会長挨拶
会長 石井 優
大阪大学大学院医学系研究科 免疫細胞生物学 教授
「骨」は支持組織であり、代謝組織であり、そして、血液・免疫系細胞が生まれ、分化し、またそこで機能を 発揮する「免疫」組織であります。この「骨」と「免疫」という二つのキーワードに関わる様々な分野の研究者 が、基礎から臨床まで集い、最新の研究成果を発表・議論し、相互に交流することで未来の医療・医学を 切り拓くためのハブとして、平成26(2014)年10月に日本骨免疫学会は発足しました。今回で学術集会は6 回目の開催となりますが、免疫学、骨代謝学はもとより、分子・細胞生物学、再生・発生学、血液学、整形外 科学、外科学、耳鼻科学、リウマチ・膠原病内科学、呼吸器内科学、腫瘍学、内分泌・代謝内科学、腎臓 内科学、消化器内科学、歯学、薬学など、基礎から臨床までの幅広い領域の医師・研究者が一堂に会し、 学際的交流を深める貴重な機会となっております。
免疫学はライフサイエンスの中で、ここ1世紀の間に最も進んだ分野の1つであります。その中で、免疫と は切っても切れない骨の研究に関しても、マクロファ-ジを破骨細胞へと分化するサイトカインRANKLの発 見に始まり、その転写制御機構や免疫細胞との直接・間接的相互作用による制御機構など目覚ましい進 歩を遂げており、従来の骨代謝研究・免疫学研究を基盤とした学際的融合基盤「骨免疫学 Osteoimmunology」の新しい学問分野が確立されてきました。また本学問分野は基礎研究の顕著な発展の みならず、抗RANKL抗体の骨疾患治療への有用性が検証され、抗TNF-α抗体、抗IL-6受容体抗体 、CTLA-4蛋白質製剤、JAK阻害剤が関節リウマチや乾癬などでの免疫疾患において劇的な治療効果を 示すなど、臨床医学においても骨免疫学の進展・発展は今日の医学・医療に大きなインパクトをもたらして います。さらに抗PD-1/PD-L1抗体に代表される癌免疫療法の成功や、最近登場した抗スクレロスチン抗 体の今後の展開など、今後も骨免疫学会に関連するテーマは益々の発展が予想されます。
このように今後の発展が大きく期待される本会の特筆すべき特徴は、その「学際性」が挙げられます。様 々な研究分野・研究技術が、産学を問わず、「骨」と「免疫」をキーワードに集い、融合することで、新しい学 理の形成や画期的な医療の実現へと常に昇華されています。今後も骨と免疫を含む多臓器連関(神経系 、内分泌系、消化器系など)、臨床データ、ゲノムBig Data活用、バイオインフォマティクス、イメージング・画 像解析技術開発など、最先端の知見やテクノロジーを取り入れながら、この研究領域を基礎・臨床両面か ら発展させることが重要と考えます。
第一回に100名超ほどの参加者で始まった日本骨免疫学会学術集会は、年々参加者数が増加し、直近の 学術集会は200名を超える多様な分野の医師・研究者の方々の参加を賜っております。第六回は学会のテ ーマ「真の学際融合による骨免疫学のさらなる進化」を掲げ、2020年6月24日~26日の開催を予定させて 頂いております。上記の使命に鑑み、生命原理の理解を基礎にヒトの多くの疾患や難病の克服と健康維持 に資する学術集会とすべく、鋭意準備を進めております。第6回日本骨免疫学会の目的・趣旨にご賛同い ただき、何卒、ご支援の程、宜しくお願い申し上げます。