第2回 日本骨免疫学会 受賞研究紹介


ヒト間葉系幹細胞による機能的制御性T細胞の誘導とIGF/IGFBP-4を介した調節

キーワード:ヒト間葉系幹細胞、制御性T細胞、insulin like growth factor

優秀演題賞受賞 宮川 一平 先生
(産業医科大学 第1内科学講座)

ヒト間葉系幹細胞 (hMSC)は多分化能と免疫抑制能を有する。当科ではこれまで、hMSCがosteoprotegerin産生を介して破骨細胞分化を抑制すること、炎症環境下においても骨芽細胞・軟骨細胞へ分化可能であること、nano-fiber scaffoldを用いたMSC局所移植がラットCIAを強く抑制することなどを報告しており、滑膜炎から関節破壊を来す関節リウマチにおける抗炎症作用と関節修復を兼ね備えた新規治療ツールの一つとして期待している。そのhMSCの免疫抑制機序の一つとして、制御性T細胞(Treg細胞)の誘導が知られているが、詳細は十分に解明されていない。一方、hMSCは、TGF-β以外にも、IGF(insulin like growth factor)など豊富に増殖因子を産生するため、今回、hMSCが産生する増殖因子(特にIGF)に着目しTreg細胞の誘導機構を検討した。
【方法】ヒトナイーブCD4+T細胞を抗CD3/28抗体刺激下でhMSC培養上清と共に2日間培養し増殖能、サイトカイン産生能、細胞表面分子の発現を評価した。
【結果】抗CD3/28抗体刺激によるCD4+T細胞の増殖は、hMSC培養上清により抑制されI、L-10、IL-4産生が亢進した。またhMSCの培養上清は、CTLA-4、GITR、PD-1、PD-L1、IGF-receptorを発現し、CD4+T細胞に対する増殖抑制作用を持つ機能的なCD4+FoxP3+Treg細胞を誘導した。さらにhMSC培養上清によるTreg細胞誘導は、IGFの追加で増強しIGF-receptorを阻害することで抑制された。つまりIGFがIGF-Rを介して機能的なCD4+FoxP3+Treg細胞を誘導することが示された。一方、hMSC培養上清中には、IGFの抑制因子であるIGFBP (IGF binding protein)-4が大量に検出された。中和抗体を用いてMSC培養上清中のIGFBP-4を中和したところ、Treg細胞が有意に増加した。IGFBP-4がTreg細胞の増殖を阻害していたことが示された。
【結論】hMSCによるFoxP3+Treg細胞誘導へのIGFの関与が示された。一方、hMSCはIGFBP-4を産生することで、Treg細胞増殖抑制を介した自動的な制御機構を有する可能性が示された。本研究は、hMSCによる新たな制御性T細胞誘導機構を解明するとともに関節リウマチの新規治療ツールとして期待されるhMSC療法の効率化への可能性を示唆する結果であった。




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