlying Cholesteatoma-Induced Bone Destruction

    著者:

    Yoriko Iwamoto, Keizo Nishikawa, Ryusuke Imai, Masayuki Furuya, Maki Uenaka, Yumi Ohta, Tetsuo Morihana, Saori Itoi-Ochi, Josef M. Penninger, Ichiro Katayama, Hidenori Inohara, and Masaru Ishii

    雑誌:

    Mol Cell Biol, 36: 1610-1620. (2016)

    POINT!

    真珠腫というのは中耳に形成される扁平上皮腫であるが、進行すると耳小骨などの周囲の骨破壊が起きる難治性疾患である。筆者らはケラチノサイトと線維芽細胞から作製された上皮嚢腫様細胞に破骨細胞分化誘導能があることを示した。ケラチノサイトから産生される可溶性物質が線維芽細胞の RANKL 発現を誘導していることが明らかとなった。

    RANKL-RANKシグナル

    LGR4は破骨細胞分化を負に制御する RANKL の受容体である

    原題:

    LGR4 is a receptor for RANKL and negatively regulates osteoclast differentiation and bone resorption

    著者:

    Jian Luo, Zhengfeng Yang, Yu Ma, Zhiying Yue, Hongyu Lin, Guojun Qu, Jinping Huang, Wentao Dai, Chenghai Li, Chunbing Zheng, Leqin Xu, Huaqing Chen, Jiqiu Wang, Dali Li, Stefan Siwko, Josef M Penninger, Guang Ning, Jianru Xiao, and Mingyao Liu

    雑誌:

    Nat Med, 22: 539‒546. (2016)

    POINT!

    これまで R-spondin や Norrin の受容体と考えられていた G タンパク質共役型受容体であるLGR4 が破骨細胞分化における RANKL-RANK の結合を競合的に阻害し、さらに RANKL-LGR4 シグナルがGαq-GSK3βを介して NFATc1 の核内移行を抑制することによって破骨細胞分化を抑制することが示された。LGR4 欠損マウスにおいて破骨細胞分化亢進による骨量の低下が観察され、可溶型 LGR4 細胞外ドメインの投与によって、in vivo で破骨細胞分化が抑制されることも示された。一方、これまでに LGR4 がWnt シグナルを介して骨芽細胞分化にも関わることが知られており、さらに骨以外での RANKL-RANK シグナルに対する影響が全く調べられておらず、今後のさらなる解明が期待される。

    サイトカイン・ケモカイン

    IL-17 産生 γδ T 細胞は骨再生を促進する

    原題:

    IL-17-producing γδ T cells enhance bone regeneration

    著者:

    Takehito Ono, Kazuo Okamoto, Tomoki Nakashima, Takeshi Nitta, Shohei Hori, Yoichiro Iwakura and Hiroshi Takayanagi

    雑誌:

    Nat Commun, 7: 10928. (2016)

    POINT!

    免疫系による骨折治癒制御はよく知られた現象であるが、その制御機構には不明な点が多い。著者らは骨折部位で γδ T 細胞が IL-17 を産生すること、IL-17 は間葉系細胞の増殖と骨芽細胞分化を亢進させ、骨折治癒を促進することを明らかにした。

    関節リウマチ

    スクレロスチンの抑制は TNF 依存的な炎症性関節破壊を促進する

    原題:

    Sclerostin inhibition promotes TNF-dependent inflammatory joint destruction

    著者:

    Corinna Wehmeyer, Svetlana Frank, Denise Beckmann, Martin Böttcher, Christoph Cromme, Ulrich König, Michelle Fennen, Annelena Held, Peter Paruzel, Christine Hartmann, Athanasios Stratis, Adelheid Korb-Pap, Thomas Kamradt, Ina Kramer, Wim van den Berg, Michaela Kneissel, Thomas Pap, and Berno Dankbar

    雑誌:

    Sci Transl Med, 8: 330ra35. (2016)

    POINT!

    抗スクレロスチン抗体は骨形成促進作用を有し、閉経後骨粗鬆症に対する臨床評価段階にある。著者らは TNFα依存性関節炎モデルにおいて、滑膜細胞がスクレロスチンを産生し、スクレロスチン欠損マウスや抗体による抑制によって関節リウマチ様病態が逆に悪化し、関節破壊が促進されることを見出した。スクレロスチンの関節炎に対する影響は TNFα依存的な関節炎でのみ観察されたことから、スクレロスチンが TNFαシグナルを抑制する可能性が示唆された。

    マイクロRNA

    大規模ヒト疾患ゲノム情報に基づくマイクロ RNA‒標的遺伝子ネットワーク解析方法の構築

    原題:

    Significant impact of miRNA‒target gene networks on genetics of human complex traits

    著者:

    Yukinori Okada , Tomoki M uramatsu , Naomasa Suita, Masahiro Kanai, Eiryo Kawakami, Valentina Iotchkova, Nicole Soranzo, Johji Inazawa and Toshihiro Tanaka

    雑誌:

    Sci Rep, 6: 22223. (2016)

    POINT!

    これまでのマイクロ RNA 解析は、その標的遺伝子との対応関係の複雑さなどから、多くが個別のマイクロ RNA に対する機能的実験により行われていたため、より網羅的なスクリーニング手法の開発が課題であった。著者らは MIGWAS という疾患ゲノム情報に基づく網羅的なマイクロ RNA‒標的遺伝子ネットワーク解析方法を構築した。この手法により、関節リウマチや推算糸球体濾過量等の形質にマイクロ RNA が寄与していることを明らかにし、新たな関節リウマチ感受性遺伝子 PADI2 と、PADI2 を標的とするマイクロ RNA である miR-4728-5p を同定した。

    皮質骨脆弱性

    皮質骨脆弱性̶パイル病における SFRP4 遺伝子欠損からの知見

    原題:

    Cortical-Bone Fragility ̶ Insights from sFRP4 Deficiency in Pyleʼ s Disease

    著者:

    Pelin O. Simsek Kiper, Hiroaki Saito, Francesca Gori, Sheila Unger, Eric Hesse, Kei Yamana, Riku Kiviranta, Nicolas Solban, Jeff Liu, Robert Brommage, Koray Boduroglu, Luisa Bonaf, Belinda Campos-Xavier, Esra Dikoglu, Richard Eastell,Fatma Gossiel, Keith Harshman, , Gen Nishimura, Katta M. Girisha, Brian J. Stevenson, Hiroyuki Takita, Carlo Rivolta, Andrea Superti-Furga, and Roland Baron

    雑誌:

    N Engl J Med, 374: 2553-2562. (2016)

    POINT!

    皮質骨と海綿骨がどのように異なる機構によって恒常性が維持されているのかに関しては不明な点が多く残されていた。著者らは皮質骨の菲薄化や骨折等を特徴とする遺伝性疾患であるパイル病患者のエクソームシーケンス等によって、Wnt 阻害因子である SFRP4 の遺伝子変異を同定した。Sfrp4 欠損マウスでは、皮質骨・海綿骨ともに古典的 Wnt シグナルが活性化する一方、皮質骨特異的に非古典的 Wnt シグナルが活性化することで発現上昇する Bmp2 により Sost 発現が誘導され、皮質骨での骨形成が低下することが示された。一方、海綿骨では古典的 Wnt シグナルのみが活性化することで骨形成は上昇し、それらの結果、Sfrp4 欠損マウスでは皮質骨が菲薄化するにも関わらず、海綿骨量が上昇するという表現型を呈した。さらに、Sfrp4 欠損マウスに可溶性 Bmp2受容体、または抗スクレロスチン抗体を投与すると、皮質骨菲薄化が改善されることも示された。